82 / 124
6章 自我
6-6
しおりを挟む
「ラース兄様…」
「おはようセラ、気分はどう?」
「今日はとても良いです。少し外に出たいと言ったら、風か冷たいからと…」
「そうだね、まだ少し早いかな…アイヴィス様が連れていってくれるなら大丈夫だろうけれど、私にはセラを抱いていく力は無いからね?」
そんなやり取りをしながらも、何日過ぎたかはわからない。
魔力を流されると眠くなってしまうのだ。
もう少し話がしたいのに、ディー兄様やラース兄様はあまり時間を取ってくれない。
それに、たまにしか会えないのだ。
フェリド兄様もアリエス兄様も来てくれたのは1度だけ。
あれ、でもラース兄様とアリエス兄様は嫁いだんじゃなかったっけ…
アリエス兄様は、ファレナスの国境を守護する辺境伯のところに。
ラース兄様は隣国の王様に…違ったっけ…
ディー兄様は父様の補佐…フェリド兄様はディー兄様の補佐をしてるから…
ディー兄様とフェリド兄様は来てくれるのはわかるのに…
でも、あれ…俺が寝てるから会えないのかな…
父様も、母様もどちらもずっと顔を見ていない。
それを聞いてみると、忙しいのだとラース兄様は言う。
その代わり、アスランや、アイヴィスは良く居てくれる。
アスランは気付くとこまめに食事や着替えの世話をしてくれる。
皆、居てくれるのは嬉しいけれどアイヴィスが居てくれるのが一番嬉しい。
アイヴィスは、俺の顔色を見て時折寝台から出してくれて散歩をしてくれる。
横抱き…お姫様抱っこが絶対条件だけど。
許可される理由としては空間魔法と言うのか、アイヴィスの周りだけは暖かかった。
ただ、アイヴィスが来てくれるのは大概夜で、足元を照らす明かりと、綺麗な夜空ばかりで
太陽や花などはあまり見ることができなかった。
「ありがとうございます、アイヴィス…今日も月が綺麗ですね」
外の空気を感じながらセラフィリーアは夜空を見上げる。
ぽっかりと丸い満月が空にあった。
それを一瞬何かが横切り灯りを遮る。
「え…」
「あぁ、飛竜だ…」
名前だけは聞いたことがある。
大きな体躯と翼を持ち、空を自在に飛ぶ。
夜目もきき、新月の空でも難なく飛べるらしい。
「わぁ…触って見たい…いつか触れるかなぁ…」
図鑑で見たことしかない竜という生き物。
どんな形でどんな体温で、どんな手触りなのだろう。
犬や猫のように触らせてくれるのだろうか。
楽しげに空を見上げて想いを馳せるが、次第に瞼が重くなりセラフィリーアはアイヴィスの腕の中で目を閉じる。
漸く流れ始めた魔力を感じながら浅い眠りに落ちるのだった。
「おはようセラ、気分はどう?」
「今日はとても良いです。少し外に出たいと言ったら、風か冷たいからと…」
「そうだね、まだ少し早いかな…アイヴィス様が連れていってくれるなら大丈夫だろうけれど、私にはセラを抱いていく力は無いからね?」
そんなやり取りをしながらも、何日過ぎたかはわからない。
魔力を流されると眠くなってしまうのだ。
もう少し話がしたいのに、ディー兄様やラース兄様はあまり時間を取ってくれない。
それに、たまにしか会えないのだ。
フェリド兄様もアリエス兄様も来てくれたのは1度だけ。
あれ、でもラース兄様とアリエス兄様は嫁いだんじゃなかったっけ…
アリエス兄様は、ファレナスの国境を守護する辺境伯のところに。
ラース兄様は隣国の王様に…違ったっけ…
ディー兄様は父様の補佐…フェリド兄様はディー兄様の補佐をしてるから…
ディー兄様とフェリド兄様は来てくれるのはわかるのに…
でも、あれ…俺が寝てるから会えないのかな…
父様も、母様もどちらもずっと顔を見ていない。
それを聞いてみると、忙しいのだとラース兄様は言う。
その代わり、アスランや、アイヴィスは良く居てくれる。
アスランは気付くとこまめに食事や着替えの世話をしてくれる。
皆、居てくれるのは嬉しいけれどアイヴィスが居てくれるのが一番嬉しい。
