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2章
9話
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「ん……」
もぞりと隣で何かが動くのを感じて私は目を覚ました。
「ティア……目が覚めたか?」
「レイジュ…おはようございます?」
「あぁ、おはよう……もう、昼過ぎだが……な」
「昼っ!?」
飛び起きようとして私はまた寝台に戻ってしまう。
身体の至るところが痛い……
「レイジュ……」
「すまない…無理をさせ過ぎた……ホウアンに痛み止を貰おうか」
そう言われて、ホウアンに何処が痛いのかを伝えなければならないと、恥ずかしさで死にそうになるため、嫌だと頭を振った。
「必要なら、自分で調合します……」
そのくらいなら動けるだろうと高を括っていたのたが、後でそれは甘かったのだと知ることになるのだが。
「そうか、まずは食事にしよう……キラに入って貰うがいいか?」
「はい……その前に窓を……」
淀んだ空気を入れ替えたい。
そう言うと、レイジュが苦笑しながら起き出して薄い掛け布野をしたままの窓を開けた。
気持ちの良い空気が入ってきて、濃密だった時間が薄まってゆく。
そして、レイジュがチリンと鈴を鳴らすと、直ぐにレイジュが入ってきた。
「食事を」
「こちらで?」
「いや、向こうで。ティアは抱いていく」
「用意はできておりますので」
そんな会話をふたりがして、ふわりと私は抱き上げられて隣の部屋に運ばれた。
並べられた大量の食事。
いつも多く並べられているが、今日はその倍近い量があり、中には祝い事に出される鮮やかな色をした焼き菓子も皿に盛られて置かれていた。
「何か、お祝い事?」
「そうだな。ティアと結ばれた記念の日……だな」
レイジュにそっと長椅子に下ろされた。
薄布で包まれているため、上手く手が動かせず、どうやって食事をしようかと考えていたところで口許に匙が寄せられた。
まだ湯気のほんのり上がる汁物。
口を開くと匙が差し込まれ、口の中には優しい味が広がった。
「美味しいですよ、レイジュ……」
「あぁ」
ゆっくりとふたりで食事を楽しんでいく。
祝いの焼き菓子も、ひとつをふたりで割って食べた。
幸せな時間は早く過ぎていく。
それが幸せでもあり怖くもあった。
もぞりと隣で何かが動くのを感じて私は目を覚ました。
「ティア……目が覚めたか?」
「レイジュ…おはようございます?」
「あぁ、おはよう……もう、昼過ぎだが……な」
「昼っ!?」
飛び起きようとして私はまた寝台に戻ってしまう。
身体の至るところが痛い……
「レイジュ……」
「すまない…無理をさせ過ぎた……ホウアンに痛み止を貰おうか」
そう言われて、ホウアンに何処が痛いのかを伝えなければならないと、恥ずかしさで死にそうになるため、嫌だと頭を振った。
「必要なら、自分で調合します……」
そのくらいなら動けるだろうと高を括っていたのたが、後でそれは甘かったのだと知ることになるのだが。
「そうか、まずは食事にしよう……キラに入って貰うがいいか?」
「はい……その前に窓を……」
淀んだ空気を入れ替えたい。
そう言うと、レイジュが苦笑しながら起き出して薄い掛け布野をしたままの窓を開けた。
気持ちの良い空気が入ってきて、濃密だった時間が薄まってゆく。
そして、レイジュがチリンと鈴を鳴らすと、直ぐにレイジュが入ってきた。
「食事を」
「こちらで?」
「いや、向こうで。ティアは抱いていく」
「用意はできておりますので」
そんな会話をふたりがして、ふわりと私は抱き上げられて隣の部屋に運ばれた。
並べられた大量の食事。
いつも多く並べられているが、今日はその倍近い量があり、中には祝い事に出される鮮やかな色をした焼き菓子も皿に盛られて置かれていた。
「何か、お祝い事?」
「そうだな。ティアと結ばれた記念の日……だな」
レイジュにそっと長椅子に下ろされた。
薄布で包まれているため、上手く手が動かせず、どうやって食事をしようかと考えていたところで口許に匙が寄せられた。
まだ湯気のほんのり上がる汁物。
口を開くと匙が差し込まれ、口の中には優しい味が広がった。
「美味しいですよ、レイジュ……」
「あぁ」
ゆっくりとふたりで食事を楽しんでいく。
祝いの焼き菓子も、ひとつをふたりで割って食べた。
幸せな時間は早く過ぎていく。
それが幸せでもあり怖くもあった。
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