上 下
399 / 405
番外編

猫の日用。

しおりを挟む
転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。をご覧いただきありがとうございます。
猫の日のため、SSを書かせていただきましたが、こちらは限定公開のため、公開は月末までとさせていただきます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
月末を過ぎたら収納しますので、しおりは挟まないようお願いできればと思います。

昨年書いたSSです。

☆☆☆☆☆☆☆

『にゃぁん~』

可愛らしい声がして俺は目を覚ました。

『んにゃぁん』

猫?
何処にいるのかと辺りを見回すが、何故かいつもより家具の配置がおかしい。
見慣れた家具の筈なのに見慣れない角度で見上げている。

『にゃ、うん?』

手をのばそうとして目に入ったのは黒の猫脚。
握ったり開いたりすると、爪が出入りする。
あれ?
慌てて起き上がってみたが、其処は見慣れた寝室だった。
リルもレヴィもいない。
それが不安になって、俺は慣れない身体で部屋を出た。
幸いにも扉はL字型のノブだったため、上手く飛び付いて開いたのだ。

リル、レヴィ。

名前を呼んでも俺の喉からはにゃあにゃぁと、猫の鳴き声しか出ないのだ。

歩いても歩いてもたどり着かないリビング。
走ったら傷をつけてしまいそうでゆっくりと歩くだけになってしまう。

「何処から入ったんだ!?」

ふと、上から降ってきた声に俺は硬直した。
怖い。
何時もは優しいと感じる声が、圧迫を感じる低温に聞こえる。

『ふにゃっ!』

どうしよう、怖いと本能で後ずさりをしようとした瞬間、ふわりと抱き上げられた。

「可愛いなぁ、黒猫か」

圧迫感が消えて優しい緑の眼差しに見つめられた。

『ん』

リルの腕にすっぽり抱かれてしまうとそのあたたかさが伝わってきて無意識にゴロゴロと喉が鳴った。
人の時に鳴らす部分など無いのに、自然と鳴ってしまう喉。
呼吸をするのと同じような自然な行為。

「お、どうしたリル」

近寄ってきたのはレヴィで、こちらからも少しの圧があったが、頭を撫でられるとやはりゴロゴロしてしまう。

「リクトを探しているんだが、見当たらなくてな……代わりにこの猫がいてさ」
「困ったな、俺たち獣人の獣化なら言葉がわかるが、純粋な動物とは会話ができないからな」

ふぅん、そうなんだ?と思いながらものばされたレヴィの手にすりすりっと頭を擦り寄せる。
撫でられる感覚が気持ちいい。
すると、驚いた様子のレヴィは破願して俺の耳の後ろや喉の下をゆっくりと撫でてくれた。

「すげぇ可愛いんだけど、リクトがいいって言えば飼っても……」
「いや、俺たちよりもこの子中心になるかもしれないぞ?」
「それは困るな……」
「でも、追い出せないしな……本当に何処から来たんだ?」

『うにゃあん』

俺がリクトだって。
聞いてよ!と、レヴィの指をカプリと噛むも、痛くは無いらしくレヴィは笑っている。
暫くかぷりかぷりとしていたが、リルの体温に瞼が落ちる。
何でこんなにも眠くなるのだろうか。
くぁっと欠伸をしてから目を閉じた。
暫くしてから頭から背中にかけて、何かざらざらした櫛で髪をとかされるような不思議な感覚も感じたが、嫌な感じではなくむしろ幸せを感じながらも目は開かない。

『可愛いな、一口でくっちまえそうな大きさだな』
『やめておけ起きるぞ?』
『おっと……そりゃまずい』

何やら耳元で喋られて、煩いとばかりにくりだしたパンチはなにやら柔らかい物に触れただけだった。
猫の姿でも気持ちいいが、やっぱりリルとレヴィには直接触って貰うか、獣化した姿をもふるのがいいなぁ。なんて思いながら微睡んでいく。
次に起きたときはどうなっているのだろうか。
くしくも俺のスマホは猫の日を差していたのを知ったのは、翌日だった。
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

氷の華を溶かしたら

こむぎダック
BL
ラリス王国。 男女問わず、子供を産む事ができる世界。 前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。 ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。 そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。 その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。 初恋を拗らせたカリストとシェルビー。 キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...