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2章
7話
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「すまないティア、待たせた…」
夜も更けた頃、漸くレイジュが部屋に来た。
ふわりと香るのはお酒の匂いだろうか。
「レイジュ…飲んでいます…か?」
今までこんなことは無かった。
何があったのだろうか…不安になる。
「悪い、親代わりにティアとの婚約を認めて貰ったこれで正式に結婚までできる…」
長椅子の空いている部分に腰かけたレイジュがそっと私の手をとった。
「綺麗だ、ティア…」
少し熱が声に込められている。
声だけでなく触れる指や瞳にもいつもとはどこか違う雰囲気を感じ取って不安になってしまう。
「ありがと…ンッ」
奪われた唇。
今まで触れるだけで包み込まれるような包容しか経験の無かった私はいきなりのことにどうしていいかわからない。
「ん、んん…」
抱き締められるレイジュの力強い腕。
優しい指先に力が抜けた。
「ティア、大切にする…一生大切にすると誓うからティアをくれないか?」
「レイジュ?」
「ティアを抱きたい」
…レイジュの言っている意味を理解するのにややあって、理解した瞬間顔が火照った。
耳まで赤くなるのを見られたくなくて、レイジュの胸に顔を埋める。
「ティア…」
甘く囁く声に何も考えられなくなる。
「レイジュ…」
「悪い…いきなりなのはわかっている…随分と浮かれているのもな」
レイジュはつるりと顔を撫でて苦笑する。
いつもより饒舌に感じるレイジュの囁きは嫌いではない。
「作法は…知りませんけれど、私で良ければ…レイジュのもの…っ!」
最後まで言う前に抱き上げられた。
慌てて首に抱きつくと、レイジュは満足そうに頷いてからそのまま別の部屋に向かう。
寝室だった。
ぼんやりと明るくなっている部屋の中央にはかなり大きめの寝台が鎮座している。
落ち着いた色彩の一室だ。
軟らかな寝台に下ろされると、体重の分だけ音もなく沈む。
レイジュがゆっくりと窓に掛かる布を下ろしてから寝台へと身体を上げた。
夜も更けた頃、漸くレイジュが部屋に来た。
ふわりと香るのはお酒の匂いだろうか。
「レイジュ…飲んでいます…か?」
今までこんなことは無かった。
何があったのだろうか…不安になる。
「悪い、親代わりにティアとの婚約を認めて貰ったこれで正式に結婚までできる…」
長椅子の空いている部分に腰かけたレイジュがそっと私の手をとった。
「綺麗だ、ティア…」
少し熱が声に込められている。
声だけでなく触れる指や瞳にもいつもとはどこか違う雰囲気を感じ取って不安になってしまう。
「ありがと…ンッ」
奪われた唇。
今まで触れるだけで包み込まれるような包容しか経験の無かった私はいきなりのことにどうしていいかわからない。
「ん、んん…」
抱き締められるレイジュの力強い腕。
優しい指先に力が抜けた。
「ティア、大切にする…一生大切にすると誓うからティアをくれないか?」
「レイジュ?」
「ティアを抱きたい」
…レイジュの言っている意味を理解するのにややあって、理解した瞬間顔が火照った。
耳まで赤くなるのを見られたくなくて、レイジュの胸に顔を埋める。
「ティア…」
甘く囁く声に何も考えられなくなる。
「レイジュ…」
「悪い…いきなりなのはわかっている…随分と浮かれているのもな」
レイジュはつるりと顔を撫でて苦笑する。
いつもより饒舌に感じるレイジュの囁きは嫌いではない。
「作法は…知りませんけれど、私で良ければ…レイジュのもの…っ!」
最後まで言う前に抱き上げられた。
慌てて首に抱きつくと、レイジュは満足そうに頷いてからそのまま別の部屋に向かう。
寝室だった。
ぼんやりと明るくなっている部屋の中央にはかなり大きめの寝台が鎮座している。
落ち着いた色彩の一室だ。
軟らかな寝台に下ろされると、体重の分だけ音もなく沈む。
レイジュがゆっくりと窓に掛かる布を下ろしてから寝台へと身体を上げた。
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