【BL】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

梅花

文字の大きさ
上 下
219 / 463

225話

しおりを挟む
「今日もどうかなぁ」
王宮の聖樹からは産まれる気配がない。
何日もこうしているが、全く変化は無かったのだ。
「リクト、俺らの実がそろそろみてぇなんたが……どうする?」
新月に近くなった日中にリルがそう言った。
それは何となくわかっていた。
王宮へ来てから今日で……何日だろうか。
指折り数えなければならないくらいの日数が経っている。
「いちど、見に行った方がいいよね……リルとレヴィで行ける?」
「リクト、俺とレヴィで行ってどうすんだ。まぁ、俺とレヴィの子にもなるだろうが三人の子供なんだ。産まれるなら3人で見たいだろ?きっとレオンもわかってくれるだろ」
リルに言われて口を引き結ぶ。
聖樹の実も気になってはいるが、自分達の子供もできている。
だが、どちらも大切なのだ。
「でも、リル……俺は」
行きたい。
「リクト、行ってらして?」
背後から掛かった声に振り向くと、其処に居たのは王妃だった。
「今夜は私が聖樹の傍におりますから、リクトは可愛い子の産まれるのを見ていらして?できたら私も3人の子が見たいわ、ね?」
「王妃さま……」
「ずっとこちらに掛かりきりで申し訳なく思っているのよ?」
王妃の手が手に重ねられた。
「いつもありがとう、行ってらっしゃい」
優しい声に俺は小さく頷いた。
「できるだけ早く帰ってきます」
俺の言葉に王妃は左右に頭を振った。
「大丈夫よ……」
「じゃあ、夕方には出発させてください。それまでは少しでも聖樹の傍に居させてください。リルもレヴィもそれでいいよね?」
ふたりを交互に見ると、仕方無いと苦笑が帰ってくる。
ふたりに抱き付くと、レヴィにふわりと抱き上げられた。
「ほら、聖樹へ行くのだろ?」
「うん……」
いきなり抱き上げられた意味がわからず、歩けるよとレヴィに言うが寡黙な熊は静かに頭を振った。
「気もそぞろだろう?危ないから抱いていく」
きっぱりと言われてしまうと、何度も往復した道をレヴィに抱き上げられながら向かう。
先を歩くのはリルと王妃。
背格好は全く違うのだが、やはり何処か血が繋がっているのだろう似たところがある気がする。
そんなことを思いながらレヴィを見上げるとレヴィも同じことを考えていたのか笑みを向けてくれた。
「早く産まれて安心させて欲しいね……きっと可愛い子だよ」
小さな命が早く抱けたらいいなと思いながらも、自分には何もできないもどかしさに気持ちが下がるのを奮い立たせレヴィに抱き付く。
「やれることをやらなきゃね」
しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

処理中です...