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1章

17話

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あれからゆっくりと散歩をしたりレイジュと過ごしていると、夕方の鐘が鳴る。

「夕飯にしようか…ティアは嫌いなものは無いか?」
「あると言えばありますが、無いと言えばありません。
辛いものと苦い野菜は薬を作るのに支障が出ますので」

それ、以外は食べたかどうかあまりわからない。
匂いでわかるものや、食感でわかるものはあるが、それ以外は注意深く食べなければわからないのだ。

「そうか、ならそれは省こうか」

繋いだ手をそのままに、チリンと鈴が鳴ると扉が開いた音がして複数人の静かな足音がした。

「レイジュ?」

不安があって名前を呼ぶと、大丈夫だと腰を抱かれた。
密着するような体勢で座っているからか、レイジュの髪だろう。
チクリとしたものが頬に触れてそちらを見上げる。
手をのばすと、やはりレイジュの髪だった。

「ふふ、レイジュの髪ですね…何色なのでしょう…」

そっと撫でるようにした瞬間、ざわっとざわついたのがわかった。

「静まれ」

静かな重いレイジュの声に、世界が無音になる。
何かしてしまったのは間違いないが、なにをしてしまったのかがわからないのだ。

「レイジュ…あの…」
「大丈夫だ。さぁ、食事にしよう」

謝らなければならないのに、何に対して謝ればいいのか。
それでも言葉にしなければならないのに…

「ティア…大丈夫だから…ほら、両手を出してくれ」

おずおずと差し出した手がのったのは、レイジュの手だろう。
硬い指でしっかりと掴まれ引かれると、触れたのはレイジュの頬だった。

「ティアになら、何処を触られてもいい…大丈夫だから、安心してくれ」
「はい…」

何処を触られても…と言うのはどうしてだろうか。
何か宗教的なこと?
それともレイジュの苦手な事をしてしまった?

「さあ、冷めてしまう。食事にしよう」

気を付けなければいけないが、見えないのだ。
だが、見えないことを言い訳にはしたくない。
私はそっと指先を握り締めた。
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