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3章 騎士団に
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あれから、赤騎士達が飛び立って、そのままルシウスが戻ってくるのをアイヴィスと執務室で待つことになった。
窓から見えるのはルディアスとシュクラだけで、他の騎士や飛竜達は居ない。
聞くと、小屋で騎乗準備をし、いつでも飛び立てるようにしているとのこと。
刻一刻と時間だけが過ぎていく。
陽が暮れかける直前に、アイヴィスの執務室にノックがあった。
「入れ」
手にしていたペンを置いて書類から顔を上げると、ゆっくり扉が開く。
「失礼いたします、赤騎士団トゥーイです。ルシウス副団長より、やはり上陸を企む賊だったため、討伐し今、こちらに向かっているとのこと。全員捕獲し連れ帰るとのことでした。これにより騎士が2名負傷、少しの怪我ですが、2名は明日は休ませたいと伝言を受けています」
「わかった、ルシウスが戻ったら、此処に来るよう伝えてくれ。それと、医務官に怪我人の治療をしてもらいたいので、待機して貰ってくれ」
「はい、では失礼します」
礼儀正しく礼をして部屋から出ていったトゥーイを
見送ってから、セラフィリーアはホッと息を吐き出した。
「アイヴィス様、お茶にしますか?」
声をかけると、アイヴィスは小さく頷いた。
知らないうちに力が入っていたのだろう、午後のお茶もせずにいた。
「さっぱりとしたフルーツティーがいい」
「はい、少しお待ちくださいね?」
「あぁ、今日は特に何もないだろうから、シュクラを連れて離宮に戻っていいので。遅くなったからルディアスに運んで貰ってください。先程からルディアスがシュクラが舟を漕いでいると笑っているので」
ティーポットを温めていると、アイヴィスからそう伝えられた。
確かにいつもなら退出して離宮に帰っているところだが、やはり昼の事件は心配になり気にしていたのだ。
連れ去られるのがシュクラだと思うと、心臓の辺りが冷たくなる。
「ありがとうございます、お茶をいただいてからにします」
香り立つ柑橘系の香りが芳しい。
少し黄色みがかったお茶をティーカップに注ぐと、添えるのは木の実の焼き菓子。少しだけお腹に貯まるだろうと。
それをそっとアイヴィスの文机の上に置く。
自分の分も用意すると、椅子に座った。
「セラ…驚いただろう?」
静かにアイヴィスが問う。
気遣うような優しい声。
何故かホッとしてしまう。
「はい。今までも経験がありませんから、少し驚きました…アイヴィス様は何度か?」
「あぁ、日中の襲撃が大半だが、深夜に海に舟を出す輩もいて…飛竜は夜目もきくが、人が夜に飛ぶのは苦手としているんだ。夜間訓練もするか…なかなかできないからな」
「暗視ゴーグルがあれば違いますね…」
「暗視?何ですか…それは」
呟いてしまったのを耳敏く拾ったアイヴィスに問いかけられて簡単に説明する。
詳しい構図はわからないが、魔法の国だから何とかならないだろうかと思いながら伝えると、アイヴィスは魔導師を呼んでどんなものかを話し合う。
俺に絵心があればだいたいの形などを伝えられるのだが、いまいち上手く伝わらないみたいだった。
そのうちルディアスから、シュクラが眠ったとの連絡があり、慌てて話を終わらせると、シュクラを抱いて離宮へと送って貰った。
良かった…どこからそんな知識を得たのかと聞かれなくて。
聞かれても答えられないよ…
窓から見えるのはルディアスとシュクラだけで、他の騎士や飛竜達は居ない。
聞くと、小屋で騎乗準備をし、いつでも飛び立てるようにしているとのこと。
刻一刻と時間だけが過ぎていく。
陽が暮れかける直前に、アイヴィスの執務室にノックがあった。
「入れ」
手にしていたペンを置いて書類から顔を上げると、ゆっくり扉が開く。
「失礼いたします、赤騎士団トゥーイです。ルシウス副団長より、やはり上陸を企む賊だったため、討伐し今、こちらに向かっているとのこと。全員捕獲し連れ帰るとのことでした。これにより騎士が2名負傷、少しの怪我ですが、2名は明日は休ませたいと伝言を受けています」
「わかった、ルシウスが戻ったら、此処に来るよう伝えてくれ。それと、医務官に怪我人の治療をしてもらいたいので、待機して貰ってくれ」
「はい、では失礼します」
礼儀正しく礼をして部屋から出ていったトゥーイを
見送ってから、セラフィリーアはホッと息を吐き出した。
「アイヴィス様、お茶にしますか?」
声をかけると、アイヴィスは小さく頷いた。
知らないうちに力が入っていたのだろう、午後のお茶もせずにいた。
「さっぱりとしたフルーツティーがいい」
「はい、少しお待ちくださいね?」
「あぁ、今日は特に何もないだろうから、シュクラを連れて離宮に戻っていいので。遅くなったからルディアスに運んで貰ってください。先程からルディアスがシュクラが舟を漕いでいると笑っているので」
ティーポットを温めていると、アイヴィスからそう伝えられた。
確かにいつもなら退出して離宮に帰っているところだが、やはり昼の事件は心配になり気にしていたのだ。
連れ去られるのがシュクラだと思うと、心臓の辺りが冷たくなる。
「ありがとうございます、お茶をいただいてからにします」
香り立つ柑橘系の香りが芳しい。
少し黄色みがかったお茶をティーカップに注ぐと、添えるのは木の実の焼き菓子。少しだけお腹に貯まるだろうと。
それをそっとアイヴィスの文机の上に置く。
自分の分も用意すると、椅子に座った。
「セラ…驚いただろう?」
静かにアイヴィスが問う。
気遣うような優しい声。
何故かホッとしてしまう。
「はい。今までも経験がありませんから、少し驚きました…アイヴィス様は何度か?」
「あぁ、日中の襲撃が大半だが、深夜に海に舟を出す輩もいて…飛竜は夜目もきくが、人が夜に飛ぶのは苦手としているんだ。夜間訓練もするか…なかなかできないからな」
「暗視ゴーグルがあれば違いますね…」
「暗視?何ですか…それは」
呟いてしまったのを耳敏く拾ったアイヴィスに問いかけられて簡単に説明する。
詳しい構図はわからないが、魔法の国だから何とかならないだろうかと思いながら伝えると、アイヴィスは魔導師を呼んでどんなものかを話し合う。
俺に絵心があればだいたいの形などを伝えられるのだが、いまいち上手く伝わらないみたいだった。
そのうちルディアスから、シュクラが眠ったとの連絡があり、慌てて話を終わらせると、シュクラを抱いて離宮へと送って貰った。
良かった…どこからそんな知識を得たのかと聞かれなくて。
聞かれても答えられないよ…
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