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162話

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「では、お父さんお母さん、ミラ」

行きますねと、挨拶をする前にぎゅうっと、ミトさんに抱き締められた。
優しく甘やかな香りに包まれた。


「ミラが大きくなったら遊びに来てください。俺もたまに遊びに来ますから」
「いつでも来て頂戴!」
「はい」

ルーファスさんの腕の中で獣のままのミラが前肢を伸ばしてくる。
それに触れてから軽く鼻先を合わせて頭を撫でてやる。
これ以上すると、やはり離れがたくなってしまうとそっと離れると、リルがそっと抱き締めてくれた。

「じゃあ親父、お袋また来る」

ひらりと手を振ったリルに、ぺこりと頭を下げたレヴィ。
リルに抱かれながらひょいと魔獣に乗せて貰った。
今回はふたりの間に色々とあったようで、俺はリルと一緒に乗る。
ミトさんが沢山の食事を持たせてくれたから、数日は心配しなくても大丈夫そうで、欲しかった調味料やお米はルーファスさんが調達してくれた。
何度も何度もお礼を言って俺たちは街を出発する。
そして、数日かけて3人の家に戻ったのだった。


☆☆☆☆☆☆☆


「ただいま」

扉を開けて声を掛ける。
誰もいないのはわかっているのだが。
だって、家主は一緒に帰ってきたのだから。

「ただいま」
「あぁ」

帰ってきたら約束のただいまのキス。
チュッ、チュッとふたりと交わしてから家に入った。
長い間空けてしまった家は少し空気が隠っている気がして、窓を開けて欲しいとふたりに頼む。
まだ、昼を過ぎた辺りで食事はまだ。

「リル、レヴィお昼はどうしようか」

すっかり1日3食に慣れたふたりの耳が動く。

「リクトが大変だろうから外食するか?」
「持ってきて貰ってもいいぜ?」

そう言うふたりは軽装になって、砂を落としていた。

「スープと玉子料理くらいならできるけど?」
「大丈夫か?」
「いいよ、ミトさんに負けないくらいの料理はできないけどね」

アイテムボックスには、沢山の食材が入っている。
時間が止まるため、玉子も新鮮なままなのだ。

「オムレツがいいな」
「俺は玉子焼き」
「わかった、どっちも作るね?」

そう言うと、ふたりはいそいそと窓を開けに行った。
俺も上着を脱いで手を洗うとふたりのリクエストを作り始める。
先ずは簡単にキッチン回りを掃除してからミトさんのスープをアイテムボックスから出して火に掛ける。
残りはあまり無いが、野菜やソーセージを足してから味を整えて放置した。
続いて主食はパン。
トーストにチーズやトマトソースを乗せて焼いてピザトースト風にする。
旅の途中で食べたくなって、でもトースターがなかったから我慢していたんだ。
それに、オムレツと甘めの玉子焼きを多目に作る。
じゅうじゅうと焼ける音とバターの香りが食欲をそそる。
気付いたらふたりは既にテーブルについていた。
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