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167話
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「お腹いっぱい、ご馳走さま」
「おう、酒飲むか?」
リルが差し出してきた麦酒を断って、キッチンへ飲み物を取りに向かう。
3人で住んでいた家なのにミトさん達と過ごしていたからか、一瞬調理器具や調味料のならび具合に戸惑う事がある。
長い日数ではなかったのに、濃い生活だったなとひとりごちた。
「あ、ジュース」
どちらが買ってきてくれたのだろうか、冷たいジュースを見付けて少しだけ貰おうとグラスに注いだ。
「やらなきゃいけないこと、いっぱいあるんだけどな……」
掃除はふたりが完璧だし……ミトさん仕込みらしく、料理も洗濯もやれるけれど料理に関しては俺の料理の方が美味いからできるだけ食べたいのだと言われた。
それ以外はできる方がやるスタンスらしい。
「リクト、ちょっといいか?」
夕飯の仕込みをしてしまおうとうでまくりをした瞬間リルとレヴィが顔を出した。
「どうしたの?」
「時間があるなら、ちょっと相談したいんだが」
「ん?いいよ」
出していた水を止めてからグラスを片手にキッチンから出ると、並んで立つふたりに近寄る。
チュッチュッと、左右からキスをされて、ソファーへと促された。
3人で並ぶようにソファーに座ると、レヴィが握っていた手の中から一本のリボンが出てきた。
それは、俺が先に名前を入れたもの。
それにふたりが名前を刺した。
「漸く俺らふたりが納得できるだけの物になったから、リクトに見て貰おうと思って」
「何度やっても上手くできなくてな、リクトから預かった最後の一本で漸く形になった……と、思うんだが」
手の平に置かれたリボン。
艶やかな光沢の生地に刺繍された名前。
「ありがとう、ふたりが頑張ってくれた気持ちだけで嬉しい……俺も上手くはないけどこれって気持ち……だろうからさ?」
こみ上げてくる気持ちが涙に変わって落ちた。
「いつか、3人で結びに行こうな?」
「うん……」
「リクトが行きたいときにしよう?」
「直ぐがいい……ふたりが渡してくれたんだから、今日の日がいいんだろ?」
俺が顔を上げると、ふたりは顔を見合わせていた。
「夜に行けばいい?これからでも大丈夫?」
「だけどな、これからは雨予報なんだよ……確かに日はいいんだけどな、いい日にするなら、また次の月がある」
「早い方がいいよ、雨は苦手だけとまだ降ってないなら行ってみない?」
俺は二人を促した。
だって、自分達の子供ができるかもしれないのだ。
できるのは確率で俺に問題があってできないこともあるのだ。
できないのは、時間が解決してくれることもあるから、早い方がいい。
「俺、ふたりの子供なら大切にするから。でも、俺が原因でできなかったらごめん」
「いや、きっとリクトに似た可愛い子供かもしれん」
「だよな、だけどどんな子供ができても俺らの子供だ大切にするぜ」
3人で笑うと誰ともなく立ち上がった。
「おう、酒飲むか?」
リルが差し出してきた麦酒を断って、キッチンへ飲み物を取りに向かう。
3人で住んでいた家なのにミトさん達と過ごしていたからか、一瞬調理器具や調味料のならび具合に戸惑う事がある。
長い日数ではなかったのに、濃い生活だったなとひとりごちた。
「あ、ジュース」
どちらが買ってきてくれたのだろうか、冷たいジュースを見付けて少しだけ貰おうとグラスに注いだ。
「やらなきゃいけないこと、いっぱいあるんだけどな……」
掃除はふたりが完璧だし……ミトさん仕込みらしく、料理も洗濯もやれるけれど料理に関しては俺の料理の方が美味いからできるだけ食べたいのだと言われた。
それ以外はできる方がやるスタンスらしい。
「リクト、ちょっといいか?」
夕飯の仕込みをしてしまおうとうでまくりをした瞬間リルとレヴィが顔を出した。
「どうしたの?」
「時間があるなら、ちょっと相談したいんだが」
「ん?いいよ」
出していた水を止めてからグラスを片手にキッチンから出ると、並んで立つふたりに近寄る。
チュッチュッと、左右からキスをされて、ソファーへと促された。
3人で並ぶようにソファーに座ると、レヴィが握っていた手の中から一本のリボンが出てきた。
それは、俺が先に名前を入れたもの。
それにふたりが名前を刺した。
「漸く俺らふたりが納得できるだけの物になったから、リクトに見て貰おうと思って」
「何度やっても上手くできなくてな、リクトから預かった最後の一本で漸く形になった……と、思うんだが」
手の平に置かれたリボン。
艶やかな光沢の生地に刺繍された名前。
「ありがとう、ふたりが頑張ってくれた気持ちだけで嬉しい……俺も上手くはないけどこれって気持ち……だろうからさ?」
こみ上げてくる気持ちが涙に変わって落ちた。
「いつか、3人で結びに行こうな?」
「うん……」
「リクトが行きたいときにしよう?」
「直ぐがいい……ふたりが渡してくれたんだから、今日の日がいいんだろ?」
俺が顔を上げると、ふたりは顔を見合わせていた。
「夜に行けばいい?これからでも大丈夫?」
「だけどな、これからは雨予報なんだよ……確かに日はいいんだけどな、いい日にするなら、また次の月がある」
「早い方がいいよ、雨は苦手だけとまだ降ってないなら行ってみない?」
俺は二人を促した。
だって、自分達の子供ができるかもしれないのだ。
できるのは確率で俺に問題があってできないこともあるのだ。
できないのは、時間が解決してくれることもあるから、早い方がいい。
「俺、ふたりの子供なら大切にするから。でも、俺が原因でできなかったらごめん」
「いや、きっとリクトに似た可愛い子供かもしれん」
「だよな、だけどどんな子供ができても俺らの子供だ大切にするぜ」
3人で笑うと誰ともなく立ち上がった。
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