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4章 想い
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「ったく、父様ったら急に帰ってきたのにこんなに豪華な晩餐なんかしなくていいのに」
セラフィリーアの手には小さなグラス。
中にはファレナスの南部で採れた果実を酒にして、炭酸水で割ったものが注がれていた。
「セラ?」
楽団が奏でる音色を聞きながら初めての酒に火照った身体を冷ますために出てきたバルコニー。
背後では父や兄、近しい親戚が集まってワイワイしていた。
兄達の時のように、各貴族達が集まるようなものでないだけ良かったが。
「あ、カイル兄様」
声を掛けてきたのは従兄であるカイル。
深い紫の髪を短く切った美丈夫がゆっくりとやってくる。
「どうした?酔ったか?」
兄弟以外では一番良く話す従兄弟で、兄弟で一番上のディートリッヒと同い年。
気安い言葉を使っても怒らない一握りの人だった。
「うん。お酒はあまり強くないみたい。
熱くなったから逃げて来ちゃった…伯母様達(男)に捕まりそうだったし」
「あのパワーには勝てないよな…」
「ね。」
顔を見合わせて笑うとすっと距離が近くなる。
「セラは、今、アルトリアにいるんだろう?留学だっけ?飛竜で来たと聞いたけれど…」
「うん。
契約をした飛竜もいるし…だから、これからもずっとアルトリアにいるようになるかな?
父様にも母様にも言ってあるから。
あぁ、後でカイル兄様にも俺の可愛い飛竜を紹介したいんだけど」
「可愛いって…あの山みたいな大きさのだろ?
それに、あいつら人を食うって話だし…いくらセラと契約してるって言っても、セラ以外を噛まないと言う保証はないんだろ?
だから…」
嘲るような冷たい声に顔を上げると、其処には顔を歪めた従兄がいた。
「…そんなことしないです…」
「…成人したのだから、そんな竜を置いてファレナスに戻って来い。結婚だって…俺と」
掴まれた右手首。
手にしたグラスが手を離れて床で割れた。
「カイル兄様!俺はシュクラと、俺の飛竜と契約を切るつもりも離れるつもりもない。
アイヴィス陛下はファレナスへ戻りたいと思えばシュクラを一緒に連れてもいいつて言ってくれた…
離して。
シュクラの所に行かなくちゃ。シュクラが呼んでる。」
淡々と答えたつもりが声が震える。
両親や兄達はシュクラを受け入れてくれたから大丈夫だと思っていたが、そうではない場合もある。
初めてシュクラに向けられた敵意。
「では、失礼します」
掴まれた腕を軽く振りほどくと、手首に付けていた真珠のブレスレットがぷつりと切れて、小さな珠が床に散らばる。
お気に入りのブレスレットだったが、それを拾わずにバルコニーを後にした。
父と母には体調が優れない。飲みすぎたのだろうと笑いながら伝え、兄達にはそろそろ眠いと目を擦って見せた。
親族達には軽く頭を下げると広間を退出して、自室に向かう。
唇を噛み締めないと涙が落ちそうだった。
「セラ」
呼び止められた声に身体が強張るが、その声の主を知ると、その腕の中に飛び込んだ。
アイヴィス様…
安心できる人の腕の中で静かに声を殺す。
そっと抱き締めてくれる腕が背中を軽く叩くと、そのままふわりと抱き上げられて自室に運ばれた。
漆黒の髪と瞳が夜風に溶ける。
自室の手前で気付いた侍従に扉を開けてもらうとそのまま下がっていいと伝える。
何かあったのだろうと察した侍従は人払いをしに踵を返した。
セラフィリーアの手には小さなグラス。
中にはファレナスの南部で採れた果実を酒にして、炭酸水で割ったものが注がれていた。
「セラ?」
楽団が奏でる音色を聞きながら初めての酒に火照った身体を冷ますために出てきたバルコニー。
背後では父や兄、近しい親戚が集まってワイワイしていた。
兄達の時のように、各貴族達が集まるようなものでないだけ良かったが。
「あ、カイル兄様」
声を掛けてきたのは従兄であるカイル。
深い紫の髪を短く切った美丈夫がゆっくりとやってくる。
「どうした?酔ったか?」
兄弟以外では一番良く話す従兄弟で、兄弟で一番上のディートリッヒと同い年。
気安い言葉を使っても怒らない一握りの人だった。
「うん。お酒はあまり強くないみたい。
熱くなったから逃げて来ちゃった…伯母様達(男)に捕まりそうだったし」
「あのパワーには勝てないよな…」
「ね。」
顔を見合わせて笑うとすっと距離が近くなる。
「セラは、今、アルトリアにいるんだろう?留学だっけ?飛竜で来たと聞いたけれど…」
「うん。
契約をした飛竜もいるし…だから、これからもずっとアルトリアにいるようになるかな?
父様にも母様にも言ってあるから。
あぁ、後でカイル兄様にも俺の可愛い飛竜を紹介したいんだけど」
「可愛いって…あの山みたいな大きさのだろ?
それに、あいつら人を食うって話だし…いくらセラと契約してるって言っても、セラ以外を噛まないと言う保証はないんだろ?
だから…」
嘲るような冷たい声に顔を上げると、其処には顔を歪めた従兄がいた。
「…そんなことしないです…」
「…成人したのだから、そんな竜を置いてファレナスに戻って来い。結婚だって…俺と」
掴まれた右手首。
手にしたグラスが手を離れて床で割れた。
「カイル兄様!俺はシュクラと、俺の飛竜と契約を切るつもりも離れるつもりもない。
アイヴィス陛下はファレナスへ戻りたいと思えばシュクラを一緒に連れてもいいつて言ってくれた…
離して。
シュクラの所に行かなくちゃ。シュクラが呼んでる。」
淡々と答えたつもりが声が震える。
両親や兄達はシュクラを受け入れてくれたから大丈夫だと思っていたが、そうではない場合もある。
初めてシュクラに向けられた敵意。
「では、失礼します」
掴まれた腕を軽く振りほどくと、手首に付けていた真珠のブレスレットがぷつりと切れて、小さな珠が床に散らばる。
お気に入りのブレスレットだったが、それを拾わずにバルコニーを後にした。
父と母には体調が優れない。飲みすぎたのだろうと笑いながら伝え、兄達にはそろそろ眠いと目を擦って見せた。
親族達には軽く頭を下げると広間を退出して、自室に向かう。
唇を噛み締めないと涙が落ちそうだった。
「セラ」
呼び止められた声に身体が強張るが、その声の主を知ると、その腕の中に飛び込んだ。
アイヴィス様…
安心できる人の腕の中で静かに声を殺す。
そっと抱き締めてくれる腕が背中を軽く叩くと、そのままふわりと抱き上げられて自室に運ばれた。
漆黒の髪と瞳が夜風に溶ける。
自室の手前で気付いた侍従に扉を開けてもらうとそのまま下がっていいと伝える。
何かあったのだろうと察した侍従は人払いをしに踵を返した。
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