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132話
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……長い時間5人でその果実を見詰めていると、ミトさんの掌の中で実に裂け目が入り、産まれてきたのは可愛らしい虎の子供だった。
けれど、その体毛は白。
みぃぃと声を上げた姿は愛らしい。
ランタンで照らし出すその可愛い顔。
ふるりと震えて開いた目は水色だった。
アルビノじゃない。
俺はホッとしながら、ミトさんを見ると、ミトさんは静かに泣いていた。
「親父!」
鋏を渡されたルーファスさんが枝から実を切り離し、そのなかに残っていた液体をスプーンで掬う。
ミトさんが抱いた女の子の口許にスプーンを寄せると、ぺろりとその液体を舐めてからこくりと嚥下した。
小さな命が可愛くて仕方ない。
「ミト、笑え……幸せならな?」
「はい」
涙を拭いたミトさんはにこりと笑って、大切そうにその子を抱き締めた。
俺は、ついスマホで写真を取るのを忘れていた。
「とりあえず帰りましょ?寒くはないけど、おうちに入れてあげたいわ」
ミトさんの言葉に全員が頷いて、真っ暗な闇の向こうに見える自宅へと戻った。
玄関をルーファスさんが開けると、ミトさんが先に入る。
そして、俺たちが続くと扉を閉めた。
「さて、暖かい部屋に行くか」
ルーファスさんがリビングへと向かう。
置いてあるのはベビーベッド。
そこへ、ミトさんが赤子を寝かせた。
今日のために購入した一式。
男の子か女の子かわからなかったため、どちらにも使える水色の毛布。
今を思えば瞳の色に良く似合う。
「女の子…だったよね?名前は決めたのですか?」
俺は全員分の紅茶をいれてテーブルに置きながら問いかける。
すると、ルーファスさんとミトさんが顔を見合わせて笑みを浮かべる。
どうやら決めていたようだ。
幸せになれる名前が良いなと俺は思った。
けれど、その体毛は白。
みぃぃと声を上げた姿は愛らしい。
ランタンで照らし出すその可愛い顔。
ふるりと震えて開いた目は水色だった。
アルビノじゃない。
俺はホッとしながら、ミトさんを見ると、ミトさんは静かに泣いていた。
「親父!」
鋏を渡されたルーファスさんが枝から実を切り離し、そのなかに残っていた液体をスプーンで掬う。
ミトさんが抱いた女の子の口許にスプーンを寄せると、ぺろりとその液体を舐めてからこくりと嚥下した。
小さな命が可愛くて仕方ない。
「ミト、笑え……幸せならな?」
「はい」
涙を拭いたミトさんはにこりと笑って、大切そうにその子を抱き締めた。
俺は、ついスマホで写真を取るのを忘れていた。
「とりあえず帰りましょ?寒くはないけど、おうちに入れてあげたいわ」
ミトさんの言葉に全員が頷いて、真っ暗な闇の向こうに見える自宅へと戻った。
玄関をルーファスさんが開けると、ミトさんが先に入る。
そして、俺たちが続くと扉を閉めた。
「さて、暖かい部屋に行くか」
ルーファスさんがリビングへと向かう。
置いてあるのはベビーベッド。
そこへ、ミトさんが赤子を寝かせた。
今日のために購入した一式。
男の子か女の子かわからなかったため、どちらにも使える水色の毛布。
今を思えば瞳の色に良く似合う。
「女の子…だったよね?名前は決めたのですか?」
俺は全員分の紅茶をいれてテーブルに置きながら問いかける。
すると、ルーファスさんとミトさんが顔を見合わせて笑みを浮かべる。
どうやら決めていたようだ。
幸せになれる名前が良いなと俺は思った。
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