91 / 124
7章 記憶
7-8
しおりを挟む
あれから、毎日セラフィリーアは騎士団に通い詰めた。
誤射も少なくなりだいぶ長く構えていられるようになった頃、毎日遠くから顔を見せていた飛竜の片方が近寄ってきた。
漆黒の鱗に角と瞳、爪に金色の入った小さい方の個体だった。
何かを喋っているのか、クルルクルルっと鳴いている。
「…?ごめんね…俺は騎士じゃないから何を言っているのかわからないんだ」
セラフィリーアは困ったように辺りを見回した。
昨日から、騎士が付くことがなくなり敷地内を自由に歩き回れるようになっていたのだ。
アスランも今日は一緒に来たがアイヴィスに呼ばれてそちらに行ってしまっている。
「どうしよう…何かを訴えているみたいなんだけど…」
飛竜騎士達は魔獣の生態についての座学をしている。
スタンピードに向けて。
困ったと思いながらそろりそろりと飛竜に近付くと、飛竜もゆっくりと這うように少しずつ距離をつめてくる。
手を伸ばしても触れるのには少し足りないくらいの距離まで近付くと、セラフィリーアは話し掛ける
「えっと…こっちの言うことはわかる?わかるなら頭を縦に振って?」
飛竜に話し掛けると、こくりと頭を縦に振った飛竜はそれ以上進まずに足を止める。
キラリと輝く金の瞳に宿る光はとても理知的で、セラフィリーアはいつの間にか緊張していたのだろう身体からゆっくり力を抜いた。
「どうしたの?何処か痛いとか?貴方の主は?いるの?」
痛いかには頭を横に振り、主には頭を縦に振ってから、じっとセラフィリーアを見つめている。
金色を履く飛竜は飛竜の中でも上位に位置すると聞いている。
遠くでこちらを見つめている大柄の飛竜にも金色は入っているが、目の前の飛竜程ではない。
「触っても大丈夫?契約者もちの飛竜はあまり他人に触られるのは苦手だと聞いているけれど…」
噛まれたらひとたまりもない大きな口の中には鋭利な歯がびっしりと生えている。
少し触れただけでも怪我をする可能性はあるが、セラフィリーアは全く飛竜は怖くなかった。
大丈夫とばかりに飛竜が頭を下げて撫でてくれとばかりに擦り寄ってくる。
その、頬の辺りを撫でてみると思ったよりもつるりと滑かな感触だった。
何故か懐かしい感触。
「可愛い…ありがとう、触らせてくれて…とても懐かしい」
無意識のうちに飛竜に頬を寄せる。
初めて触れるはずの飛竜。
なのに何故か心が暖かくなっていく。
空白の期間が彩られていくような気がした。
誤射も少なくなりだいぶ長く構えていられるようになった頃、毎日遠くから顔を見せていた飛竜の片方が近寄ってきた。
漆黒の鱗に角と瞳、爪に金色の入った小さい方の個体だった。
何かを喋っているのか、クルルクルルっと鳴いている。
「…?ごめんね…俺は騎士じゃないから何を言っているのかわからないんだ」
セラフィリーアは困ったように辺りを見回した。
昨日から、騎士が付くことがなくなり敷地内を自由に歩き回れるようになっていたのだ。
アスランも今日は一緒に来たがアイヴィスに呼ばれてそちらに行ってしまっている。
「どうしよう…何かを訴えているみたいなんだけど…」
飛竜騎士達は魔獣の生態についての座学をしている。
スタンピードに向けて。
困ったと思いながらそろりそろりと飛竜に近付くと、飛竜もゆっくりと這うように少しずつ距離をつめてくる。
手を伸ばしても触れるのには少し足りないくらいの距離まで近付くと、セラフィリーアは話し掛ける
「えっと…こっちの言うことはわかる?わかるなら頭を縦に振って?」
飛竜に話し掛けると、こくりと頭を縦に振った飛竜はそれ以上進まずに足を止める。
キラリと輝く金の瞳に宿る光はとても理知的で、セラフィリーアはいつの間にか緊張していたのだろう身体からゆっくり力を抜いた。
「どうしたの?何処か痛いとか?貴方の主は?いるの?」
痛いかには頭を横に振り、主には頭を縦に振ってから、じっとセラフィリーアを見つめている。
金色を履く飛竜は飛竜の中でも上位に位置すると聞いている。
遠くでこちらを見つめている大柄の飛竜にも金色は入っているが、目の前の飛竜程ではない。
「触っても大丈夫?契約者もちの飛竜はあまり他人に触られるのは苦手だと聞いているけれど…」
噛まれたらひとたまりもない大きな口の中には鋭利な歯がびっしりと生えている。
少し触れただけでも怪我をする可能性はあるが、セラフィリーアは全く飛竜は怖くなかった。
大丈夫とばかりに飛竜が頭を下げて撫でてくれとばかりに擦り寄ってくる。
その、頬の辺りを撫でてみると思ったよりもつるりと滑かな感触だった。
何故か懐かしい感触。
「可愛い…ありがとう、触らせてくれて…とても懐かしい」
無意識のうちに飛竜に頬を寄せる。
初めて触れるはずの飛竜。
なのに何故か心が暖かくなっていく。
空白の期間が彩られていくような気がした。
13
お気に入りに追加
672
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
宰相閣下の絢爛たる日常
猫宮乾
BL
クロックストーン王国の若き宰相フェルは、眉目秀麗で卓越した頭脳を持っている――と評判だったが、それは全て努力の結果だった! 完璧主義である僕は、魔術の腕も超一流。ということでそれなりに平穏だったはずが、王道勇者が召喚されたことで、大変な事態に……というファンタジーで、宰相総受け方向です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる