【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

145話

「おい、レヴィ……まさか」

リルが戻ってきたのは翌日だった。
帰ってきた瞬間、リルがレヴィに詰め寄った。

「リル、話がある」
「リル、部屋に来て」

レヴィの襟を締め上げる腕を掴んで離させると、俺はそのままリルを部屋に連れ込む。
ミトさん達にはこうなることを事前に話してあったため、今は３人でお散歩に出掛けてくれている。

「リル座って」
「リクト……」
「座って。大事な話をするから」

軟らかなラグの上にリルが胡座をかくのを見ながら、俺はその側に、レヴィは少しだけ離れた場所に座る。
いつもとは違う不安そうな表情で見上げてくるリルが少しだけ可愛いと思った。
俺はレヴィと何を話すか決めていた。
怒られるかもしれない。
でも、嘘はつきたくない。

「リル、怒らないで聞いて」

俺はそっとリルの手を取る。
そして先日の話をした。

「だから、リルのも噛ませて欲しい」

俺の申し出にポカンとした表情で見下ろされて、そしてリルの瞳に大粒の涙が浮かび上がった。
え？

「リル？」
「わ、悪い……まさか、そんな話だとは……思わなくてな」
「怒ってない？」
「複雑……ではあるけどな、それでも嬉しいしかねぇな」
「良かった……じゃあ、今噛んでもいい？」
「うれしいけどな、シャワー浴びてきてからでいいか？流石に帰ってきたばかりだしな」
「リクト、一緒に入ってこいよ、俺は少し出掛けてくる」

話が終わったと、立ち上がりかけたレヴィをリルはちらりと見た。

「３人で入るか……？」

リルの怒りは成りを潜めて、俺とレヴィがしたことを許してくれるらしい。
悪いことをしたとは思っていないけれど、やはりちょっとは後ろめたい。

「レヴィ、どうする？」
「俺はリルがいいなら」
「じゃあ３人で入ろうか……待って、用意してくるから」

大きな屋敷だけど時折来るハウスキーパーさんが掃除をしていってくれるくらいで、細かなメンテナンスは自分でしなければならないのだ。

「いい、俺がやる」

レヴィが立ち上がると、のしのしと浴室に消えて行った。

「リル……ありがとう」
「俺は、リクトも好きだがレヴィも大切だ。だからどちらも大切にしたい」

リルの普段見せない男気に惚れ直すのは仕方ないこと。
リルにもレヴィにも違う魅力があるが、自分はどうだろうか。
不安は少しあるけれど、ふたりを選んだのは自分なのだ。
これから、どんな未来が待っていても受け入れなければ。そう覚悟をきめるのだった。