【BL】小さな恋の唄…盲目の私が恋をしたのは…

梅花

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1章

35話

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「では、包帯を取るからの?」

ホウアン様の言葉にこくりと頷いた。
目を閉じたままでも光はなんとなくわかるが、まだ瞼を開いたことは無かった。

「いきなりは駄目じゃからな?包帯を取って少ししてからゆっくりと瞼を開くと良い。
それで見えておれば成功じゃ」

しゅるりしゅるりと包帯が取れる音がして、瞼の上にホウアン様の手だろう、そっと何かが触れた。
100を数えるくらいの時間が措かれてその手が外れると、私はそっと瞼を開く。
光を拾う目。
鮮やかな色彩が一気に飛び込んできて、慌てて目を閉じる。

「どうじゃ、見えなかったか?」

ホウアン様の不安そうな声に頭を振る。

「いえ、いいえ…驚いてしまって…世界はこんなにも鮮やかだったのかと」

私の言葉にワッと周囲が沸く。

「そうか、それは良かった…最初はあまり目を使いすぎぬ方が良かろう…部屋も少し陽を遮るようにして…慣れてきたら…」
「ティア!?間に合った…か?」

部屋に飛び込んできたのは、あの声。
暫く聞いていなかったけれど、忘れる事はなかった。
低く優しく甘い声。

「レイジュ?」

瞳を開き振り返ったその先にいたのは、思い描いていた男性像そのもので。
艶めく黒髪を1つに結わえ、削げた頬や顎は触れた時を思い出す。
力強く引かれた眉に切れ長の瞳。

レイジュが現れた瞬間、音が消えて、周囲が全員平伏する。
えっ!?と思う間に大股でレイジュが寝台へと近寄り、手にしていた花束を差し出した。

「俺が見えるか?」
「…はい、しっかり…初めてなのに初めてじゃない…」
「そうだ、良かった…」
「ありがとうございます、レイジュ…」
「ティア、お前の目が見えるようになったら言おうと思っていたのだが…俺と結婚をしてくれ」

いきなりの申し出に驚き、言葉が紡げない。
レイジュの言葉の意味を何度か反芻して理解をすると一気に頬が赤くなった。

「レイジュ…私は男…ですが…」
「性別は関係ない…ティアがいい。結婚してくれるか?」
「…はい」

それ以外の返事なとできはしない。
ずっとレイジュを待っていたのだ。
返事をした瞬間、ぎゅっと強い力で抱き締められた。
同じ寝台で眠るようになった時を思い出すが、ふとレイジュに問いかける。

「少し痩せましたか」

その問いに帰ってきたのは小さな苦笑だけだった。




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