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4章 想い

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「申し訳…ありません」

漸く涙が止まったセラフィリーアは、恥ずかしそうに瞼に手を当てる。
子供じゃないのに泣くなんて…いや、俺…まだ若いからセーフ?いや、アイヴィスに見られたからアウトか?

「擦っては駄目だ。赤くなる…」

渡されたハンカチで目頭を押さえると、膝の上から下ろされて長椅子に横にされた。

「冷たい布を貰ってくる。冷やした方がいい」

立ち上がろうとしたアイヴィスの服を無意識に掴んでおり、アイヴィスが立とうとしたところ、ツンと引っ張る。

「あ、あの…アイヴィス様…居てください…」

「わかった、落ち着くまで一緒にいよう」

どうしてこんなに動揺しているのか。
シュクラはルディアスの所にいるだろうから大丈夫だろう。

「アイヴィス様…早くシュクラをアルトリアに…連れて帰りたいのです」

セラフィリーアの口から出た言葉にアイヴィスは笑む。
連れて帰りたい。
連れて行きたいではなく帰りたい。
なにも考えていない無意識の言葉かもしれないがアイヴィスには嬉しい言葉だった。

「あぁ、予定を早めて明日の朝には発つようにしよう。誰か侍従を呼んでも?」

「…はい」

サイドテーブルのベルを鳴らすとややあってから侍従がやってくる。
その侍従に話をすると、アイヴィスは1つ息を吐いた。

「眠るまで一緒にいる」

「ありがとうございます…ぁ、着替えます」

長椅子から立ち上がると、慣れた足取りでクローゼットの前に立つと、中から寝着を取り出す。
腕や足に付けられた装飾品を外していると、アイヴィスが手伝おうと近付いてくる。
寝台に座るように促されて腰掛けると、アイヴィスは膝をついてセラフィリーアの足を自分の腿に乗せさせた。
えっ!ちょっ!!
足を引こうとするも足首を掴まれ、アンクレットを外している。
切れてしまった真珠のブレスレットと揃いのものなので、今度何か違うデザインのものに作り替えようかと思いながら、並べられていく装飾品を眺めていた。

「これで最後でしょうか」

耳から下がるイヤリングを揃えて置くと、不自然なまでに真珠が足りないのはアイヴィスに気付かれなければいいなと思いながら、アイヴィスの端整な顔を見詰めてしまう。

「ファレナスでは指輪は恋人がいる証でしたね…今度、何か贈りましょう。
好きな色やデザインはありますか?
私が選んでしまって良いでしょうか」

アイヴィスに触れられた指先。
ファレナスでは指を飾るのは恋人の証。
そう言えば嵌める指によって意味が違うなんてことを聞いたこともあるが…

「アルトリアではどうなのでしょうか。ファレナスのしきたりよりアルトリアの事を知りたいです…不勉強で申し訳ないのですが…アイヴィス様の良いように…」

自分を飾ることよりも、相手の望むことをしたいと、セラフィリーアは笑みを浮かべる。
先程まで苦しかった気持ちがいつの間にか晴れやかになっていた。

「アルトリアは、互いの瞳の色の石を埋めたピアスをつける。右と左で意味が違うが…最近は、揃いのピアスを作って1つずつ持つのが流行りのようだ」

「なら、アイヴィス様にピアスを贈っても宜しいでしょうか…」

「嬉しいが、今度の休みに一緒に選ぼうか。私にセラのを選ばせてくれ。普段から付けていられるものにしたい」

「嬉しい。楽しみです…」

アイヴィスの優しさが嬉しい。
繋いだ手が暖かい。
あぁ、この人を好きになって良かった。



**********

次回、ちょろっと冒頭から
セラの女装(?)描写がありますよー。
場合によってはちょろっとイチャイチャさせるかも。
近況ボードで告知しますので、
苦手な方は回れ右!
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