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6 衣装交換
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ある日の昼下がり、騎士服を纏ったセラフィリーアは書類を手にアイヴィスの執務室へ向かっていた。
絨毯の敷かれた廊下を歩き、扉の前で立ち止まると軽くノックをして声をかけるが
全く返事は無かった。
席を外しているのなら、開いていれば書類だけでも置かせて貰おうと扉を開ける。
玉璽だけが置いてあったりした場合は、必ず鍵を掛けていくため、大丈夫だろうとドアノブを回すと、意外にも鍵はかかっていなかった。
音もなく扉が開き、セラフィリーアは中に入ると珍しいことにアイヴィスは机に座ったままうたた寝をしていた。
最近また仕事量が増えているのを知っているため、何か手伝えたらいいなとは思っていたが、なかなかそうもいかず。
「ふふ、上着を脱いで…落ちてる?」
いつも着ている騎士服の上着は、暖かいからか脱いでいて、掛けた筈の椅子の背凭れから床に落ちていた。
机の後ろに回り込み、そっと上着を拾うとふわりとアイヴィスのコロンが香る。
少し甘いような、それでいて爽やかなアイヴィスに良く似合う香りを嗅ぐと、上着を抱き締めてしまう。
最近、同じベッドで抱き合って眠るだけで、少しだけ欲求不満だったりするのだ。
ふと、思い付いた事で、自分の上着を脱ぐとアイヴィスの肩にかけてやり、アイヴィスの上着をそっと羽織る。
「やっぱり大きい…アイヴィス様…」
アイヴィスの香りに包まれると袖口に鼻を寄せて息を吸い込み幸せな気持ちになって息を吐いた瞬間、ぐいっと腕を掴まれて引き寄せられる。
「ひゃっ!」
ぐるりと腰に巻かれた腕。
すとんと降りたのはアイヴィスの腿の上で。
「あっ…アイヴィス様、起きていらっしゃったのですか?」
振り向こうとすると、アイヴィスの鼻先が首の後ろに当たる。
「セラが上着を拾った辺りでな」
「酷い…起きているなら言ってくれれば良かったのに…」
「可愛いセラを見れた。癒された…」
穏やかな優しい声音で囁かれると力が抜ける。
あぁ、幸せだななんて思っていたが、次の瞬間シャツが引き抜かれて裾からアイヴィスの手が入り込んでくる。
「アイヴィス様…っあ…」
胸の突起を撫でられると、まだ昼間なのに。
明るいのに。
声が漏れる。
「最近、なかなか触れあえなかったから…触るだけだ…」
「んっ…や…そんな…意地悪」
煽られたら、直ぐにスイッチが入ってしまう身体は触るだけなんて耐えられない。
だが、扉に鍵をしていないため、誰かが来る可能性もあるのだ。
「駄目…アイヴィス様」
「ふふ、その駄目は何が駄目なのかな?触るのが?それとも触るだけなのが?」
「わかっている癖に…」
降り注ぐ陽射しの中、互いの上着が床に落ちて波形を作っていた。
絨毯の敷かれた廊下を歩き、扉の前で立ち止まると軽くノックをして声をかけるが
全く返事は無かった。
席を外しているのなら、開いていれば書類だけでも置かせて貰おうと扉を開ける。
玉璽だけが置いてあったりした場合は、必ず鍵を掛けていくため、大丈夫だろうとドアノブを回すと、意外にも鍵はかかっていなかった。
音もなく扉が開き、セラフィリーアは中に入ると珍しいことにアイヴィスは机に座ったままうたた寝をしていた。
最近また仕事量が増えているのを知っているため、何か手伝えたらいいなとは思っていたが、なかなかそうもいかず。
「ふふ、上着を脱いで…落ちてる?」
いつも着ている騎士服の上着は、暖かいからか脱いでいて、掛けた筈の椅子の背凭れから床に落ちていた。
机の後ろに回り込み、そっと上着を拾うとふわりとアイヴィスのコロンが香る。
少し甘いような、それでいて爽やかなアイヴィスに良く似合う香りを嗅ぐと、上着を抱き締めてしまう。
最近、同じベッドで抱き合って眠るだけで、少しだけ欲求不満だったりするのだ。
ふと、思い付いた事で、自分の上着を脱ぐとアイヴィスの肩にかけてやり、アイヴィスの上着をそっと羽織る。
「やっぱり大きい…アイヴィス様…」
アイヴィスの香りに包まれると袖口に鼻を寄せて息を吸い込み幸せな気持ちになって息を吐いた瞬間、ぐいっと腕を掴まれて引き寄せられる。
「ひゃっ!」
ぐるりと腰に巻かれた腕。
すとんと降りたのはアイヴィスの腿の上で。
「あっ…アイヴィス様、起きていらっしゃったのですか?」
振り向こうとすると、アイヴィスの鼻先が首の後ろに当たる。
「セラが上着を拾った辺りでな」
「酷い…起きているなら言ってくれれば良かったのに…」
「可愛いセラを見れた。癒された…」
穏やかな優しい声音で囁かれると力が抜ける。
あぁ、幸せだななんて思っていたが、次の瞬間シャツが引き抜かれて裾からアイヴィスの手が入り込んでくる。
「アイヴィス様…っあ…」
胸の突起を撫でられると、まだ昼間なのに。
明るいのに。
声が漏れる。
「最近、なかなか触れあえなかったから…触るだけだ…」
「んっ…や…そんな…意地悪」
煽られたら、直ぐにスイッチが入ってしまう身体は触るだけなんて耐えられない。
だが、扉に鍵をしていないため、誰かが来る可能性もあるのだ。
「駄目…アイヴィス様」
「ふふ、その駄目は何が駄目なのかな?触るのが?それとも触るだけなのが?」
「わかっている癖に…」
降り注ぐ陽射しの中、互いの上着が床に落ちて波形を作っていた。
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