アイヴィスは、俺の顔色を見て時折寝台から出してくれて散歩をしてくれる。
横抱き…お姫様抱っこが絶対条件だけど。
許可される理由としては空間魔法と言うのか、アイヴィスの周りだけは暖かかった。
ただ、アイヴィスが来てくれるのは大概夜で、足元を照らす明かりと、綺麗な夜空ばかりで
太陽や花などはあまり見ることができなかった。
「ありがとうございます、アイヴィス…今日も月が綺麗ですね」
外の空気を感じながらセラフィリーアは夜空を見上げる。
ぽっかりと丸い満月が空にあった。
それを一瞬何かが横切り灯りを遮る。
「え…」
「あぁ、飛竜だ…」
名前だけは聞いたことがある。
大きな体躯と翼を持ち、空を自在に飛ぶ。
夜目もきき、新月の空でも難なく飛べるらしい。
「わぁ…触って見たい…いつか触れるかなぁ…」
図鑑で見たことしかない竜という生き物。
どんな形でどんな体温で、どんな手触りなのだろう。
犬や猫のように触らせてくれるのだろうか。
楽しげに空を見上げて想いを馳せるが、次第に瞼が重くなりセラフィリーアはアイヴィスの腕の中で目を閉じる。
漸く流れ始めた魔力を感じながら浅い眠りに落ちるのだった。
3
お気に入りに追加
659
あなたにおすすめの小説
魔道具士になりたい僕に愛を囁く王太子には婚約者がいる
拓海のり
BL
十五歳になったエリクは王都の魔術学院に入学した。しかし魔道具作りが得意で、攻撃魔法はそれほどでもないエリクは学院では落ちこぼれだった。
だが、この学院で第一王子に出会ったことによりエリクの運命は動き出す。
タイトル変更いたしました。
他サイト様にも投稿しております。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。
あずももも
ファンタジー
【護られる系柚希姫なユズちゃん】【姫が男? 寝ぼけてんの?】【あの可愛さで声と話し方は中性的なのが、ぐっとくるよな】【天然でちょうちょすぎる】【ちょうちょ(物理】(視聴者の声より)
◆病気な母のために高校を休学し、バイトを掛け持ちする生活の星野柚希。髪が伸び切るほど忙しいある日、モンスターに襲われている小さな何かを助ける。懐かれたため飼うことにしたが、彼は知らない。それがSクラスモンスター、世界でも数体の目撃例な「ユニコーン」――「清らかな乙女にしか懐かない種族」の幼体だと。
◆「テイマー」スキルを持っていたと知った彼は、貧乏生活脱出のために一攫千金を目指してダンジョンに潜る。しかし女装した格好のままパーティーを組み、ついでに無自覚で配信していたため後戻りできず、さらにはユニコーンが「男子らしい格好」だと言うことを聞かないと知り、女装したまま配信をすることに。
◆「ユニコーンに約束された柚希姫」として一躍有名になったり、庭に出現したダンジョンでの生計も企んでみたらとんでもないことになったり、他のレアモンスターに懐かれたり、とんでもないことになったり、女の子たちからも「女子」として「男の娘」として懐かれたりなほのぼの系日常ときどき冒険譚です。
◆男の娘×ダンジョン配信&掲示板×もふもふです。主人公は元から中性的ですが、ユニコーンのスキルでより男の娘に。あと総受けです。
◆「ヘッドショットTSハルちゃん」https://kakuyomu.jp/works/16817330662854492372と同時連載・世界観はほぼ同じです。掲示板やコメントのノリも、なにもかも。男の娘とTSっ子なダンジョン配信ものをお楽しみくださいませ。
◆別サイト様でも連載しています。
◆ユズちゃんのサンプル画像→https://www.pixiv.net/artworks/116855601
猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…
えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる