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165話

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「ん、リル……」

ふわりと、ベッドの感触を感じて目を開く。
ぼんやりとした視界の先に、精悍な美貌。

「寝ていていいぜ?身体は拭いたから」
「ありがと……大丈夫だけど、水飲みたい」

火照った身体。
空調は整えられているが、温まった身体は涼を求めている。

「おう、ほら」

グラスに注がれた水。
リルの気遣いからかレモンに似た柑橘系の香りがした。

「美味しい、リルも飲む?」

グラス差し出すと、受け取ったリルはそれを取り上げて俺にキスをしてくる。
触れるだけの唇が、やがて舐められ厚い舌が入り込んでくる。

「はふ…」

抱き締められて漸く唇が離れると、俺は深く息を吸い込んだ。

「可愛いな、リクト……」

リルの大きな手が顔を包む。
細められた目。

「リルより随分と年上だけどね?」
「は?」

俺の言葉にリルがフリーズする。
あれ?言ってなかったっけ…もうすぐ26歳になるけれど……

「リルよりは五歳くらい上だよ?」
「マジか?」
「え?あれ……言ってなかったっけ?」

何気ない日常会話をしたような気がしていたのだけれど、気のせいだったのかも。

「ごめん、思っているより若くないよね……そんなだと抱く気失せる?」

リルやレヴィほどがっしりとした体躯ではない。
若々しい艶も無い身体はふたりの目にはどう写っているのだろうか。

「んなわけあるか。むしろリクトの身体は凄く綺麗だぞ?」

抱き寄せられてまじまじと見られるのはやはり恥ずかしい。

「あまり見るな……よ」
「もう、リクトの全部余すとこなく見てるけど、何度見たっていい……何度だって見たいぞ?」

だから、見せてくれと甘い声で囁かれれば、拒むことなどできないのだ。

「灯りを消して」

まだ、早い時間。
それに猫科のリルなのだ、夜目が利くから意味が無いのはわかっているけれど、まだ明るいところで身体を開く勇気はない。
いや、きっと一生無いのかもしれない。

「仕方ねぇなぁ?」

ニヤニヤと、それでも嬉しそうにリルは立ち上がると壁にあるスイッチを切ってくれた。
少しだけ暗くなった部屋は、リルの身体の筋肉の凹凸に影を落とす。
それが無性に色っぽく感じてこくりと唾を飲み込んだ。

リルの腕が身体に周りゆっくりと押し倒される。
ゆっくりと沈んだ身体の喉元にリルの唇が押し当てられた。

「あっ……」

チリっと走った痛みに声をあげると、リルは嬉しそうに笑っていた。
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