【BL】小さな恋の唄…盲目の私が恋をしたのは…

梅花

文字の大きさ
上 下
42 / 52
2章

7話

しおりを挟む
「すまないティア、待たせた…」

夜も更けた頃、漸くレイジュが部屋に来た。
ふわりと香るのはお酒の匂いだろうか。

「レイジュ…飲んでいます…か?」

今までこんなことは無かった。
何があったのだろうか…不安になる。

「悪い、親代わりにティアとの婚約を認めて貰ったこれで正式に結婚までできる…」

長椅子の空いている部分に腰かけたレイジュがそっと私の手をとった。

「綺麗だ、ティア…」

少し熱が声に込められている。
声だけでなく触れる指や瞳にもいつもとはどこか違う雰囲気を感じ取って不安になってしまう。

「ありがと…ンッ」

奪われた唇。
今まで触れるだけで包み込まれるような包容しか経験の無かった私はいきなりのことにどうしていいかわからない。

「ん、んん…」

抱き締められるレイジュの力強い腕。
優しい指先に力が抜けた。

「ティア、大切にする…一生大切にすると誓うからティアをくれないか?」
「レイジュ?」
「ティアを抱きたい」

…レイジュの言っている意味を理解するのにややあって、理解した瞬間顔が火照った。
耳まで赤くなるのを見られたくなくて、レイジュの胸に顔を埋める。

「ティア…」

甘く囁く声に何も考えられなくなる。

「レイジュ…」
「悪い…いきなりなのはわかっている…随分と浮かれているのもな」

レイジュはつるりと顔を撫でて苦笑する。
いつもより饒舌に感じるレイジュの囁きは嫌いではない。

「作法は…知りませんけれど、私で良ければ…レイジュのもの…っ!」

最後まで言う前に抱き上げられた。
慌てて首に抱きつくと、レイジュは満足そうに頷いてからそのまま別の部屋に向かう。
寝室だった。
ぼんやりと明るくなっている部屋の中央にはかなり大きめの寝台が鎮座している。
落ち着いた色彩の一室だ。
軟らかな寝台に下ろされると、体重の分だけ音もなく沈む。
レイジュがゆっくりと窓に掛かる布を下ろしてから寝台へと身体を上げた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

騎士団で一目惚れをした話

菫野
BL
ずっと側にいてくれた美形の幼馴染×主人公 憧れの騎士団に見習いとして入団した主人公は、ある日出会った年上の騎士に一目惚れをしてしまうが妻子がいたようで爆速で失恋する。

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。

水鳴諒
BL
 目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

処理中です...