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2章

13話

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「ティアと、初めて出会ったときを覚えているか?」

レイジュの問い掛けにティアは頷いた。
初めて出逢ったのはあのときだ、レイジュが斬られ家の扉を叩いたのを助けた時だ。
それを思い出して小さく頷くも、レイジュは違うとばかりに頭を振った。

「恐らくティアが思っているよりもずっとずっと前だ」
「前?」
「あぁ、ティアの両親が生きていた頃、ロシュと呼ばれていた者に記憶は?」
「あ、ロシュ兄さん?目が見えなくなって両親が亡くなってからなにかれと面倒を……まさか」

ふと、レイジュを見上げる。
その瞳が優しくこちらを見ていた。

「あれが、私だ」
「本当に?」
「あぁ、ロシュはティアたちの国の言葉に似せた名前だ」

確かに似ていると言えば音は似ているかもしれない。

「本当に?」
「あぁ」
「信じられない……急に居なくなって、どれだけ悲しかったか。それでも両親を亡くして立ち上がれたのはロシュ兄さんのおかげなのに……こんなに傍に居たのに気づかなくて、ごめんなさい……レイジュ」

過去の記憶が蘇る。
それと同時に涙が溢れた。

「思い出したか?私も伝えられなくてすまない、どうしたらいいかわからなくて。ティアにとって辛い記憶も混じるだろうから……」

そう言うレイジュにティアは抱きついた。
そんなことはいい。と言うかずっと心の隅にあった優しい男性の記憶には、辛いものなど1つも無いのだ。

「レイジュ、どれだけあなたの存在に助けられたかわからない……目が見えない私を慣れるまで導いてくれ、そして今もこうして目を治してくれたし、ありがとう」

ティアはやがてしゃくりあげるようになり、声を上げて泣き出した。
嬉しさと、申し訳なさと、色々な感情が入り交じり言葉にできない。

「そんな、たいそうな事はしていない。私はティアの両親に随分と世話になった、その恩が返せただろうか?恩を返したくてティアと一緒にいたのだが、結局中途半端になってしまった」

レイジュの手が泣きじゃくるティアの頭を優しく撫でて、その背中をトントンと宥めるように叩く。

「権力を手にしてしまったから、ティアに身分を伝えればそれは強制になってしまうから、ティアには自分から此処に居たいと言って貰いたかった……だから、お礼を言わなければならないのは私の方だ。ありがとうティア」

耳に吹き込まれる低音をティアは受け止めて笑みを作る。

「レイジュ、一緒にいられなかったときの貴方を知りたい……私はあまり変わらない生活をしていたのだけれど」
「こちらは、色々とあったな……ゆっくり話したい聞いてくれるか」

レイジュはティアを抱き締めたまま、今までの話を紡ぎ始める。
今夜は長い夜になりそうだった。
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