60 / 62
6章
2話
しおりを挟む
「レイモンド様、こちらを」
「やだ、まだ早いわよそこまで……そんなに体型変わったかしら」
締め付けをせずに動きやすい服装をと、用意されたのは今まで着た事の無い軟らかなシルエットの服装だった。
「可愛らしいけれど、アタシには似合わないわねぇ……」
ぽっこりと下腹部が大きくなってきたようにも見える体型。
胸の下で切り替え、すとんと床近くまで布が落ちるワンピースのようなデザイン。
「まぁ、誰にも見せる事は無いからいいけれど、ねぇリューク?これは貴方が選んだの?」
「いえ」
「そう……」
レイモンドは、あえて誰が選んだのかとは聞かない。
リュークも誰とは言わないけれど。
「これからは断って頂戴。屋敷を借りただけでそれ以上の干渉はされたくないわ。これからは全て自分のものは自分で購入するから、そう言えば支払いとか足りているのかしら……貴方とは契約をしたけれど、他の人はどうなっているのかしら……まさか、派遣されているの?」
自分の体調不良をそのままに、レイモンドはふと思い出す。
この屋敷を借りる旨と、リュークと契約を結んだ記憶があるが、食事等はリューク一人だけでは維持をするのに手が回らない。
「いえ、レイモンド様……この屋敷にいる人間は誰一人として、誰かと契約を結んでいるものはおりません。庭師も料理人もです」
「ちょっと待ちなさい?それってアタシがタダ働きさせてたって事よね?やだわ!」
「いえ、皆が自ら集まったのですよ?」
この屋敷に戻る時には全て必要なものを揃えるためにかなりの額を持ってきては居たのだが、つい雇用契約を結ぶのを忘れていたのだ。
「私を含め、幼いレイモンド様に拾っていただいた者たちばかりです」
「駄目よ!その辺はちゃんとしないと……リューク手伝って。此処には何人居るのかしら。ひとりも漏らさないように教えて頂戴?住み込みと通いと……住み込んでいる者にはちゃんとした待遇をね?通いでも住み込みたい人がいれば空いている部屋を解放して頂戴……って、まさかリューク貴方屋根裏のあの部屋にいるんじゃないでしょうね!」
ハッとしてリュークを見ると、リュークはにっこりと微笑んでいた。
「駄目よ、貴方家令になるのよね執事長ではなく……」
レイモンドは軽く混乱しながらも、ふらふらと机に向かう。
用意されていたのはブルーブラックのインクとガラスペン。
「もう、アタシが来てから何日経つと思ってるのよ……ちゃんと言って頂戴!」
自分の不手際を棚に上げて、レイモンドは吠えてから自己嫌悪に陥るのだった、
「やだ、まだ早いわよそこまで……そんなに体型変わったかしら」
締め付けをせずに動きやすい服装をと、用意されたのは今まで着た事の無い軟らかなシルエットの服装だった。
「可愛らしいけれど、アタシには似合わないわねぇ……」
ぽっこりと下腹部が大きくなってきたようにも見える体型。
胸の下で切り替え、すとんと床近くまで布が落ちるワンピースのようなデザイン。
「まぁ、誰にも見せる事は無いからいいけれど、ねぇリューク?これは貴方が選んだの?」
「いえ」
「そう……」
レイモンドは、あえて誰が選んだのかとは聞かない。
リュークも誰とは言わないけれど。
「これからは断って頂戴。屋敷を借りただけでそれ以上の干渉はされたくないわ。これからは全て自分のものは自分で購入するから、そう言えば支払いとか足りているのかしら……貴方とは契約をしたけれど、他の人はどうなっているのかしら……まさか、派遣されているの?」
自分の体調不良をそのままに、レイモンドはふと思い出す。
この屋敷を借りる旨と、リュークと契約を結んだ記憶があるが、食事等はリューク一人だけでは維持をするのに手が回らない。
「いえ、レイモンド様……この屋敷にいる人間は誰一人として、誰かと契約を結んでいるものはおりません。庭師も料理人もです」
「ちょっと待ちなさい?それってアタシがタダ働きさせてたって事よね?やだわ!」
「いえ、皆が自ら集まったのですよ?」
この屋敷に戻る時には全て必要なものを揃えるためにかなりの額を持ってきては居たのだが、つい雇用契約を結ぶのを忘れていたのだ。
「私を含め、幼いレイモンド様に拾っていただいた者たちばかりです」
「駄目よ!その辺はちゃんとしないと……リューク手伝って。此処には何人居るのかしら。ひとりも漏らさないように教えて頂戴?住み込みと通いと……住み込んでいる者にはちゃんとした待遇をね?通いでも住み込みたい人がいれば空いている部屋を解放して頂戴……って、まさかリューク貴方屋根裏のあの部屋にいるんじゃないでしょうね!」
ハッとしてリュークを見ると、リュークはにっこりと微笑んでいた。
「駄目よ、貴方家令になるのよね執事長ではなく……」
レイモンドは軽く混乱しながらも、ふらふらと机に向かう。
用意されていたのはブルーブラックのインクとガラスペン。
「もう、アタシが来てから何日経つと思ってるのよ……ちゃんと言って頂戴!」
自分の不手際を棚に上げて、レイモンドは吠えてから自己嫌悪に陥るのだった、
43
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
断罪は決定済みのようなので、好きにやろうと思います。
小鷹けい
BL
王子×悪役令息が書きたくなって、見切り発車で書き始めました。
オリジナルBL初心者です。生温かい目で見ていただけますとありがたく存じます。
自分が『悪役令息』と呼ばれる存在だと気付いている主人公と、面倒くさい性格の王子と、過保護な兄がいます。
ヒロイン(♂)役はいますが、あくまで王子×悪役令息ものです。
最終的に執着溺愛に持って行けるようにしたいと思っております。
※第一王子の名前をレオンにするかラインにするかで迷ってた当時の痕跡があったため、気付いた箇所は修正しました。正しくはレオンハルトのところ、まだラインハルト表記になっている箇所があるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる