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194話

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「まずは、俺はリクトと言います」

取り敢えずは背筋をのばしてから挨拶をする。
リルとレヴィに止められたが大丈夫だよ?と、笑うとふたりと手を繋いだ。

「俺にどれだけの事ができるかはわかりませんが、ちゃんと言っていただければ何でもお手伝いしますから、今度からはこのようなことはしないでくださいね?」

俺はにこにこしながらも、目の前のベンガル夫妻に説教をする。
本当ならそんなことをすれば後が怖いのかもしれないけれど、これ、俺じゃなければ大事になっていたかもしれない案件なのだから。
ただ、夫妻の反応を見ると、もしかしたらビーグルさんの判断だったのかななんて思うけれど、夫妻は一言もビーグルさんに責任を押し付けることも無かったから、それだけ素晴らしい主君なんだろうね。
よし、説教終わりかな。

「今日はこのまま帰ります。お二人で結ぶリボンを作ってみてください。必ず自分の手で名前を刺繍してくださいね?誰かに任せては駄目です。
時間がかかっても構いませんから、出来上がったらご連絡くださいね?皆で結びに行きましょう」

「リクト……さん、あの……」
「はい、できるだけふたりでリボンを選んで、刺繍糸も……忙しいは、理由になりませんよ?子供ができたら戦場ですからね?
きっと、聖樹は子供を育てる心構えも感じ取っているのかもしれません」

俺の言葉に婦人はほっとした表情を浮かべる。
聖樹が何を考えているかなんて俺にはわからないけれど、欲しい人の所には子供を授けて欲しい。
産まれた子達は幸せになって欲しい。

「おふたりとも、手をお借りしていいですか?」

リルとレヴィの手を離してから、ベンガル夫妻の近くにゆっくり歩み寄ると、手を出してきた婦人の手をそっと両手で包む。

「どうか、ふたりに素晴らしい子が授かりますように」

ふたりに同じ祈りを掛けてから、顔を見上げると穏やかな表情になっている。

「できれば、リボンも刺繍糸もふたりの色を使った方がいいかもしれませんね。瞳の色や髪の色……俺たちは黒をベースにしましたが、それでも実はできましたから。
リル、レヴィ、帰りながら聖樹に寄って帰ろうか?あ、でもその装備だと物々しいかなぁ……」

完全武装だったふたりを見ながら問いかけると、ふたりは大丈夫だろと肩を竦めた。

「馬車を用意させる、本当にすまなかった」

頭を下げてきた夫婦に、もういいですよと手を振るとリルとレヴィに腰を抱かれた。

「帰ろうか、まだお洗濯もの途中だったんだよ……また明日かなぁ」

そう呟くと、洗濯なんかどうでもいいと言われてしまうと。じゃあ明日手伝ってと返す。
やった!明日の労働力をゲットしたよ!部屋の模様替えもそろそろしたかったんだ。
ガタガタと、来た道を馬車に揺られる。
来たときよりはかなりの圧迫感だけれど、聖樹までの道程はあっという間だった。
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