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193話

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どのくらい経っただろうか。
用意された紅茶は冷めてしまって、俺はどのくらい待たされるのだろうかと立ち上がった瞬間ビーグルさんが現れた。

「お待たせしました」
「いえ、で、俺は何故此処へ?」
「それは……」

何となく理由はわかっている。

「取り敢えずこちらへ」

まだ、丁寧に接してくれるだけいいかとビーグルさんに着いて行くと、少し大きなサロンのような部屋に入った。
内装は落ち着いていて、物も雰囲気もいい。
俺の後から入ってきたのは、ベンガル風の猫獣人ふたりだった。
特徴のある斑の毛並み。
顔は整っているが、目付きは少し鋭く感じる。

「聖樹の実をつけてくれると聞いた……」
「どうか、私たちに子供を授けて欲しいの」

そう言ってベンガル夫妻は頭を下げた。

「俺にはそんな能力はありません」
「でも、皆が……」

小さな方のベンガルさんがハンカチを握り締めている。
それを抱き寄せるようにしついたもうひとりがこちらを見据えた。

「街の聖樹で様々な枝に実をつけさせたと聞く。望むだけの報酬は払うどうか」
「報酬とか、必要はありませんし俺が出来ることはします。だからリルとレヴィに連絡を……」

させてくださいとお願いした瞬間、何処か遠くで何か壊れるような爆発音がした。

「だ、旦那様、奥様!」

駆け込んで来たのはビーグルさん。
そして、その後ろには……

完全武装のリルとレヴィがいた。

「リル、レヴィ?」
「大丈夫か、リクト」
「うん、大丈夫だけどふたりはどうしたの?そんな格好で……」

見たことが無いくらいの重装備なふたりは、ベンガルさん達を睨み付けた。

「おい、貴族さまが何てぇことしてんだよ、俺らいち市民だろうが、それを誘拐なんてなぁ?」
「あぁ」
「は、誘拐!?」
「え?」

リルとレヴィの言葉に驚いたのはベンガル夫妻。
すると、近くに居たビーグルさんがガタガタと震えだした。

「も、申し訳……」

その場に這いつくばって頭を下げるビーグルさん。

「リルもレヴィも大丈夫だよ、俺は。酷いこともされていないし、誘拐じゃないって」

ポンポンとリルとレヴィの腕を叩くと、ふたりは手にしていた武器を納めた。
流石にレヴィのハルバードは邪魔だからね。
誘拐されたって思い込んで来てくれたふたりには感謝しなきゃいけない。スマホとか無いのに、良く俺の居場所がわかったなと、どうしてか後で聞いてみようと思う。

「えぇと、おふたかたが子供が欲しいんだってさ、だから俺で良ければお手伝いするつもりだけど」
「はぁ?あっちはどうするんだよ」
「え?」
「レオンの方だよ」
「あ」

時折、顔を出してくれと言われていたのを思い出してどうしようかと考える。

「毎日行く訳じゃないから大丈夫でしょう」

俺は何とかなるでしょうとあっけらかんと笑った。
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