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7章 記憶

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「セラ、スタンピードが来ると聞いた‥」

寝台の傍に椅子を置き、其処に腰掛けるのはアイヴィス。
その後ろには副騎士団長3人と、宰相。
先日アスランに頼んだ伝言が正しく伝わったらしい。
昨日、アイヴィスから副騎士団長と宰相を交えて話を聞きたいとの通知があり、それを了承した。
本来なら自ら赴かなければならないところをアイヴィスが同席をすることで自室に来て貰うことになった。

「はい、冬の前までには。詳しい日付はわかりませんが、来ます」

セラフィリーアはこくりと頷いて言い切る。
昨日アスランに見せたような焦りは圧し殺したまま。

「なぜわかる。今までスタンピードを予言した者はおらぬ」

言葉を発したのは、宰相だと紹介された男だった。

「初めまして、ロイズ様。セラフィリーアと申します。このような格好で申し訳ありません。
お言葉ですが、なぜと言われましても私にもわかりません…予言としか言いようがありませんが、ファレナスの王宮に問い合わせていただければわかると思いますが、私の魔獣関係の予言は外れた事はありません。
また、全ての発現を予言できるわけでもありません。
私が予言できなかったために、ファレナスの城門が破られかけたこともありますが、大半の大型魔獣の発現は予言しております」

まずはセラフィリーアは挨拶をしてから姿勢を正すと、少しでも健康そうに見えるように笑みを浮かべてアイヴィスから順番に顔を見ていく。
アイヴィスはいつもと変わらないきりりと引き締まった表情をこちらに向け、副騎士団長の3人も不安の色は少しあるものの、しっかりとした表情をしていた。
慌てるのは宰相のみで、アイヴィスに窘められている。

「この世界で、魔獣の出現やスタンピードは各国々で一斉におこります。時間は少し差がある可能性はありますが‥同じ日の似た時間にです。ですので、他国でスタンピードがあっても、連絡を送る術がないのが現状です」

ゆっくりとわかりやすく言葉を選びながら説明をする。
いきなりゲームがと言われても、それは混乱を招くだけ。
どうすればわかりやすく聞こえるかを気にしながらセラフィリーアは伝えようとする。

「1度スタンピードが起こった場所から再びスタンピードが起こります。過去の記録があればそれは証明されるはずです。
また、魔獣の出現はおよそ1年に1度あるはずですが、スタンピードがおこるときは魔獣出現から1年以上開いている筈です」

「我々はどうしたら?」

「申し訳ありませんが、アルトリアの情勢がわかりませんのではっきりとは申し上げられませんが、スタンピード時には飛竜騎士、騎士、兵士の力で押し返すか殲滅をしているかと思われます。
先ずは騎士達の増強と、訓練。城壁等の点検、補修。食料の備蓄を進言いたします」

「宰相、良いな?、国庫を開いて予算を組み直せ」

「また、一般国民への通達も必要です。恐怖を煽る必要はありませんが、自分の身は自分で護ることを前提としてください。魔法師を配置し、国を覆う防御壁を展開できるかどうかで攻略はかなり変わります。
ファレナスは、魔法師に恵まれていましたから、防御壁を展開して、スタンピードを削ります。
スタンピードは7日堪えれば消滅します。これは、何故と聞かれてもわかりませんが、7日めの深夜に魔獣は撤退するそうです…けほっ…他に何かありますか?」

とりあえず自分の言いたいことは伝えたと顔を上げる。
久し振りにたくさん喋ったからか喉に違和感がある。
それに気付いたのか、静かに入ってきたアスランが温かいジンジャーティーをいれてくれた。

「セラ、ありがとうございます。今日はこのくらいにしましょう…また聞きたいことがでてくると思いますから、そのときにはお願いします。ファレナスには書簡を急ぎで送ってありますので安心してください」

アイヴィスが立ち上がると、他の4人も後を追う。
少しは役立てただろうか…
セラフィリーアは寝台に凭れて目を伏せた。
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