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218話
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王様が駆け付け、良かったと身体を寄せ会うふたりにほっこりとしながらも、俺はリルとレヴィの事を想ってしまう。
こんなに離れていたことがないのだ。
ひとりで眠る寝台が広くて寒いけれど、大丈夫と言った手前ふたりに会いたいとは言えなかった。
王宮に部屋を借りると言った先にリルとレヴィにギルドから魔獣退治の依頼が来てしまったのだ。
どちらかでも残ると言ったふたりに、ふたりで行って一日も早く元気で帰って来てくださいとお願いをした。
リルとレヴィの仕事に今回はルーファスさんも同行すると、ミラが居るからミトさんは自宅に戻るのだと言うことで話はついたのだが、やはり2日過ぎると寂しくなってしまう。
こんなことではいけないと頭を振ると少し散歩でもしようかと聖樹から離れた。
見慣れない王宮の廊下をゆっくりと歩く。
変わっていく庭の姿を見ていると、正面から小さな虎の子が駆け寄ってくる。
「ミラ!どうしたの?ひとり?」
足を曲げてミラを抱き止めると、するすると腕の中で人の型になる。
「凄いね、変身できるようになったんだ?」
俺は羽織っていた上着を脱ぐと、裸のミラを包んでやる。
「りぅ、さみしー?」
片言の言葉。
「ん?ミラが来てくれたから寂しくなくなったよ?ありがとう」
チュッとミラの頬にキスをしていると、木陰からのっそりと大きな虎が現れた。
「おかあさん!いらしていたんですね?」
『リクトちゃん、ミラが寂しがっちゃって……ね、これミラの服だから』
咥えていた布を俺の足元にぱさっと落とすと、その中の一枚を手にしてからミトさんはまた木立の中に入っていく。
「悪いわね、お待たせ」
服に着替えたミトさんが出てくると、ギュッとハグをしてくれる。
「ダーリンたちは明後日帰ってくるって無事にギルドの依頼を達成したらしいわ」
「そう……ですか。怪我とかは……」
「擦り傷程度らしいわ。リヴァイアサンの討伐だからそんなにも大変じゃないもの」
……ミトさん?リヴァイアサンって……
「竜……ですよね?」
「あらやだ、翼の生えた大きなトカゲよぉ?まぁ、ダーリンたちだったら一個体くらいなら楽勝ね。6人パーティーでAランクからBランクの回復できる職業がいればギリギリ倒せるでしょうけど、流石に今回は九個体まとめてだったから要請が来たのだけれど」
戻りたいと騒ぐミラをミトさんに返しながらも、事の大変さを今更ながら実感する。
「本当に怪我は?」
「無いわよ、そんな柔には育ててないもの」
きっぱりと言い切ったミトさんは綺麗な笑顔で笑っていた。
こんなに離れていたことがないのだ。
ひとりで眠る寝台が広くて寒いけれど、大丈夫と言った手前ふたりに会いたいとは言えなかった。
王宮に部屋を借りると言った先にリルとレヴィにギルドから魔獣退治の依頼が来てしまったのだ。
どちらかでも残ると言ったふたりに、ふたりで行って一日も早く元気で帰って来てくださいとお願いをした。
リルとレヴィの仕事に今回はルーファスさんも同行すると、ミラが居るからミトさんは自宅に戻るのだと言うことで話はついたのだが、やはり2日過ぎると寂しくなってしまう。
こんなことではいけないと頭を振ると少し散歩でもしようかと聖樹から離れた。
見慣れない王宮の廊下をゆっくりと歩く。
変わっていく庭の姿を見ていると、正面から小さな虎の子が駆け寄ってくる。
「ミラ!どうしたの?ひとり?」
足を曲げてミラを抱き止めると、するすると腕の中で人の型になる。
「凄いね、変身できるようになったんだ?」
俺は羽織っていた上着を脱ぐと、裸のミラを包んでやる。
「りぅ、さみしー?」
片言の言葉。
「ん?ミラが来てくれたから寂しくなくなったよ?ありがとう」
チュッとミラの頬にキスをしていると、木陰からのっそりと大きな虎が現れた。
「おかあさん!いらしていたんですね?」
『リクトちゃん、ミラが寂しがっちゃって……ね、これミラの服だから』
咥えていた布を俺の足元にぱさっと落とすと、その中の一枚を手にしてからミトさんはまた木立の中に入っていく。
「悪いわね、お待たせ」
服に着替えたミトさんが出てくると、ギュッとハグをしてくれる。
「ダーリンたちは明後日帰ってくるって無事にギルドの依頼を達成したらしいわ」
「そう……ですか。怪我とかは……」
「擦り傷程度らしいわ。リヴァイアサンの討伐だからそんなにも大変じゃないもの」
……ミトさん?リヴァイアサンって……
「竜……ですよね?」
「あらやだ、翼の生えた大きなトカゲよぉ?まぁ、ダーリンたちだったら一個体くらいなら楽勝ね。6人パーティーでAランクからBランクの回復できる職業がいればギリギリ倒せるでしょうけど、流石に今回は九個体まとめてだったから要請が来たのだけれど」
戻りたいと騒ぐミラをミトさんに返しながらも、事の大変さを今更ながら実感する。
「本当に怪我は?」
「無いわよ、そんな柔には育ててないもの」
きっぱりと言い切ったミトさんは綺麗な笑顔で笑っていた。
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