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1 手を繋ぐ
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「少し歩こうか」
寒い冬が過ぎて草木が芽吹く頃、漸く仕事に一区切りができたアイヴィス。
ここ何日も深夜に戻ってきて、朝は自分より早い。
いってらっしゃいのキスを寝台の上でしたのが数える程もある。
アイヴィスのせいもあるけどね!
朝食を一緒にとり、お茶を飲んでから誘われた。
「はい」
椅子から立ち上がると、いつものように腕が差し出される。
その逞しい腕にそっと手を掛けた。
ゆっくりとこちらにペースを合わせて歩いてくれる愛しい人にセラフィリーアは笑みを向ける。
「寒くはないか?」
「大丈夫です」
「なら、温室に行こう」
ファレナスの温室を模して作られたそれは、硝子張りで太陽の光を沢山受け入れて暖かい。
セラフィリーアの好きな花が1年を通して咲くようにしてくれ、庭だけでなくここからも朝に花が届けられる。
「アイヴィス様…いつもありがとうございます…」
「いや…」
初めての夜を過ごしてから、毎日届く花を摘んでくれるのはアイヴィスだと知っている。
時間のあるときは自ら花束を抱いて戻り、無いときも自らの目と手で選んだそれを侍従に託して執務に向かう。
どんなに忙しくてもそれは欠かさない。
遠征の時ですら、遠征先で手折った花を託す事もある。
そこまでしなくてもと言っても、日課だからそれをしないと始まらないと笑うアイヴィス。
大切にされている。
温室の中を二人でゆっくりと歩くが、広すぎない温室を回るのにはそれほど時間を要しない。
蔓薔薇のアーチを潜った中央にはベンチがあり、そっとそこに腰かける。
並んで座りそっとアイヴィスを見上げると、優しいキスが降ってくる。
「…っん…アイヴィスさま…」
隠さなくても、偽らなくても良くなった関係。
まだ慣れない行為ではあるが、幸せだ。
「セラ…」
触れ合っている側の腕が動き指が絡み合うように組まれる。
繋いだ手からは自分と違う体温を感じていた。
繋がった手。
触れる唇。
「…はぁ…」
頬を撫でる指先は優しくてセラフィリーアはその手に頬を寄せる。
まだ明るい陽射しの中だというのに…夜が待ちきれない。
掠れた声で名前を呼ぶと、アイヴィスの身体が包むように抱き締めてくれた。
少し前まで繋がっていた身体が一気に熱を帯びる。
「…ぁ」
「触るだけ…な?」
引き寄せられて膝の上に乗せられるとアイヴィスの顔が見えなくなる。
軽く開いたアイヴィスの太股より外に膝がくるよう座らせられると、見事なまでの御開帳。
腰がゴムでできた緩めのズボンはアイヴィスの指で一気に引き下ろされた。
捲り上げられたシャツ。
外気に大切な部分が晒されると、恥ずかしさからほんのりと肌が赤く染まる。
「アイヴィスさま…恥ずかしい…」
きっと耳や首筋まで赤くなっていることだろう。
「大丈夫、私からは見えていないよ?」
見えていないと言うわりには指先は器用に動きやわやわと握り込んでくる。
「アッ…あぁ…」
簡単に上り詰めてしまう身体。
熱い息を吐き出してから、片方の手は繋いだままだったと気付く。
恋人繋ぎ。
恋人ではなくもう伴侶だが、ずっと同じ気持ちでいたいと思う。
寒い冬が過ぎて草木が芽吹く頃、漸く仕事に一区切りができたアイヴィス。
ここ何日も深夜に戻ってきて、朝は自分より早い。
いってらっしゃいのキスを寝台の上でしたのが数える程もある。
アイヴィスのせいもあるけどね!
朝食を一緒にとり、お茶を飲んでから誘われた。
「はい」
椅子から立ち上がると、いつものように腕が差し出される。
その逞しい腕にそっと手を掛けた。
ゆっくりとこちらにペースを合わせて歩いてくれる愛しい人にセラフィリーアは笑みを向ける。
「寒くはないか?」
「大丈夫です」
「なら、温室に行こう」
ファレナスの温室を模して作られたそれは、硝子張りで太陽の光を沢山受け入れて暖かい。
セラフィリーアの好きな花が1年を通して咲くようにしてくれ、庭だけでなくここからも朝に花が届けられる。
「アイヴィス様…いつもありがとうございます…」
「いや…」
初めての夜を過ごしてから、毎日届く花を摘んでくれるのはアイヴィスだと知っている。
時間のあるときは自ら花束を抱いて戻り、無いときも自らの目と手で選んだそれを侍従に託して執務に向かう。
どんなに忙しくてもそれは欠かさない。
遠征の時ですら、遠征先で手折った花を託す事もある。
そこまでしなくてもと言っても、日課だからそれをしないと始まらないと笑うアイヴィス。
大切にされている。
温室の中を二人でゆっくりと歩くが、広すぎない温室を回るのにはそれほど時間を要しない。
蔓薔薇のアーチを潜った中央にはベンチがあり、そっとそこに腰かける。
並んで座りそっとアイヴィスを見上げると、優しいキスが降ってくる。
「…っん…アイヴィスさま…」
隠さなくても、偽らなくても良くなった関係。
まだ慣れない行為ではあるが、幸せだ。
「セラ…」
触れ合っている側の腕が動き指が絡み合うように組まれる。
繋いだ手からは自分と違う体温を感じていた。
繋がった手。
触れる唇。
「…はぁ…」
頬を撫でる指先は優しくてセラフィリーアはその手に頬を寄せる。
まだ明るい陽射しの中だというのに…夜が待ちきれない。
掠れた声で名前を呼ぶと、アイヴィスの身体が包むように抱き締めてくれた。
少し前まで繋がっていた身体が一気に熱を帯びる。
「…ぁ」
「触るだけ…な?」
引き寄せられて膝の上に乗せられるとアイヴィスの顔が見えなくなる。
軽く開いたアイヴィスの太股より外に膝がくるよう座らせられると、見事なまでの御開帳。
腰がゴムでできた緩めのズボンはアイヴィスの指で一気に引き下ろされた。
捲り上げられたシャツ。
外気に大切な部分が晒されると、恥ずかしさからほんのりと肌が赤く染まる。
「アイヴィスさま…恥ずかしい…」
きっと耳や首筋まで赤くなっていることだろう。
「大丈夫、私からは見えていないよ?」
見えていないと言うわりには指先は器用に動きやわやわと握り込んでくる。
「アッ…あぁ…」
簡単に上り詰めてしまう身体。
熱い息を吐き出してから、片方の手は繋いだままだったと気付く。
恋人繋ぎ。
恋人ではなくもう伴侶だが、ずっと同じ気持ちでいたいと思う。
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