208 / 466
214話
しおりを挟む
「ごちそうさまでした」
俺がこの世界に来て、いつの間にか習慣になったこと。
食事の前と後の挨拶。
俺が始めたのをリルとレヴィが真似をするようになり、それがミトさんとルーファスさんもするようになってミラも何となく形になってきたのだ。
全ての物に感謝をするという行為。
「さて、じゃあ行きましょうか」
パチンとミトさんが手を叩く。
行くって何処へ?
きょとんとミトさんを見ると、クスクス笑われる。
「やぁねリクトちゃんお城よ、今からなら陽が落ちる前には着くでしょ?」
レオン達が首を長くして待っているわよとミトさんに言われてすっかりと忘れていた。
「聖樹の実は夜の方が見るにはいいもの。お着替えしてから行きましょうか。洗い物は後からで構わないから」
「仕方ねぇか、別に普通の格好でいいんだろ?」
立ち上がったリルに、最低限の礼儀は持てとレヴィが突っ込む。
「リクト来いよ着替えるだろ?」
流石に油の跳ねたシャツ等はダメだろう。
「ほら、選んでやるから」
リルとレヴィに促されると、俺は皿をシンクの水に浸してから手を拭いた。
「うん」
二人に任せれば大丈夫だろうと思いながら部屋に向かう。
「何色にする?」
「この季節なら緑か」
「そうだな」
二人が選んでくれたのは若草色のチュニックにベージュのズボンで足元はモスグリーンの靴。
それを渡されて着替えようとしたが、ふたりの服が気になりちらりと見てしまう。
リルはモスグリーンのベスト、レヴィはズボンにモスグリーンを選んでいた。
これもペアルックになるのかなとおもってしまうと、頬が赤くなっていく。
それを隠そうと咳払いをすると俺も着替えようとシャツに手を掛けた。
「待てリクト、着替えさせてやるから」
リルが面倒そうにシャツのボタンを閉めながら距離を詰めてくる。
「あぁ、俺も直ぐに終わる」
レヴィも、しゅるりとタイを締めた。
もう、本当にこのイケメン共は……。自分達の似合う姿を知っているのだから狡い。
「だ、大丈夫だって……着替えくらい一人でできるから」
後ろに下がろうとして、リルに腰を掬われた。
「逃げるなって、何もしねぇよ」
「リクト、ほら」
エプロンの紐をほどかれてシャツに手を掛けられる。
二人がかりで脱がされてしまうとあっと言う間だった。
「良く似合ってるぜ?」
チュッとリルに額にキスをされると、レヴィには頬へ。
「脱がせるのも楽しみだ」
レヴィがリルみたいな事を言う。
本当に仲が良いなこの二人。
「二人も格好良い……何を着ても似合うって狡いよね?」
「リクトだって何でも似合うって、まぁ何も着てねぇのが一番だけど」
「俺は少し隠れて見えそうで見えないのも好きだが」
「おい、レヴィちょっとマニアックじゃねぇか?」
「良くないか?」
「良いけどよぉ、それもな」
二人だけの会話になってしまう、やだそれ……でも、混ざりたくない。
「俺、先にリビング行くから!」
ちょっといたたまれなくなり俺はそっと部屋を出た。
俺がこの世界に来て、いつの間にか習慣になったこと。
食事の前と後の挨拶。
俺が始めたのをリルとレヴィが真似をするようになり、それがミトさんとルーファスさんもするようになってミラも何となく形になってきたのだ。
全ての物に感謝をするという行為。
「さて、じゃあ行きましょうか」
パチンとミトさんが手を叩く。
行くって何処へ?
きょとんとミトさんを見ると、クスクス笑われる。
「やぁねリクトちゃんお城よ、今からなら陽が落ちる前には着くでしょ?」
レオン達が首を長くして待っているわよとミトさんに言われてすっかりと忘れていた。
「聖樹の実は夜の方が見るにはいいもの。お着替えしてから行きましょうか。洗い物は後からで構わないから」
「仕方ねぇか、別に普通の格好でいいんだろ?」
立ち上がったリルに、最低限の礼儀は持てとレヴィが突っ込む。
「リクト来いよ着替えるだろ?」
流石に油の跳ねたシャツ等はダメだろう。
「ほら、選んでやるから」
リルとレヴィに促されると、俺は皿をシンクの水に浸してから手を拭いた。
「うん」
二人に任せれば大丈夫だろうと思いながら部屋に向かう。
「何色にする?」
「この季節なら緑か」
「そうだな」
二人が選んでくれたのは若草色のチュニックにベージュのズボンで足元はモスグリーンの靴。
それを渡されて着替えようとしたが、ふたりの服が気になりちらりと見てしまう。
リルはモスグリーンのベスト、レヴィはズボンにモスグリーンを選んでいた。
これもペアルックになるのかなとおもってしまうと、頬が赤くなっていく。
それを隠そうと咳払いをすると俺も着替えようとシャツに手を掛けた。
「待てリクト、着替えさせてやるから」
リルが面倒そうにシャツのボタンを閉めながら距離を詰めてくる。
「あぁ、俺も直ぐに終わる」
レヴィも、しゅるりとタイを締めた。
もう、本当にこのイケメン共は……。自分達の似合う姿を知っているのだから狡い。
「だ、大丈夫だって……着替えくらい一人でできるから」
後ろに下がろうとして、リルに腰を掬われた。
「逃げるなって、何もしねぇよ」
「リクト、ほら」
エプロンの紐をほどかれてシャツに手を掛けられる。
二人がかりで脱がされてしまうとあっと言う間だった。
「良く似合ってるぜ?」
チュッとリルに額にキスをされると、レヴィには頬へ。
「脱がせるのも楽しみだ」
レヴィがリルみたいな事を言う。
本当に仲が良いなこの二人。
「二人も格好良い……何を着ても似合うって狡いよね?」
「リクトだって何でも似合うって、まぁ何も着てねぇのが一番だけど」
「俺は少し隠れて見えそうで見えないのも好きだが」
「おい、レヴィちょっとマニアックじゃねぇか?」
「良くないか?」
「良いけどよぉ、それもな」
二人だけの会話になってしまう、やだそれ……でも、混ざりたくない。
「俺、先にリビング行くから!」
ちょっといたたまれなくなり俺はそっと部屋を出た。
256
お気に入りに追加
5,319
あなたにおすすめの小説


獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します


【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる