【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

107話

「聞こえる…の、ですか？」

ナスカさんがこちらを見る。

「はい。しっかりと掌からも伝わってきます…よねぇ？」

俺はつい助けを求めるようにリルとレヴィを見てしまう。

「いや、普通は実がてきてから30日くらいはわからかねぇ…」
「じ、じゃあ…早くわかっちゃいけなかった？」

もしかして、早くわかると駄目だったのかなぁ。

「１日でも早くわかった方が強く元気な子が生まれるんだ」
「あー…じゃあ、大丈夫な気がするよ？男の子か女の子かまではわからないけど…」

ちょっと安請け合いかなと思いながら、ちらりとナスカさん達を見ると、抱き合いながら嬉しそうに笑っている。
何ができるか今の俺にはわからないけれど、できることなら何でもしようと思った。

ナスカさん達はもう少し子供の所に居たいと残るらしい。
俺たちは帰路につこうと歩き出した。

「何だかほっこり、幸せだったね…子供もかわいいし」
「そうだな」
「帰ったら少し刺繍を頑張らなくっちゃ…」

そうして会話をしながら家に帰る。
ミトさん達は先に寝たようで、玄関先の灯り以外は消えているようだった。

「リルもレヴィも夜は平気？見えてる？」

ふと気になって問いかける。

「俺は夜ってあまり良く見えないんだ…全く見えなくはないんだけど、昼間みたくは見えてなくて…」
「俺は…見えにくくはなるかな」

レヴィが言う。

「俺はそんなには苦にならない程度…だな」

リルが笑う。
玄関の扉を開けて中に入り、手探りで灯りを点けるとぼんやりと明るくなっていく玄関。

「着替えて寝ようか…」

もうだいぶ遅い時間だからとふたりを見上げると、同時にぎゅっと抱き締められる。
あ、これ…駄目な感じがする。

「いいよ、ゆっくりしようか…明日も朝遅くなっちゃうかなぁ…」

にこりと笑みを浮かべてふたりの背中を叩く。
触れあうのは恥ずかしいけれど嫌じゃないから。
手を繋いだまま寝室に向かい、３人で部屋に入るとそっと扉を閉めた。