【ＢＬ】転生したら獣人の世界で何故か肉食獣に愛されています。

93話 レヴィの出自

「リクト、洗い物はやっとくから風呂入ってこいよ？」

リルがそう申し出てくれたのを大丈夫だと断って最後の洗い物を終えた。
５人分の食器は流石に多いけれど、それでも食事は楽しい。
明日の朝はサラダにしようと、先に葉物野菜を切っておく。
水に晒して少しでも食べやすくするためだ。
本当はレンジとかがあれば、温野菜で量が食べられるんだけど、野菜苦手な獣人達はドレッシングで何とか食べているみたい。
無理やりつくってもらったおろしがねで、大根おろしを作ったけれど、明日はこれでニンジンのドレッシングにしようかと思ってる。
ドレッシングじゃなくてもキャロットケーキ作ってもいいなぁ。
本当は、パンケーキもいいんだけど、５人分を焼くにはフライパンじゃ、間に合わない。
ホットプレート欲しいなぁ…鉄板…それなら、バーベキューコンロとかも欲しいし…頼んでみたら…作ってくれないかなぁ。
つい、ちらりとリルを見てしまう。
無駄遣いだよねぇ…でも、庭を整備したらバーベキューできると思うんだけど…なら、焼肉のたれ欲しい…。

「あの、リル…レヴィにも相談…」
「待ってろ」

何かを察知したリルが頷くと、レヴィを呼びに行く。
そして、レヴィとふたり連れだって戻ってくるのを待って、俺はダイニングで話し出す。

卓上のホットプレートと、野外のバーベキューコンロ。
どっちも魔道具で、魔石を使うしオーダーメイドならかなりの金額になるから、食費を預かる俺としては欲しいけれど無理は言えないし、ぞうさんにお願いしたら、武器屋で作るものじゃないと言われそうだ。
でも、お願い！

「なんだ、いくらかわからねぇけどいいぜ？」
「あぁ、美味いものが食えるなら…」
「明日にでも行くか…つか、親父達はいつまでいるんだ？」
「いつまででも嬉しいけど…家族増えたみたいだし…」

その動きにレヴィが止まる。

「俺…さ、こっちの世界じゃ家族いないから、ふたりが家族みたいだし…その家族はやっぱり大切にしたい…そうしてもいい？」
「…あぁ、レヴィ」
「俺には両親はいないから…」

ポツリと呟いたレヴィに、俺はふってはいけない話題だったのかとハッとした。

「レヴィごめん…」
「いや、いつかリクトには話さなきゃと思っていた事だし…リルも、ミトさん達も知っている事だからな…」
「話したくないならいい…レヴィ…」

いつも以上に言葉数が少ないレヴィ。
きっと、良くない知らせなのだろう。
俺が聞いてしまっていい？
聞いたら、レヴィとの関係が崩れてしまうだろうか…
不安にかられた瞬間、リルがレヴィの頭を叩く。

「んな深刻な顔すんな、リクトなら大丈夫だって」

バシッと言う音。
それに少しだけ呻いたレヴィは大きく深呼吸をしたのだった。