【BL】空と水の交わる場所~30のお題

梅花

文字の大きさ
上 下
15 / 30

15 いつもと違う服装

しおりを挟む
長い髪を結い上げてから、こっそりと侍従の纏う侍従服を着て城の中を歩き回る。
今日はアイヴィス様の侍従になろうと画策していた。
すれ違う侍従達はどうやら気にしていないようで、目は合うが目礼のみでそのまま行ってしまう。
不思議そうに首を傾げながらセラフィリーアはアイヴィスの執務室に向かった。



「アイヴィス様、セラフィリーア様が侍従になって城の中を歩いているようですよ?すべての侍従には先程通達しましたので、危険は無いとは思いますが、こちらに来る貴族の方などには注意しないとなりません」

「まったく…やることが愛らしい」

アイヴィスとハワードはクスクスと笑う。
セラフィリーアが部屋を出た時には既に周囲には通達してあるのだ。

「まぁ、水色の髪をもつのがセラフィリーア様と知らない侍従はおりませんよ。お顔を存じ上げなくても。
と言うか、アスランとリオルはしつけ直しですね、主の挙行に気を配れないのか、頼まれたのかまではわかりませんが…」

そもそも、侍従服をどうやって手に入れたのか…?
アスランとリオルはセラフィリーア付きのため、侍従服の色が違うのだ。

「まぁ、城下に行かれるよりはいい。
誰かロイヤルガードの護衛をつければ城下に向かうのも許可するんだが…」

好きな相手の行動を制限したくないというアイヴィスの優しさに、ハワードは感心する。
先王から仕えてきたハワードは親子でも違うのは当然だと心の中で思う。

「まぁ、こちらに来てくれるみたいだから、楽しみに待つとしようか」

机に肘をつき顎を乗せた姿が珍しいと目を細めたハワードは、セラフィリーアにお茶でも用意してもらおうとそっと下がる。



それから半日、アイヴィスは執務室から出てこない。
優秀な侍従長は呼ばれるまでは誰も近づかないようにと言い渡し、部屋の外の騎士には申し訳なく思うが、自分も少しだけゆっくりさせてもらう。

たまにはそういう趣向もいいのだろうと口許に笑みをのぼらせる。
主たちの甘い一時を誰にも邪魔はされたくないとハワードは思うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

愛おしいほど狂う愛

ゆうな
BL
ある二人が愛し合うお話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

憧れていた天然色

きりか
BL
母という名ばかりの女と、継父に虐げられていた、オメガの僕。ある日、新しい女のもとに継父が出ていき、火災で母を亡くしたところ、憧れの色を纏っていたアルファの同情心を煽り…。 オメガバースですが、活かしきれていなくて申し訳ないです。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

処理中です...