【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

133話

「ミラ」

そう、ルーファスさんが口にした。

「運命の女性…ですか？」

ふと、口をついて出た言葉。
俺の知っている意味。
または、羨望。
どちらにしても、本当に似合う言葉だ。

「可愛いという意味もあるの。リルも小さなという意味があったのだけど……」
「大きく育ちましたね？じゃあ、ミラは美しく育つと思いますよ」
「でしょ！？アタシとダーリンの子供だもの」

ミラが空中に手を上げて何かを掴みたがってかいるのかパタパタさせている。
白銀に少し黒の混じる髪。
毛色とすると虎なのだが、ミトさんやリルとは違って黄色に黒の縞ではない。
ホワイトタイガー……白虎という種類を思い浮かべた。
ベビーベッドの中で三角の耳が何かを聞くのかぷるぷると揺れていた。
可愛い。
凄く可愛い。

「ミ……っ、お母さん、俺、何か出来ることがあったら言ってくださいね？まだ子供いませんけど、小さな子育てたことはありますから」
「「えっ！？」」
「え？」

声を上げたリルとレヴィに見つめられる。

「あらあら、リクトちゃんそれはちょっと駄目よ？」

ミトさんに腕を引かれて部屋の隅に連れていかれると、ヒソヒソと耳に囁かれる。
子育てをしたことがあるというのは、伴侶がいたと言うことになるようで、俺はそんなつもりはなく、ただ単にペットショップに来た小さな子たちのお世話は慣れていると伝えたかっただけなのだ。
ミトさんに、ふたりとも殺気だっているから今夜は寝かせて貰えないかもね。なんて笑われるとその意味をわかって俺は真っ赤になった。
次の瞬間腕に痛みが走ると、リルの手が俺の腕を掴んでいる。

「り……る？」
「さて、ミラは親父とお袋に任せて俺たちは部屋行くか」

きらりと光ったリルの目は肉食獣のそれで、俺の喉はひゅっと鳴った。
助けを求めてレヴィを見ると、レヴィの目も座っている。
何で？

「ほら、いってらっしゃい？」

ミトさんにトンと背中を押されると、その向こうでルーファスさんがひらりと手を振った。
俺は有無を言わさず抱き上げられ逃げることもできない。
どうしてこうなった！？
俺はちらりとリルを見上げたが、その口許には笑みは無かった。