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1章

28話

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「レイジュ、車輪の音が…」

カタカタと車輪の回る音が聞こえた。
それが段々と大きくなってゆっくりと止まる。

「あぁ、そうだな…ホウアンが言ったものを持ってきてくれていればいいが、どうした」

レイジュが声をあげると、キラ様が、ホウアン様が戻ってきたと伝えに来てくれた。
そして、そのまま薬の調合に入りたいとの事であったため楽器等はキラ様が預かっているとのこと。

「楽器だけでも手にしてみるか?」
「はい、よろしいですか?」
「キラ、大丈夫だ入ってくれ」

キラ様に声を掛けると静かな衣擦れの音がした。

「こちらに」
「ありがとうございますキラ様…ホウアン様は大丈夫そうですか?」
「はい、嬉しそうにお戻りになられました、今夜から頑張るとの事でしたが…」
「レイジュ…長期に渡っての薬作りですから無理をされぬようにお伝えください」

祖父程ではないだろうが、年が離れたホウアン様に無理はさせたくなく、レイジュなら言ってくれるだろうとお願いをする。

「キラ、そうティアが言っていると伝えてきてくれ。俺が言うよりも効きそうだからな?」
「畏まりまして」

くすりとキラ様が笑ったのがわかった。
失礼しますと離れていくと、そっと私の前に楽器が置かれる。
母の楽器だ。
破損箇所がないか、つい触って確認し、弦を爪弾く。
いつものように高く澄んだ音がした。

「レイジュ、ありがとうございます…何処かに置いていただけますか?」

少し後ろを振り返りながら楽器を託す。

「今度、なにかを弾いてくれ」

レイジュの言葉にわかりましたと頷いた。
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