【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

131話

「ミトさん、ルーファスさん……ちょっと、いい？」

俺はふたりの前でスマホを見せる。
そしたら、リルとレヴィと同じリアクションを見せてくれた。

「これに、ルーファスさんとミトさんの…あ。
お父さんとお母さん……」

名前で呼ぶと、ふたりがじいっとこちらを見て非難するため俺は項垂れながら言い直す。
もう、お父さんお母さん呼びが気に入ったみたいで、読んで欲しいらしい。

「お父さんとお母さんの姿を残したい。撮したら駄目ですか？」
「私はいいわよ？」
「俺もだ」
「じゃあ…何処にしましょうか」
「ダーリンとソファーに座ってにしましょうか」

ミトさんの提案に広間のソファーに座ってもらい、先ずは１枚。
そして、画面を見せるとミトさんが欲しい欲しいと言い始める。
やっぱり、簡単なカメラできたらいいね。

「で、もしお父さんとお母さんが許してくれるなら、産まれてくる子をこうして写真に納めたいのですが」
「いいわね！私は賛成！」
「産まれる瞬間から撮ってくれ」
「ありがとうございます」

俺は笑った。
嬉しくて嬉しくて。
それから直ぐに新月の日はやってきた。
俺たちは手に小さな明かりが灯るランタンを手に歩いていた。
向かうのは聖樹。
少しドキドキしながら、俺はポケットにスマホを入れている。

空気が変わって少しだけ暖かくなった聖樹に実った実がほんのり光り俺たちを待っていた。

「だいぶ大きくなったね、それでも小振りだから女の子かなぁ」

ゆらゆらとリボンが揺れている。
本来なら、満月に多く産まれるって子たちだが、何となくこの子は新月の静かな夜に産まれる気がした。
産まれなくてもと、諦められかけた子。
頑張れ。

「お父さん、お母さん、果実を触ってあげてください……」

小さな街の聖樹だから、実の成る数は少ない。

「大きくなったわね……」
「そうだな」

ルーファスさんの手に収まるほどの果実が、新月の闇のなかでゆっくりと点滅を始める。
産まれてくる子はどんな子でも可愛いだろう。
ミトさんの代わりにリルがカゴを、ルーファスさんの代わりにレヴィがハサミを持ってきた。
まだ、もう少しかかるだろう。
ゆっくりとした点滅が少しずつ少しずつ早くなっていく。
間もなく家族が増える……俺はそれが嬉しかった。