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5・6話

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「えっと……こんな大きな部屋を借りていいの?」
2階に上がるとリルが案内してくれた部屋の扉を開ける。
其処にあった部屋は俺が独り暮らしをしているアパートの部屋全体より大きかった。
マジですか?それともこれは獣人サイズなの?
大きめのベッドに机、椅子、本棚等。
「あぁ、冒険者仲間が泊まる時に貸してる部屋だからな。随分使ってねぇからちょっと埃臭いけど我慢してくれ」
リルが奥の窓を開けてくれると気持ちいい風が入ってきた。
窓を開けても壁じゃない!そんなことにびっくりした。
しかも、横スライドではなくて、中から外に開く観音開き。
あれ、でも最大限開いたら俺の手は届くかな……
「ありがとう。リルさんもレヴィさんも……本当に助かる……」
にっこりと笑うと、リルは気にするなと手を振った。
この世界は電気ガス水道は無いが、それを補う魔道具があり、ボタン1つで部屋が明るくなったり、火が付いたり水が出たりする。
そんな説明を受けて便利だなと思う。
だって魔道具があれば使用するときにお金はいらないんだって。
魔道具は、少しお高いが長く使えるらしい。
「リルさん、飯とかどんなのを食べてるのかな?俺、作れるなら作るよ?」
まずはこの世界での食事がどんなものか知りたい。
あと、この家に来るまでにすれ違ったけれど、この世界の獣人の事とかも詳しく知りたい……ウサギの獣人さんとか可愛かったなぁ。
「マジか!あー……俺もレヴィも肉がありゃ大概は大丈夫!なぁレヴィ?」
「あぁ」
入口の扉からひょっこりと顔を出したのはレヴィで、可愛い耳がピピッと動いた。
「飯もいいが、リクトが大丈夫なら、服とか買わないと。歩けないなら抱いてく」
レヴィの低音が腰にくる。
すげー好みの声なんだよなぁ。
「や、もう大丈夫だから!少しゆっくりさせてもらったら大丈夫になった」
「そうか……」
ん?何故かレヴィが残念そうに見えるんだけど。
気のせいか。うん、気のせいだな!
「レヴィが嫌なら俺が抱いてくぞ?」
「いやとかじゃなくて、大丈夫だって!」
何だ此処の住人は……抱っこ好きか!
なんて顔には出さないけどさ、やっぱり恥ずかしいって……成人済みの男が…さ。
リルもレヴィも、何だかちょっと過保護だよね。
「俺さ、お金無いし……やれることもあまりないだろうけど、やって欲しいことがあったら言ってね?料理は口に合うように頑張るし、掃除とか洗濯なら少しはできるかもだし……」
2階から降りて、ダイニングを通り抜けるとキッチンに入った。
皿や調理器具は一通り揃っているようで、お湯も水も出るし、冷蔵庫みたいに食材を冷やす箱もあった。
無いのは食材。
お米とか、醤油、味噌が無いのは仕方ないよなぁ……俺に作るスキルは無いし。
小説とかだと、味噌を作るスキルを持っていて大豆発見!味噌できた!なんて簡単にやるけど、豆を炊いたりしなきゃいけないから自力でなんて絶対無理。
肉も魚も捌けないし……そもそも獣人さんの食べる肉って何の肉なの?
そんなことを考えながら俺はキッチンを見ていくも、あるのは玉子とバゲット。
砂糖や塩はあるみたいだった。
ん。これ……ベーコンやチーズ?ナッツもある。
それに、何だこの酒の量!
セラーを開けた瞬間飛び込んできたのは同じラベルの貼られた大量の瓶。
無意識に二人をじと目で見る。
「お酒とツマミは充実してるんですね」
「やっ……ま、まぁ俺もリルも飲む……から……」
レヴィさんの言い訳に俺は苦笑して。
「飲みすぎないでね?程々に」
そう釘を刺してから、収納扉を閉めた。
こちらの食事は1日2食、朝晩だけらしい。
でもきっとふたりは肉体を酷使しそうだから、お昼とか持って行ってもらった方がいいかも。
あと、俺ができるのは簡単な料理。
独り暮らしをしてからだいぶ経つし、まかり間違って恋人ができたら食べさせたいと思っていたから少し練習したけれど、それが何処まで通用するかはわからないけど。
この世界の食事、食べて判断しようと、二人が食事に連れていってくれると言うので、全てをお任せした。
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