【BL】空と水の交わる場所~30のお題

梅花

文字の大きさ
上 下
2 / 30

2 抱き締める

しおりを挟む
「アイヴィス様…重くありませんか?」

薄布1枚を身に纏っただけのあられもない姿で横抱きに抱かれている。
所謂、お姫様抱っこだ。

「問題ないが?」

うん。軽くはないだろうけどさ、一応騎士として筋肉ついてきたところだし。
それでもアイヴィス様の腕とかと比べたくないけど。

「もう…逃げませんって…」

苦笑しながらその首に腕を回す。
抱かれながら唇にキスをするだけでアイヴィスの機嫌は目に見えて良くなった。
もう、厳禁なんだから。

「私、熱いの苦手でゆっくり入るのが好きですし…その、お風呂だと声が…」

そう。
運ばれているのは寝室脇にある広い湯殿。
脱衣場を通り抜けてその先にある湯殿はセラフィリーアが風呂好きと言うのもあって、広い湯槽を床に埋め込んだものだ。
風呂を作る構造上、夫婦の寝室も1階に作り直したと言うのだから…。
原因は、あまりにも気持ちよくてうたた寝をし、風邪をひいたセラフィリーアが悪いのだが。

「わかっている。だからぬるめにしてあるから」

何がわかっているのかはいまいち不明だけど。
絶対これ、イチャイチャモードだよね。

扉から中に入ると、ふわりと湯船から湯気が上がっている。
抱き締められたまま、ゆっくりとアイヴィスが湯船に入っていくと、二人分のお湯が惜し気もなく溢れた。
アルトリアでは薄布を纏って入ってもいいらしい。
ただし、紐を解けば直ぐに脱げるものならという但し書きがあるが。
常に全裸で入るのが普通だったファレナスの風習のまま初めてアイヴィスと一緒に入ったときに驚いた。
ちなみに、今回のアイヴィスは全裸だが。
彫刻のような美しいバランスのアイヴィスの裸体は隠さないのが一番綺麗だけど…アイヴィスが翌日に湯船に入る用の薄布を贈ってくれたときは、顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったんだ。

「んっ…いいお湯」

少し温いくらいの熱さを感じながら、アイヴィスに離して貰おうと見上げると、にっこりと笑みが返ってくる。
うん?離す気無いよね。

「アイヴィスさま…あの?」

湯に浸かった瞬間からアイヴィスの手が身体を撫でていく。
向かい合うように膝に座らされてしまうと、丁度胸が湯の表面から少し出る。
張り付いた布が少し尖った突起を表す。

「み、見ないで…くださ…」

自分だけこんなになってしまっているのだと、見られたくなくてアイヴィスにぎゅっと抱き付いた。
距離が近ければ見えないだろう。
そんな浅はかな考えを読んでいたのか、アイヴィスの唇が首筋を這う。

「あっ…やぁっ…」

くすぐったさに身悶えるとセラフィリーアはいっそう強く抱き付くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

エンシェントリリー

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。

噛痕に思う

阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。 ✿オメガバースもの掌編二本作。 (『ride』は2021年3月28日に追加します)

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

知らないうちに実ってた

キトー
BL
※BLです。 専門学生の蓮は同級生の翔に告白をするが快い返事はもらえなかった。 振られたショックで逃げて裏路地で泣いていたら追いかけてきた人物がいて── fujossyや小説家になろうにも掲載中。 感想など反応もらえると嬉しいです!  

処理中です...