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3章 騎士

7話

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石畳の上をカツカツと馬の蹄の音がしていた。
ザワザワとした喧騒。
まだ明るい日中、ニコルと連れ立って市街へ来た。
「えぇと、地図だとこの辺りなんだけど」
レイモンドは片手に紙を持ち、器用に片手で手綱を操りながら馬を進めていた。
「あぁあったわ。ここね」
手綱を引いて馬から下りたレイモンドは、ニコルの乗った馬の手綱を握る。
見習いのうちにニコルと選んだ馬は栗鹿毛で額から鼻先に細い流星の入った賢い牡馬だ。
「ごめんなさいね、迷っちゃって」
本当ならば、商人を騎士団に呼べばいいのだが、そうすると選べるものも少ないし直ぐにも欲しかったからだ。
「此処ですか?」
見上げたのは少し怪しげな雰囲気がするこじんまりとした建物だった。
看板は無く、入口のドアノブには木彫りのリスが掛かっている。
「聞いてきたから間違いないわ。お店らしくないお店だと。でも、一級品ばかり揃えるお店だと聞いたのよ」
店の脇に馬を繋ぎ、レイモンドはコンコンと扉をノックしてからノブを回し引く。
店内は少し薄暗くなめした皮の独特な匂いがした。
「こんにちは、商品を見せてくれるかしら?」
足を踏み入れると、奥に店主だろう初老の老人がゆっくりと揺れる椅子に身体を預けながら煙草をふかしていた。
「すみません、この子に合うチョーカーを欲しいの」
「いらねぇだろそいつには」
低い声が聞こえた。
「え?」
レイモンドは男が何を言っているかわからず、聞き返す。
「そいつはΩじゃねぇよ、Ωらしさが微塵もねぇ。それともナンだ、お前さんの性癖か?好きな恋人には所有の証で首輪をしてぇのかよ?まぁ、そんなやつもいるけどな」
ガタンと音を立てて老人が立ち上がる。その身長はゆうにレイモンドを越えていた。
「え、えぇ、そうね?」
ずいっと近付いてくる老人はクッと人の悪い笑みを浮かべた。
「まぁいい、こっちからプレイ用だ、こっちからは認証魔石の付いたやつだ。魔石が付いたのはその分高いが見た目的にも良いだろう。金に余裕があるならそっちを選べ。まぁ、ゆっくり選ぶといい⋯⋯」
簡単に説明をした老人はゆっくり元の椅子に戻ると腰掛けながら煙草をふかした。
「ニコル、選びなさい?貴方のチョーカーよ好きな色と材質があるから」
見た目がレースのようになっているが、人の力では絶対に引きちぎれないようになっているもの、柔らかく革をなめしてあるもの。
様々な物が並んでいる。
少し薄暗いなと思っていると店の中かゆっくりと明るくなったのだった。
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