27 / 124
2章 幼竜との出逢い
2-1
しおりを挟む
パリンと割れた殻の中から現れた個体はつるりとした身体を丸めた飛竜の小さな子供。
背中にはしっかりと翼が生えていて、ふるりと震えた。
「可愛い。初めまして」
ピイイと鳴く飛竜の仔は、ぱちりと目を開くとそっと近寄ってくる。
「陛下…」
「あ、あぁ、飛竜の額を触ってやってくれ、後は飛竜が契約をする。それにしても卵と契約をするのはたまにいるが、白い個体は初めてだ…ルディアスに伝えたら、大丈夫なら外に連れてきて欲しいと言っている」
アイヴィスがこめかみを押さえる。
「その前に名前だな…どうする?」
「…シュクラ…シュクラにします」
決めていた訳ではないが、するりと溢れた名前。
『白』を意味する名前。
気に入ったのか、理解したのかはわからないが、仔竜はピイピイと鳴き声を上げて、抱っことばかりに小さな前肢をのばしてくるのが可愛くて、セラフィリーアはシュクラを抱き上げると、すりすりとすり寄ってくるシュクラ。
『ママ…』
自分を母親と認識しているのだろうか、抱いたことによりママという単語が聞こえるが、それ以外の言葉は幼いからかはっきりとは聞こえない。
だが、しがみついてくるその腕の力が愛しい。
「うん、シュクラ…可愛い。生まれてきてくれてありがとう…
皆が待っているから、外に行こうか」
ずっしりとした重さだが、見た目の重さよりはたぶんずっと軽いと思う。
この大きさのものが、数年であの山のような大きさになると思うと少しだけびっくりする。
「セラ、ルディアスが早く抱いて来いと煩い」
「わかりました、直ぐに」
頷きを返してから建物の出口に向かいながら、ふとセラフィリーアは足を止めた。
もうひとつの卵。
ルディアスはもう手遅れだと言った卵。
自分はシュクラと契約をしてしまったから、この子とは契約をすることはできない。
それでも一縷の望みをかけてそっと卵に触れる。
どうか、誰かと契約ができますように…
その瞬間、小さな光が殻の中から飛び出して、シュクラの額から中に消えた気がした。
気のせいかと瞬きをしてシュクラを見つめたが、その光は今は見えない。
「セラ、他の飛竜も騒ぎ始めたらしい」
差し出された手を取って、漸く建物の外に出るのだった。
背中にはしっかりと翼が生えていて、ふるりと震えた。
「可愛い。初めまして」
ピイイと鳴く飛竜の仔は、ぱちりと目を開くとそっと近寄ってくる。
「陛下…」
「あ、あぁ、飛竜の額を触ってやってくれ、後は飛竜が契約をする。それにしても卵と契約をするのはたまにいるが、白い個体は初めてだ…ルディアスに伝えたら、大丈夫なら外に連れてきて欲しいと言っている」
アイヴィスがこめかみを押さえる。
「その前に名前だな…どうする?」
「…シュクラ…シュクラにします」
決めていた訳ではないが、するりと溢れた名前。
『白』を意味する名前。
気に入ったのか、理解したのかはわからないが、仔竜はピイピイと鳴き声を上げて、抱っことばかりに小さな前肢をのばしてくるのが可愛くて、セラフィリーアはシュクラを抱き上げると、すりすりとすり寄ってくるシュクラ。
『ママ…』
自分を母親と認識しているのだろうか、抱いたことによりママという単語が聞こえるが、それ以外の言葉は幼いからかはっきりとは聞こえない。
だが、しがみついてくるその腕の力が愛しい。
「うん、シュクラ…可愛い。生まれてきてくれてありがとう…
皆が待っているから、外に行こうか」
ずっしりとした重さだが、見た目の重さよりはたぶんずっと軽いと思う。
この大きさのものが、数年であの山のような大きさになると思うと少しだけびっくりする。
「セラ、ルディアスが早く抱いて来いと煩い」
「わかりました、直ぐに」
頷きを返してから建物の出口に向かいながら、ふとセラフィリーアは足を止めた。
もうひとつの卵。
ルディアスはもう手遅れだと言った卵。
自分はシュクラと契約をしてしまったから、この子とは契約をすることはできない。
それでも一縷の望みをかけてそっと卵に触れる。
どうか、誰かと契約ができますように…
その瞬間、小さな光が殻の中から飛び出して、シュクラの額から中に消えた気がした。
気のせいかと瞬きをしてシュクラを見つめたが、その光は今は見えない。
「セラ、他の飛竜も騒ぎ始めたらしい」
差し出された手を取って、漸く建物の外に出るのだった。
15
お気に入りに追加
672
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
宰相閣下の絢爛たる日常
猫宮乾
BL
クロックストーン王国の若き宰相フェルは、眉目秀麗で卓越した頭脳を持っている――と評判だったが、それは全て努力の結果だった! 完璧主義である僕は、魔術の腕も超一流。ということでそれなりに平穏だったはずが、王道勇者が召喚されたことで、大変な事態に……というファンタジーで、宰相総受け方向です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる