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2章 成人
5話
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「あらー随分素敵になったじゃない!見てみなさいよ」
理容師が切った髪をパタパタと叩き床へと落としてから、首から下を覆っていた布を外す。
だいぶ短くなったニコルの髪は、ニコルの美貌を損なわずその優しさを強調している。
「ほら、鏡!」
レイモンドが手鏡を渡すと、ニコルはそれを手にして前髪を触った。
「あ……」
「ほら、素敵よニコル。ね?じゃあアタシも切って貰おうかしら?」
「あ、あの……レイモンド様の髪、好きです……ので、あまり短くは……」
肩につく位の長さにしているレイモンド。
「あー……そうね、そんなに切るつもりは無いけれど、色は抜きたいわね……アタシ、自分の髪色が好きじゃないのよ」
レイモンドは髪を掻き上げながら告げると、先程までニコルが座っていた椅子に入れ替わるようにして腰掛けた。
「まだ、目立たないけど根元からの色を抜くのとトリートメントね、お願い」
生まれながらの髪色は変えたくても変えられない。
「ニコル、待ってなくてもいいわよ、時間がかかるもの。アタシに付き合ってくれてありがとね?」
レイモンドはひらひらと手を振る。
ニコルはそっと部屋の隅にある椅子に座ってレイモンドを見つめていた。
レイモンドの髪が洗われてなにやら薬剤を塗布され時間を置くと流す。
それを何度も繰り返してから乾かし毛先を揃える程度に切って、レイモンドの散髪は終わった。
「もう、ニコルったら待っていなくても良かったのに。夜勤だから寝てなきゃ駄目じゃない?」
「大丈夫です、それならレイモンド様だって同じでしょう?」
役職づきと言っても、レイモンドにも夜勤はある。
「アタシは大丈夫よ、ニコルたちが訓練中にそっと壁際で居眠りすればいいんだもの」
等と軽く言うが、レイモンドが恐らく一番レイモンドの隊の中では騎士を相手に訓練をしている。
夜勤はニ小隊が一組で行う。
シャッフルされた半数は夜の巡回で出るが、残りの半数は小隊長他、役職づきの騎士と訓練をするのだ。
小隊長などと手合わせをするのは、この機会を逃すと無いのだ。
レイモンドの訓練はまだ、騎士ではないニコルを始めとした見習い騎士の相手でも手を抜くことはない。
それに、見習い騎士に対してはレイモンドが得意とした双刀を絶対に使わない。
騎士に昇格するニコルですらまだレイモンドが双刀を扱いながらの稽古は、して貰っていない。
いつかはと思っているがそれはいつになるのかも分からないほどレイモンドは強かった。
「さーて、今日の目的は果たしたから、お昼寝でもしましょ?ニコルはどうする?」
ありがとうねと言いながら、レイモンドはそっと理容師に小袋を手渡す。
「また、お願いね」
「かしこまりました」
理容師は袋を受け取り片付けを始める。
「ほら、行くわよニコル?」
レイモンドは足取り軽く部屋を出たのだった。
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だいぶ短くなったニコルの髪は、ニコルの美貌を損なわずその優しさを強調している。
「ほら、鏡!」
レイモンドが手鏡を渡すと、ニコルはそれを手にして前髪を触った。
「あ……」
「ほら、素敵よニコル。ね?じゃあアタシも切って貰おうかしら?」
「あ、あの……レイモンド様の髪、好きです……ので、あまり短くは……」
肩につく位の長さにしているレイモンド。
「あー……そうね、そんなに切るつもりは無いけれど、色は抜きたいわね……アタシ、自分の髪色が好きじゃないのよ」
レイモンドは髪を掻き上げながら告げると、先程までニコルが座っていた椅子に入れ替わるようにして腰掛けた。
「まだ、目立たないけど根元からの色を抜くのとトリートメントね、お願い」
生まれながらの髪色は変えたくても変えられない。
「ニコル、待ってなくてもいいわよ、時間がかかるもの。アタシに付き合ってくれてありがとね?」
レイモンドはひらひらと手を振る。
ニコルはそっと部屋の隅にある椅子に座ってレイモンドを見つめていた。
レイモンドの髪が洗われてなにやら薬剤を塗布され時間を置くと流す。
それを何度も繰り返してから乾かし毛先を揃える程度に切って、レイモンドの散髪は終わった。
「もう、ニコルったら待っていなくても良かったのに。夜勤だから寝てなきゃ駄目じゃない?」
「大丈夫です、それならレイモンド様だって同じでしょう?」
役職づきと言っても、レイモンドにも夜勤はある。
「アタシは大丈夫よ、ニコルたちが訓練中にそっと壁際で居眠りすればいいんだもの」
等と軽く言うが、レイモンドが恐らく一番レイモンドの隊の中では騎士を相手に訓練をしている。
夜勤はニ小隊が一組で行う。
シャッフルされた半数は夜の巡回で出るが、残りの半数は小隊長他、役職づきの騎士と訓練をするのだ。
小隊長などと手合わせをするのは、この機会を逃すと無いのだ。
レイモンドの訓練はまだ、騎士ではないニコルを始めとした見習い騎士の相手でも手を抜くことはない。
それに、見習い騎士に対してはレイモンドが得意とした双刀を絶対に使わない。
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いつかはと思っているがそれはいつになるのかも分からないほどレイモンドは強かった。
「さーて、今日の目的は果たしたから、お昼寝でもしましょ?ニコルはどうする?」
ありがとうねと言いながら、レイモンドはそっと理容師に小袋を手渡す。
「また、お願いね」
「かしこまりました」
理容師は袋を受け取り片付けを始める。
「ほら、行くわよニコル?」
レイモンドは足取り軽く部屋を出たのだった。
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