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7章 記憶
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…あれ?
これは『俺』の記憶…か。
四角く縦に長い建物。
黒い髪、黒い瞳の人達が歩いている。
良く見慣れた風景。
四角い箱の中では人が騒がしげに喋っている。
凄い勢いで走る箱
道行く人は何か四角い板を触っている。
それが暗転して違う場面になった。
のどかな田園
高い城壁
敷き詰められた石畳
あぁ、ここはゲームの中だ。
一番好きだった剣と魔法の世界…
家族がいて、友達がいて…作物を作ったり公益をしたり。
楽しかったなぁ…
…隣国との公益や、ガチャを引いて出たアイテムを増やしたり…イベントをしたり。
のんびりとした無課金ゲームだったけど、たまに魔獣…モンスター討伐があったり、なかったり…
モンスター…!?
前回あったのはいつだっけ?
年に1度はあるはずなのに…1年以上魔獣の襲来が無ければスタンピード…大発生があるはずだ。
俺は目を覚ます。
「アスラン…アスラン!」
飛び起きた先、手元の鈴を鳴らす。
心臓が早鐘を打って、変な汗が背中を伝うのがわかった。
「アイヴィス様は?…スタンピード…冬前に…」
現れた少年に意味を成さない言葉を吐く。
「セラ様、セラ様…落ち着いてください。スタンピードには備えてあります、ファレナスもアルトリアも…アルトリアから飛竜をファレナスに派遣して下さることも決まっておりますから、セラ様は心配なさらないでください」
アスランに抱きついて過呼吸気味に告げると、ポンポンと背中を叩かれ、ゆっくり呼吸をしてくださいと促された。
「スタンピードは冬前ですか、アイヴィス様に伝えます。昔から何故かセラ様は魔獣の発生やスタンピードには予言めいた事を言われて、それが外れた事はありませんから…大丈夫ですよ、安心してくださいませ」
それはそうだ。
ゲームでは、イベント告知があり、それに備えて装備を固める。
セラフィリーアも、たまたま出たレアアイテムの『氷樹の弓矢』で応戦したこともある。
「シリウス陛下にも、早急に信書を出して頂きます。お茶をいれますから、ゆっくり飲んでくださいませ。
私が行ってセラ様の氷樹の弓矢もファレナスから預かって参りましょうか」
心配なのだろうと気遣ってくれるアスランから離れると、すまなそうに目を伏せて、セラフィリーアはこくりと頷いた。
この腕では弓を引けないだろう。
それでも手元に無いのは不安だった。
だが、どうしてかファレナスに帰るとは思い付かないでいる。
「アイヴィス様に武器を持ち込む許可をいただいてからにして?
それと、少しでも体力をつけなきゃね…前線には出られなくても、支援くらいはしたい…」
アスランに気付かれないようにストレッチなどで少しずつ動けるようにしていた身体。
明日からは少しでも無理をして、前の身体までとは言わないが体力をつけたいと、セラフィリーアは決めた。
戻らない記憶は仕方ない、無い物ねだりをしても仕方ないとセラフィリーアは天井を見上げる。
あとどのくらいでおこるかはわからないスタンピード。
1日1日を大切に生きなければならない。
やれるだけやろう。
セラフィリーアは漸く自分の意識の中に違う意識があることに気付き始めた。
これは『俺』の記憶…か。
四角く縦に長い建物。
黒い髪、黒い瞳の人達が歩いている。
良く見慣れた風景。
四角い箱の中では人が騒がしげに喋っている。
凄い勢いで走る箱
道行く人は何か四角い板を触っている。
それが暗転して違う場面になった。
のどかな田園
高い城壁
敷き詰められた石畳
あぁ、ここはゲームの中だ。
一番好きだった剣と魔法の世界…
家族がいて、友達がいて…作物を作ったり公益をしたり。
楽しかったなぁ…
…隣国との公益や、ガチャを引いて出たアイテムを増やしたり…イベントをしたり。
のんびりとした無課金ゲームだったけど、たまに魔獣…モンスター討伐があったり、なかったり…
モンスター…!?
前回あったのはいつだっけ?
年に1度はあるはずなのに…1年以上魔獣の襲来が無ければスタンピード…大発生があるはずだ。
俺は目を覚ます。
「アスラン…アスラン!」
飛び起きた先、手元の鈴を鳴らす。
心臓が早鐘を打って、変な汗が背中を伝うのがわかった。
「アイヴィス様は?…スタンピード…冬前に…」
現れた少年に意味を成さない言葉を吐く。
「セラ様、セラ様…落ち着いてください。スタンピードには備えてあります、ファレナスもアルトリアも…アルトリアから飛竜をファレナスに派遣して下さることも決まっておりますから、セラ様は心配なさらないでください」
アスランに抱きついて過呼吸気味に告げると、ポンポンと背中を叩かれ、ゆっくり呼吸をしてくださいと促された。
「スタンピードは冬前ですか、アイヴィス様に伝えます。昔から何故かセラ様は魔獣の発生やスタンピードには予言めいた事を言われて、それが外れた事はありませんから…大丈夫ですよ、安心してくださいませ」
それはそうだ。
ゲームでは、イベント告知があり、それに備えて装備を固める。
セラフィリーアも、たまたま出たレアアイテムの『氷樹の弓矢』で応戦したこともある。
「シリウス陛下にも、早急に信書を出して頂きます。お茶をいれますから、ゆっくり飲んでくださいませ。
私が行ってセラ様の氷樹の弓矢もファレナスから預かって参りましょうか」
心配なのだろうと気遣ってくれるアスランから離れると、すまなそうに目を伏せて、セラフィリーアはこくりと頷いた。
この腕では弓を引けないだろう。
それでも手元に無いのは不安だった。
だが、どうしてかファレナスに帰るとは思い付かないでいる。
「アイヴィス様に武器を持ち込む許可をいただいてからにして?
それと、少しでも体力をつけなきゃね…前線には出られなくても、支援くらいはしたい…」
アスランに気付かれないようにストレッチなどで少しずつ動けるようにしていた身体。
明日からは少しでも無理をして、前の身体までとは言わないが体力をつけたいと、セラフィリーアは決めた。
戻らない記憶は仕方ない、無い物ねだりをしても仕方ないとセラフィリーアは天井を見上げる。
あとどのくらいでおこるかはわからないスタンピード。
1日1日を大切に生きなければならない。
やれるだけやろう。
セラフィリーアは漸く自分の意識の中に違う意識があることに気付き始めた。
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