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1章 見習い
19話
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「レイモンド様、起きてください」
「ん?あらやだ何時?」
目を覚ましたレイモンドは心配そうに見下ろしてくるニコルを見上げた。
「夕方に……洗濯物は乾きましたから、取り込んでしまいました」
「ありがと。ぐっすりと寝ちゃったみたいね……不覚。洗濯物ありがとうご飯食べに行きましょ?お腹減ったでしょ」
ごめんなさいねとレイモンドが身体を起こして立ち上がる。
「それにしてもニコル貴方可愛らしかったのにねぇ」
くしゃくしゃとあっちこっちを向く巻き髪を撫でてやるレイモンドの視線の先にはぐんぐんと背が伸び、レイモンドよりも背が高くなったニコルがいた。
「何ですかそれは」
「懐かしい夢を見ていたのよ、貴方がここに来た見習いの時のこと。あれから3年だものねぇ……そりゃ背も伸びるのはわかるけど、貴方本当にΩなのかしら……」
どう見てもこの体格と美貌はαに近いような気がして仕方ない。
だが、頑なにニコルは自分はΩだから奴隷だったのだ、間違いは無いと言う。
「ま、いいわ……お腹空いちゃったわね、部屋に戻ってから食堂に行きましょ?」
立ち上がる手助けをして貰うと、ニコルは大きな籠をひょいと抱え上げる。
「次の休みにはまた買い物に行かなきゃ、ニコル貴方いい加減に新しいシャツを買いなさいな。アタシのお古をいつまで着てるのよ、流石にもうキツイでしょ?」
「でも、これはお気に入りなんです」
低くなった声。
「でもね、筋肉もついてるんだからパツンパツンになっちゃうわよ?」
それでも、自分のお気に入りでもあったシャツなので長く着て貰えるのは有難い。
「ニコルも年頃なんだから少しはオシャレをしなさいな騎士ってだけで言い寄られるようになるんだからね?早く伴侶を見つけなさい……まぁ、今年の騎士試験を優秀な成績で突破できたら何かプレゼントをしてあげるわよ、きっとそれが最後に貴方にあげられるものね。だから考えておきなさい。屋敷でもなんでも買ってあげるわよ?アタシこう見えてお金持ちだから」
クスクスとレイモンドは歩きながらニコルに告げた。
騎士見習いの期間は終わり、試験を受けて騎士になるためニコルの配属は此処ではなくなる。
既に見習いの中では群を抜いて剣技も上手く馬を操らせても素晴らしかった。
見習いになった時には文字を書くのもやっとだった筈なのに。
「俺が欲しいのは……ひとつだけなので、是非期待してください!」
にこりと笑ったニコルの頭をくしゃりと撫でてレイモンドはその鼻先を指でつついた。
「なぁに言ってんの、ま、頑張りなさいな……アタシの可愛い騎士見習い」
そう言いながら、二人は執務室に向かうのだった。
「ん?あらやだ何時?」
目を覚ましたレイモンドは心配そうに見下ろしてくるニコルを見上げた。
「夕方に……洗濯物は乾きましたから、取り込んでしまいました」
「ありがと。ぐっすりと寝ちゃったみたいね……不覚。洗濯物ありがとうご飯食べに行きましょ?お腹減ったでしょ」
ごめんなさいねとレイモンドが身体を起こして立ち上がる。
「それにしてもニコル貴方可愛らしかったのにねぇ」
くしゃくしゃとあっちこっちを向く巻き髪を撫でてやるレイモンドの視線の先にはぐんぐんと背が伸び、レイモンドよりも背が高くなったニコルがいた。
「何ですかそれは」
「懐かしい夢を見ていたのよ、貴方がここに来た見習いの時のこと。あれから3年だものねぇ……そりゃ背も伸びるのはわかるけど、貴方本当にΩなのかしら……」
どう見てもこの体格と美貌はαに近いような気がして仕方ない。
だが、頑なにニコルは自分はΩだから奴隷だったのだ、間違いは無いと言う。
「ま、いいわ……お腹空いちゃったわね、部屋に戻ってから食堂に行きましょ?」
立ち上がる手助けをして貰うと、ニコルは大きな籠をひょいと抱え上げる。
「次の休みにはまた買い物に行かなきゃ、ニコル貴方いい加減に新しいシャツを買いなさいな。アタシのお古をいつまで着てるのよ、流石にもうキツイでしょ?」
「でも、これはお気に入りなんです」
低くなった声。
「でもね、筋肉もついてるんだからパツンパツンになっちゃうわよ?」
それでも、自分のお気に入りでもあったシャツなので長く着て貰えるのは有難い。
「ニコルも年頃なんだから少しはオシャレをしなさいな騎士ってだけで言い寄られるようになるんだからね?早く伴侶を見つけなさい……まぁ、今年の騎士試験を優秀な成績で突破できたら何かプレゼントをしてあげるわよ、きっとそれが最後に貴方にあげられるものね。だから考えておきなさい。屋敷でもなんでも買ってあげるわよ?アタシこう見えてお金持ちだから」
クスクスとレイモンドは歩きながらニコルに告げた。
騎士見習いの期間は終わり、試験を受けて騎士になるためニコルの配属は此処ではなくなる。
既に見習いの中では群を抜いて剣技も上手く馬を操らせても素晴らしかった。
見習いになった時には文字を書くのもやっとだった筈なのに。
「俺が欲しいのは……ひとつだけなので、是非期待してください!」
にこりと笑ったニコルの頭をくしゃりと撫でてレイモンドはその鼻先を指でつついた。
「なぁに言ってんの、ま、頑張りなさいな……アタシの可愛い騎士見習い」
そう言いながら、二人は執務室に向かうのだった。
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