【BL】空と水の交わる場所~30のお題

梅花

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9 友達と遊ぶ

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こちらの世界には娯楽が少ない。
遊ぶものと言えばカードゲーム。
遊ぶ場所と言えば歌劇場。
そんな世界。

スマホゲームでいいから遊びたいし
夢の王国とは言わないから、遊園地に行きたい。

水族館とかでもいいなと呟いたらアイヴィスに笑われた。

なんだそれは。

「海や川の生き物をガラス越しに見ることができる建物てす」

「海や川の生き物を見たいのか?」

ふむと、何か考え始めたアイヴィスは数日後、ハワードを貸してくれた。

「では、参りましょうか、陛下は後から参ります」

いつもながら、きっちりとした格好の侍従長に、さすがのアスランやリオルもたじっとしているのがわかる。

「二人も行きますよ?」

どうやら今回はアスランとリオルも連れていくようだ。
どうりで今日は私服でいるようにとの連絡があったのだ。
アスランもリオルも綺麗な見た目なのに、何故か私服は凄く地味なのが残念。
ダサい訳ではなくサイズもぴったりなのに…もしかして俺と出掛けるから、俺より目立ったらダメとか…思っちゃった?
むむ、二人の私服を今度作ってあげよう出掛けるから好きな色は何色だろう。

「こほん、セラフィリーア様宜しいですか?」

「あ、ごめんなさい…行きます」

今日はシュクラは、お留守番。
というよりはルディアスとまた遊びにいっているらしい。
そのため遠慮なく出掛けられる。
横付けされた2台の馬車。
1台には乗り口にネイトが待っていた。

こ、こちらも私服。
騎士服しか見たことがなかったが、ネイトはやはり貴族でかっちりしたシャツやジレなど動きやすそうな服装だったが、細かいところに入った刺繍などが艶やかだ。

「セラフィリーア様、どうぞ?」

ハワードが扉を開けて乗り込むよう促してきて、馬車に乗り込むと、ネイトが後から失礼しますと乗り込んでくる。
そう言えばネイトとはあまり二人きりで会うことはないなと思いながら向かい合うように座る。

「ネイト様も馬車での移動をされるのですね」

ふと疑問か浮かび問いかけてみる。
飛竜か騎馬のイメージか強い。

「えぇ、急がない場合は馬車も使いますよ…」

「そうなのですね、私も騎馬移動は好きなので。時間ができたら遠出もしたいですが、その前にシュクラに乗る方が先ですね、、私も頑張らないと…」

少しずつでもついてきた体力はシュクラの成長と比例している。

「大丈夫ですよ、むしろセラフィリーア様は頑張りすぎです。飛竜騎士は騎士としての下積みがありますから、体力かあって当たり前なのです」

「でも、騎士でなかったのを理由に特別扱いは違うと思いますから。飛竜騎士を目指してもなれなかった人たちに胸をはって飛竜騎士になりましたと言いたいので」

他国民だから、王族だからなどと笑われたら、契約をしてくれたシュクラに申し訳ないと常々思っているのだ。

「素晴らしいですね…おや、着きましたよ」

馬車が止まるとネイトがカーテンを開けて外を見る。
少しすると扉か開いてハワードが降りるように促してくる。
促されるまま馬車を降りると目の前には小さな入江。
そんなに長時間乗っている事はなかったのにとセラフィリーアは驚くと、ネイトがクスクスと笑った。

「セラフィリーア様、お時間をいただきますからリオル達とお茶をなさっていてくださいませ」

ハワードがそう言うと、徐にネイトと二人で両手を叩く。
パチンと音がした次の瞬間、桟橋から何やらトンネルのようなものが作られてそれが海の中に入っていく。
えっ!と、思ううちにそれは形を成していた。

「ネイト様、お疲れさまでした。リオル、セラフィリーア様にお茶をと言った筈ですが?」

「あ、ハワードいいの、それにしても凄い…何を作ったの?」

「すいそくかんとやらだ」

答えが違う方から聞こえて振り向くとアイヴィスが立っていた。

「アイヴィス様!」

「悪いな、遅くなった。では行こうか」

セラフィリーアの手を取ると、ゆっくりと桟橋から出来上がったトンネルの中へと歩いていく。
トンネルの中には動くプレートと手摺があったプレートに乗ると、ゆっくりと動き出すのは歩く歩道のようで、セラフィリーアは凄い凄いと年甲斐もなくはしゃいでしまい、我に返ると真っ赤になるのをアイヴィスは嬉しそうに笑う。

「下り坂になるから掴まるといい」

手摺もあるが、セラフィリーアはそっとアイヴィスの手に掴まった。
坂道はエスカレーターのように階段になり降りていく。

「うわ」

階段が終わると、少し暗くはなっていたが、其処は海の中。
ガラス張りの海中トンネルになっていた。
ゆっくりゆっくりプレートが進むと、魚達が真上を泳いでいく。
懐かしい感覚に上を向いたままでいると、アイヴィスの唇が降ってきた。

「後からハワード達も来る…」

友達や恋人、家族と遊ぶのはこんな感じだったのだろうな…懐かしさに込み上げた涙はアイヴィスの触れた唇に消えた。
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