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5章 絆

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「どうぞ」

扉にノックがあり、セラフィリーアは声をかける。
入ってきたのは赤騎士の一人だった。

「失礼します、赤騎士団アスコットです。副団長から決裁書類を預かってまいりました」

元気のいい挨拶にくすりと笑みを溢してから招き入れる。

「ありがとう。ここの箱に入れて下さい。それと、よかったらキャンディですがお持ちください」

セラフィリーアは座ったままで失礼しますと、読んでいた本を閉じてから促した。
少し緊張した面持ちの彼が入ってくると、箱に書類を入れる。
そのまま帰ろうとする彼に、どうぞと個包装されたキャンディを3つ持たせた。
嫌いなら他の人にあげてと告げて。
すると、何故か少量の書類でもこまめに持ってくる騎士が増えた。
キャンディが無くなると、今度はチョコレートにする。
うん、甘いものが好きなのかな…
次からはキャンディの種類を増やしてみよう。
フルーツキャンディだけじゃなくて、ミントとかコーヒーキャンディとかはどうかな。
運ばれてきた書類に目を通すと、残りはアイヴィスの決裁だけなので、どうしようかと箱を避ける。
その仕事も終わってしまうと、手持ちぶさたになり先程閉じた本を開く。
爵位と名前に添えて、紋章が乗っている本だった。
刺繍の練習をするのにいいかと見ていた。
いくつかのページに紙を挟んで模様を起こしたりしながら時間をみる。
午後からは打ち込み等の基礎訓練のため、着替えなければならないが、その前に食事だと立ち上がる。
アイヴィスと一緒の時は部屋に運んでもらい、一緒に食べていたが今日は食堂に行ってみようと思ったのだ。

「こんにちは」

足を踏み入れたことの無い部屋。
声を掛けてから中に入ると、其処は飛竜騎士たちで埋め尽くされていた。
赤・青・黒で埋め尽くされている。
部屋に入るとざわざわしていた声が一気に消える。
へぇ、バイキング方式に近いのかな。
サラダやメインなど全てが二種類ずつあり、好きなものを組み合わせて取っていく。
長く並んだ列の最後尾につくと、一斉に列が左右に割れた。

「セラフィリーア副団長様、どうぞ先頭に」

「いえ、お命じいただければ席までお持ちいたします」

次々と声を掛けられて、セラフィリーアは戸惑う。

「ありがとう。でも初めてですし…私も騎士で皆さんと同じですからどうぞ気遣いなく」

ひらひらと手を振ると、別れていた列が何とか元通りになる。
ホッとしながら自分の順番を待ってトレイを手にする。
トマトたっぷりのフレッシュサラダ、白身魚のソテーにバゲット2枚、野菜たっぷりのスープと冷たいジュースを選んでから必要なカトラリーを選ぶと空いているテーブルを探す。

「お隣、いいですか?」

黒騎士と青騎士の座る食堂の隅にあるテーブルまで歩くと声をかける。

「あっ…は、はい!」

飛び上がらんまでに驚いたような騎士に失礼と断りを入れて席についた。

「あ、美味しい」

サラダに掛けられたドレッシング。
爽やかな酸味が口の中に広がって幸せを感じ
モグモグとセラフィリーアが咀嚼をしていると、食べますか?と、隣の騎士がサラダを差し出してくる。
え?と、思った瞬間、前からもサラダが。

「私のもまだ、手をつけていませんので…」

「あ、ありがとうございます…でも、皆さんのお食事ですから…でも、一口ずついただきますね?
その代わりですが、ソテーをどうぞ?」

サラダを少しずつ貰うと、相手の皿は肉だったのを確認しながら自分のソテーを切り分けて皿に乗せてやる。

「野菜好きなので嬉しいです」

貰ったサラダを食べていると、周りの騎士が立ち上がる。

「おぅ、こっちで飯か?」

「あ、ルシウス様。はい。今日から私も訓練に参加しますから。
ルシウス様もお食事ですか?」

「まぁ、そうだけどな、食堂がやたら騒がしいから来てみたら…な
はぁ…駄目とは言わないけどな…団長には言っとくわ」

カトラリーを置くと相手を見上げると、ルシウスがそれに気付いて溜め息を吐く。
ルシウス辺りを見回すと、近くにいた騎士達が席を譲るように離れて行った。
え、もしかして俺、食堂で食べちゃいけなかった?
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