【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

114話

翌朝、朝食を終えて身支度を整えたルーファスさんとミトさんは家を出ていった。
自宅に帰る。
それはわかっていたはずなのに、俺はギャン泣きをしてしまう。
ミトさんに抱き付いて子供のように泣いてしまった。
涙が止まるまで抱き締めてくれていたミトさんの優しい声がまだ耳に残っている。

大丈夫よ。
また会えるわ。
泊まりにきて？
元気でね？
手紙を書くわ。

繰り返される言葉にこくりと頷きやっとミトさんから離れると、そっと頬にキスをされる。

リクトちゃんは私たちの３人めの子供なんだからね？遠慮しちゃ駄目よ？
愛しているわ。

実の母にもあまり言われたことのない言葉に更に涙腺が崩壊する。
それでもなんとか手を振って見送ると、リルとレヴィが抱き締めてくれた。

いつの間にか家族になっていたのだ。

ふたりがいないだけでリビングががらんとしてしまう。
それでも、今日は午後から出掛けないといけないと顔を洗って支度をする。
ゾウさんのところへ行く約束なのだ。
デートなのだから悲しい顔をしていてはいけない。

「リル、レヴィ行こうか」

ふたりは今日も男前だ。
陽射しが少しだけ強くなってきている気がする中、石畳の上を歩いて職人街に向かう。
リルもレヴィもソワソワとしているのは新しい武器が手に入るからだ。
リルは先日試せたのが凄く気に入ったみたいで、それを見たレヴィもドキドキしているようだ。

これでふたりがまたクエストができるなら頑張って欲しいけれど……

「よぉ、来たぜ？」

もう何度目だろうか、ゾウさんの工房に足を踏み入れると、今日は金槌の音はしていない。

「お、来たか」

いつものようにひょっこりと顔を出したゾウさんに何だか安心感を覚えた。

「昨日はご馳走になって悪かったな。美味かった」
「ありがとうございます、よかったらまた食べに来てくださいね？違う食事を出しますから」
「おう」

そんな会話をしながら、ゾウさんはリルの剣を取り出した。
銀の刃がキラリと光る細くしっかりとした双刀。
それをリルは嬉しそうに手にした。

「凄く軽いな」
「軽くても切れ味はいいし、刃溢れもしにくいが気を付けなきゃならないのが、引きながらじゃないと切りにくい……押すと刃が歪む。折れはしないが……な？」

日本刀は引きながら切るものだったなと、ふと思い出した。