【BL】空と水の交わる場所~ゲーム世界で竜騎士になりました。

梅花

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2章 幼竜との出逢い

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パリンと割れた殻の中から現れた個体はつるりとした身体を丸めた飛竜の小さな子供。
背中にはしっかりと翼が生えていて、ふるりと震えた。


「可愛い。初めまして」


ピイイと鳴く飛竜の仔は、ぱちりと目を開くとそっと近寄ってくる。


「陛下…」


「あ、あぁ、飛竜の額を触ってやってくれ、後は飛竜が契約をする。それにしても卵と契約をするのはたまにいるが、白い個体は初めてだ…ルディアスに伝えたら、大丈夫なら外に連れてきて欲しいと言っている」


アイヴィスがこめかみを押さえる。


「その前に名前だな…どうする?」


「…シュクラ…シュクラにします」


決めていた訳ではないが、するりと溢れた名前。
『白』を意味する名前。
気に入ったのか、理解したのかはわからないが、仔竜はピイピイと鳴き声を上げて、抱っことばかりに小さな前肢をのばしてくるのが可愛くて、セラフィリーアはシュクラを抱き上げると、すりすりとすり寄ってくるシュクラ。


『ママ…』


自分を母親と認識しているのだろうか、抱いたことによりママという単語が聞こえるが、それ以外の言葉は幼いからかはっきりとは聞こえない。
だが、しがみついてくるその腕の力が愛しい。


「うん、シュクラ…可愛い。生まれてきてくれてありがとう…
皆が待っているから、外に行こうか」

ずっしりとした重さだが、見た目の重さよりはたぶんずっと軽いと思う。
この大きさのものが、数年であの山のような大きさになると思うと少しだけびっくりする。


「セラ、ルディアスが早く抱いて来いと煩い」

「わかりました、直ぐに」


頷きを返してから建物の出口に向かいながら、ふとセラフィリーアは足を止めた。
もうひとつの卵。
ルディアスはもう手遅れだと言った卵。
自分はシュクラと契約をしてしまったから、この子とは契約をすることはできない。
それでも一縷の望みをかけてそっと卵に触れる。
どうか、誰かと契約ができますように…
その瞬間、小さな光が殻の中から飛び出して、シュクラの額から中に消えた気がした。
気のせいかと瞬きをしてシュクラを見つめたが、その光は今は見えない。


「セラ、他の飛竜も騒ぎ始めたらしい」


差し出された手を取って、漸く建物の外に出るのだった。


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