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6章

2話

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「レイモンド様、こちらを」
「やだ、まだ早いわよそこまで……そんなに体型変わったかしら」
締め付けをせずに動きやすい服装をと、用意されたのは今まで着た事の無い軟らかなシルエットの服装だった。
「可愛らしいけれど、アタシには似合わないわねぇ……」
ぽっこりと下腹部が大きくなってきたようにも見える体型。
胸の下で切り替え、すとんと床近くまで布が落ちるワンピースのようなデザイン。
「まぁ、誰にも見せる事は無いからいいけれど、ねぇリューク?これは貴方が選んだの?」
「いえ」
「そう……」
レイモンドは、あえて誰が選んだのかとは聞かない。
リュークも誰とは言わないけれど。
「これからは断って頂戴。屋敷を借りただけでそれ以上の干渉はされたくないわ。これからは全て自分のものは自分で購入するから、そう言えば支払いとか足りているのかしら……貴方とは契約をしたけれど、他の人はどうなっているのかしら……まさか、派遣されているの?」
自分の体調不良をそのままに、レイモンドはふと思い出す。
この屋敷を借りる旨と、リュークと契約を結んだ記憶があるが、食事等はリューク一人だけでは維持をするのに手が回らない。
「いえ、レイモンド様……この屋敷にいる人間は誰一人として、誰かと契約を結んでいるものはおりません。庭師も料理人もです」
「ちょっと待ちなさい?それってアタシがタダ働きさせてたって事よね?やだわ!」
「いえ、皆が自ら集まったのですよ?」
この屋敷に戻る時には全て必要なものを揃えるためにかなりの額を持ってきては居たのだが、つい雇用契約を結ぶのを忘れていたのだ。
「私を含め、幼いレイモンド様に拾っていただいた者たちばかりです」
「駄目よ!その辺はちゃんとしないと……リューク手伝って。此処には何人居るのかしら。ひとりも漏らさないように教えて頂戴?住み込みと通いと……住み込んでいる者にはちゃんとした待遇をね?通いでも住み込みたい人がいれば空いている部屋を解放して頂戴……って、まさかリューク貴方屋根裏のあの部屋にいるんじゃないでしょうね!」
ハッとしてリュークを見ると、リュークはにっこりと微笑んでいた。
「駄目よ、貴方家令になるのよね執事長ではなく……」
レイモンドは軽く混乱しながらも、ふらふらと机に向かう。
用意されていたのはブルーブラックのインクとガラスペン。
「もう、アタシが来てから何日経つと思ってるのよ……ちゃんと言って頂戴!」
自分の不手際を棚に上げて、レイモンドは吠えてから自己嫌悪に陥るのだった、
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