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172話

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着替えを済ませると、着ていた服をクローゼットに掛けていく。
ふわりと香るふたりの匂いに、背中をぞくりとしたものが駆け上がる。
かくりと膝が笑いそうになって、慌てて壁に手をついた。

「リクトどうした?」

レヴィの声に頭を振る

「わからない……けど、力が抜けた」
「大丈夫か?ほら」

リルがひょいと腰を抱いてくれると、俺はよろよろと身体を預ける。
ぽすりとリルに倒れ込むようになり、ふわっと香るリルの香りにどうしていいかわからなくなった。

「リルとレヴィの匂い…ふわふわする」

気持ち良い。
お酒を飲んだときのような酩酊感。
抱っこと、リルの首に腕を回して抱き付いた。

「あー……リクト、少しだけ食事できるか?」
「うん、お腹すいた」
「レヴィ、食材を室内で焼き始めてくれ、リクトは外に出さねぇ方がいいだろ」
「そうだな」

ふたりの声が頭上で交錯する。
腰が砕けそうになって目を閉じる。

「リクト」
「ん?」
「ソファー行こうな?」
「うん」

寝室にあった寝台とは少し離れた大きめなソファー。
そっちに抱き上げられたまま移動をすると、リルにそっと下ろされた。

「水を持ってきてやるし、食事ができたら食ってゆっくりしような?」
「ありがと」

リルが離れると、俺はころんとソファーに丸くなる。
起きていられなくもないのだが、横になりながらふたりを見ていたかったが、硝子の向こうにちらりと見えるだけの後ろ姿では何だかつまらない。
一緒にいたくてソファーから起きようとして、身体が上手く動かせない。

「リル、レヴィ……」

名前を呼ぶとふたりが振り向いて、リルがグラスを持ってやって来てくれた。

「悪い」
「うぅん、ありがと」

リルに起こして貰うと、リルが俺を支えながらグラスの中の水を飲ませてもらった。
水なのに何故か甘い香りがした。

「リル、これ甘い匂いかする」
「やっぱりか……」

リルは嬉しそうに笑う。
何か良いことがあったのだろうか。
不思議そうに相手を見ると、リルがレヴィに何かハンドサインを送っていた。
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