6 / 30
6 衣装交換
しおりを挟む
ある日の昼下がり、騎士服を纏ったセラフィリーアは書類を手にアイヴィスの執務室へ向かっていた。
絨毯の敷かれた廊下を歩き、扉の前で立ち止まると軽くノックをして声をかけるが
全く返事は無かった。
席を外しているのなら、開いていれば書類だけでも置かせて貰おうと扉を開ける。
玉璽だけが置いてあったりした場合は、必ず鍵を掛けていくため、大丈夫だろうとドアノブを回すと、意外にも鍵はかかっていなかった。
音もなく扉が開き、セラフィリーアは中に入ると珍しいことにアイヴィスは机に座ったままうたた寝をしていた。
最近また仕事量が増えているのを知っているため、何か手伝えたらいいなとは思っていたが、なかなかそうもいかず。
「ふふ、上着を脱いで…落ちてる?」
いつも着ている騎士服の上着は、暖かいからか脱いでいて、掛けた筈の椅子の背凭れから床に落ちていた。
机の後ろに回り込み、そっと上着を拾うとふわりとアイヴィスのコロンが香る。
少し甘いような、それでいて爽やかなアイヴィスに良く似合う香りを嗅ぐと、上着を抱き締めてしまう。
最近、同じベッドで抱き合って眠るだけで、少しだけ欲求不満だったりするのだ。
ふと、思い付いた事で、自分の上着を脱ぐとアイヴィスの肩にかけてやり、アイヴィスの上着をそっと羽織る。
「やっぱり大きい…アイヴィス様…」
アイヴィスの香りに包まれると袖口に鼻を寄せて息を吸い込み幸せな気持ちになって息を吐いた瞬間、ぐいっと腕を掴まれて引き寄せられる。
「ひゃっ!」
ぐるりと腰に巻かれた腕。
すとんと降りたのはアイヴィスの腿の上で。
「あっ…アイヴィス様、起きていらっしゃったのですか?」
振り向こうとすると、アイヴィスの鼻先が首の後ろに当たる。
「セラが上着を拾った辺りでな」
「酷い…起きているなら言ってくれれば良かったのに…」
「可愛いセラを見れた。癒された…」
穏やかな優しい声音で囁かれると力が抜ける。
あぁ、幸せだななんて思っていたが、次の瞬間シャツが引き抜かれて裾からアイヴィスの手が入り込んでくる。
「アイヴィス様…っあ…」
胸の突起を撫でられると、まだ昼間なのに。
明るいのに。
声が漏れる。
「最近、なかなか触れあえなかったから…触るだけだ…」
「んっ…や…そんな…意地悪」
煽られたら、直ぐにスイッチが入ってしまう身体は触るだけなんて耐えられない。
だが、扉に鍵をしていないため、誰かが来る可能性もあるのだ。
「駄目…アイヴィス様」
「ふふ、その駄目は何が駄目なのかな?触るのが?それとも触るだけなのが?」
「わかっている癖に…」
降り注ぐ陽射しの中、互いの上着が床に落ちて波形を作っていた。
絨毯の敷かれた廊下を歩き、扉の前で立ち止まると軽くノックをして声をかけるが
全く返事は無かった。
席を外しているのなら、開いていれば書類だけでも置かせて貰おうと扉を開ける。
玉璽だけが置いてあったりした場合は、必ず鍵を掛けていくため、大丈夫だろうとドアノブを回すと、意外にも鍵はかかっていなかった。
音もなく扉が開き、セラフィリーアは中に入ると珍しいことにアイヴィスは机に座ったままうたた寝をしていた。
最近また仕事量が増えているのを知っているため、何か手伝えたらいいなとは思っていたが、なかなかそうもいかず。
「ふふ、上着を脱いで…落ちてる?」
いつも着ている騎士服の上着は、暖かいからか脱いでいて、掛けた筈の椅子の背凭れから床に落ちていた。
机の後ろに回り込み、そっと上着を拾うとふわりとアイヴィスのコロンが香る。
少し甘いような、それでいて爽やかなアイヴィスに良く似合う香りを嗅ぐと、上着を抱き締めてしまう。
最近、同じベッドで抱き合って眠るだけで、少しだけ欲求不満だったりするのだ。
ふと、思い付いた事で、自分の上着を脱ぐとアイヴィスの肩にかけてやり、アイヴィスの上着をそっと羽織る。
「やっぱり大きい…アイヴィス様…」
アイヴィスの香りに包まれると袖口に鼻を寄せて息を吸い込み幸せな気持ちになって息を吐いた瞬間、ぐいっと腕を掴まれて引き寄せられる。
「ひゃっ!」
ぐるりと腰に巻かれた腕。
すとんと降りたのはアイヴィスの腿の上で。
「あっ…アイヴィス様、起きていらっしゃったのですか?」
振り向こうとすると、アイヴィスの鼻先が首の後ろに当たる。
「セラが上着を拾った辺りでな」
「酷い…起きているなら言ってくれれば良かったのに…」
「可愛いセラを見れた。癒された…」
穏やかな優しい声音で囁かれると力が抜ける。
あぁ、幸せだななんて思っていたが、次の瞬間シャツが引き抜かれて裾からアイヴィスの手が入り込んでくる。
「アイヴィス様…っあ…」
胸の突起を撫でられると、まだ昼間なのに。
明るいのに。
声が漏れる。
「最近、なかなか触れあえなかったから…触るだけだ…」
「んっ…や…そんな…意地悪」
煽られたら、直ぐにスイッチが入ってしまう身体は触るだけなんて耐えられない。
だが、扉に鍵をしていないため、誰かが来る可能性もあるのだ。
「駄目…アイヴィス様」
「ふふ、その駄目は何が駄目なのかな?触るのが?それとも触るだけなのが?」
「わかっている癖に…」
降り注ぐ陽射しの中、互いの上着が床に落ちて波形を作っていた。
12
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説


エンシェントリリー
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)


フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。


知らないうちに実ってた
キトー
BL
※BLです。
専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。
振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて──
fujossyや小説家になろうにも掲載中。
感想など反応もらえると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる