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3章 騎士団に
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ふわふわと浮く感覚。
暖かく誰かの腕に包まれているようで、ふと思い出す。
父や母、兄達に抱き締められたこと。
もうずっと前の事のように感じていたけれど…
そう思いながら鼻孔をくすぐる香りに意識が覚醒して次の瞬間飛び起きた。
「えっ!?」
一瞬視覚と脳内の情報処理速度が合わなくてフリーズする。
此処はいつも見る部屋の中。
だが、昨日はアイヴィスのマッサージをして、シュクラを受け入れて…
色々考えて、そして固まった。
シュクラの頭を撫でながらアイヴィスが目を覚ますのを待っていたら
アイヴィスの眠るソファーベッドの傍で寝落ちをしてしまったらしい。
だが…自分が目覚めたのは自室。
ならば、どうやってここまで来たのか。
自分で無意識に歩いてきたとは思えない。
身体を起こして部屋を見回すと更に固まる。
「アイヴィス様…」
部屋のソファーで眠る陛下。
薄手の寝着を纏いながら肘を突き足を組んで目を閉じるその姿に一瞬見惚れた。が、
慌てて起き上がるとセラフィリーアはアイヴィスの眠るソファーの前にひざまづく。
少しだけ震える指先でアイヴィスの下ろしてある方の手にそっと触れる。
「ん、おはようセラ」
うっすらと目を開けたアイヴィスが優雅に微笑む。
優しい笑顔。
「良く眠れた?私もぐっすりだったよ」
「はい。でもアイヴィス様…身体は痛くはありませんか?」
眠りが深く運ばれたのに気付かなかったのもだが、平気でアイヴィスをソファーで寝かせてしまったことに反省する。
「大丈夫だ。戦場や遠征では椅子があるだけでも良い方だったし、剣を地面に刺しながら立って眠ったこともある。だから気にしなくていい。
それに今日はセラと一緒にいたかった…」
アイヴィスの手が上がり、セラフィリーアの頬を撫でる。
優しく撫でる指先が気持ちいい。
「おめでとう、18歳成人だ」
「あ」
日々の忙しさに忙殺されていた。
自分の誕生日。
そうだったと口を開ける。
先日、そう言えば父様達から手紙があった。
「改めて言わせてくれるか?どうか私の伴侶になることを考えて欲しい」
「はい…」
アイヴィスの手がセラフィリーアの手を取り、その指先に唇が触れる。
以前とは違う胸の高鳴りに、セラフィリーアはそっと目を伏せた。
暖かく誰かの腕に包まれているようで、ふと思い出す。
父や母、兄達に抱き締められたこと。
もうずっと前の事のように感じていたけれど…
そう思いながら鼻孔をくすぐる香りに意識が覚醒して次の瞬間飛び起きた。
「えっ!?」
一瞬視覚と脳内の情報処理速度が合わなくてフリーズする。
此処はいつも見る部屋の中。
だが、昨日はアイヴィスのマッサージをして、シュクラを受け入れて…
色々考えて、そして固まった。
シュクラの頭を撫でながらアイヴィスが目を覚ますのを待っていたら
アイヴィスの眠るソファーベッドの傍で寝落ちをしてしまったらしい。
だが…自分が目覚めたのは自室。
ならば、どうやってここまで来たのか。
自分で無意識に歩いてきたとは思えない。
身体を起こして部屋を見回すと更に固まる。
「アイヴィス様…」
部屋のソファーで眠る陛下。
薄手の寝着を纏いながら肘を突き足を組んで目を閉じるその姿に一瞬見惚れた。が、
慌てて起き上がるとセラフィリーアはアイヴィスの眠るソファーの前にひざまづく。
少しだけ震える指先でアイヴィスの下ろしてある方の手にそっと触れる。
「ん、おはようセラ」
うっすらと目を開けたアイヴィスが優雅に微笑む。
優しい笑顔。
「良く眠れた?私もぐっすりだったよ」
「はい。でもアイヴィス様…身体は痛くはありませんか?」
眠りが深く運ばれたのに気付かなかったのもだが、平気でアイヴィスをソファーで寝かせてしまったことに反省する。
「大丈夫だ。戦場や遠征では椅子があるだけでも良い方だったし、剣を地面に刺しながら立って眠ったこともある。だから気にしなくていい。
それに今日はセラと一緒にいたかった…」
アイヴィスの手が上がり、セラフィリーアの頬を撫でる。
優しく撫でる指先が気持ちいい。
「おめでとう、18歳成人だ」
「あ」
日々の忙しさに忙殺されていた。
自分の誕生日。
そうだったと口を開ける。
先日、そう言えば父様達から手紙があった。
「改めて言わせてくれるか?どうか私の伴侶になることを考えて欲しい」
「はい…」
アイヴィスの手がセラフィリーアの手を取り、その指先に唇が触れる。
以前とは違う胸の高鳴りに、セラフィリーアはそっと目を伏せた。
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