【ＢＬ】空と水の交わる場所～ゲーム世界で竜騎士になりました。

８章 命

8-4

一斉に城内が騒がしくなる。
窓の外では飛竜騎士達が飛竜を繰り空に上がった。
その姿は圧巻で誰しもが空を見上げているだろう。
その先頭に立つのはアイヴィス様。
城を護るのはカラク様と聞いた。



「アスランっ！リオル！」

箱を抱えたアスランとリオルを見つけると手を上げる。
アスランが抱える箱の中にはセラフィリーアの弓が入っていた。
此処まで運んでくれたのか…セラフィリーアの焦る気持ちを察してくれたのだろう。

「セラフィリーア様…聞きました」

「うん、スタンピードが始まったみたい。一気には来ないからまだ時間があるし、発生現場には最初から騎士が配置されているから」

その言葉にリオルが不安そうに瞳を揺らす。
普段冷静な侍従も人間なのだ。

「こちらを、今、開けます」

アスランが鍵を取り出すとカチリと開く。
アスランはだいぶ落ち着いているようだが、それでもまだ若い。感情を押し込める術を持っているのだろうが、無理はしないでもらいたい。

「待って、アスラン…ありがとう。リオルも。」

セラフィリーアは二人を交互に抱き締めた。
自分より細く見える姿はいつの間にか青年のしっかりした骨格になっている。

「俺は行ってくるけど必ず帰ってくるから。
ハワードの言うことをしっかり聞いて此処を護って。
帰る場所がないと困るからね？」

一瞬身体を強張らせた二人だったが、それぞれ抱き締め返してくれる。

「「はい」」

しっかりと頷いた二人によろしくと託し、リオルにも鍵を開けてもらう。

「行ってくる」

取り出した矢筒を背中に背負うと、リオルが小さなビロードの宝石箱を差し出してくる。

「セラフィリーア様、お守りですので、お付け下さい」

箱を開くと中にはピアス。
小さな黒い石が組まれたものだった。

「あ、ありがとう…なら、左右に…二人がつけてくれる？」

いつの間にか開いていたホールは目立たなかったため、そのままにしていたが。

「失礼します」

アスランがひとつめ、リオルがふたつめ。
リオルの指が少し震えているのはスタンピードの緊張だろうか。

「ありがとう。帰ってきたらお風呂入りたいかも？」

「準備してお待ちします」

「うん、行ってくるね」

あまりゆっくりはしていられない。
くるりとアスラン達に背を向けて出口に向かう。
その先でネイトが２頭の馬と待っていた。
ネイトの背中にも弓矢。
セラフィリーアの長弓よりは短い、殺傷能力の高いもの。

「ありがとうございます」

馬の手綱を手にすると、セラフィリーアはその背中に跨がった。