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1章 見習い

13話

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雑貨屋で固形の石鹸を購入する。
「ニコルは本当に欲しいものは無いの?アタシと同じ石鹸って……まぁいいけど、他に好きな匂いとかあったら今度は言いなさいよ?」
結局は選べずに今使っているレイモンドが予備に持っていた石鹸と同じ物を買ってもらった。
少し甘い、レイモンドに良く似合う香りは身体を洗った時にいつも良い匂いだと思って使わせて貰っていた。
「大丈夫です、ありがとうございます」
「じゃあ、軽い物で食事してから帰りましょうか、何か食べたいものがあるかしら?無ければサンドイッチとかだと軽すぎるかしらね?まぁいいわ、おすすめの店があるのよ」
レイモンドは、ゆっくり街の中を歩く。
あちらの店は店主が怖いけれど良いものがあるとか、あちらの店は珍しい物が置いてあるなど、あまり来た事のないニコルを案内してくれている。
「もしかしたら、ニコルにおつかいをお願いしなければならないときも出てくるかもしれないのよ、だからね少し案内も兼ねてね?アタシと一緒じゃ買いたいものも買えないかもしれないし、休みの時に毎回一緒に出掛けるのも気詰まりになっちゃうかもしれないから、ニコルだって慣れてきたら自由にしていいのよ?」
さぁ着いたと言うのは道に面した部分に出窓があり、どうやらそこで品物を買うように出来ていた。
「ニコル、お魚とお肉どちらが好き?あ、ごめんねこれとこっち、半分に切って別々に包んで頂戴?それと、フルーツのジュースふたつ」
ニコルは選ぶ事が得意では無い。
与えられた物に不服を言うなどして来なかったからだ。
それをレイモンドは察して、半分ずつにした。
選ぶ事ができるようになるまで、そうしてあげようと思ったのだ。ただ、過度な行為も良くは無い。
先程の文具店であのガラスペンが欲しいと意思表示をしたのは良い兆候だと思ったから、先に支払いを済ませて取り置きをしたのだ。
折角のニコルの行為に水をさされたくない。
「さあ、ニコル食べましょ。こう言うお店はお店の中で食べない分、安価なのよ。」
そう言いながら、店の店員から袋を受け取るとレイモンドは近くの生垣の縁に腰掛けた。
「流石に歩きながらじゃお行儀悪いからね、ニコル隣に座りなさい。ほら」
レイモンドはポケットからハンカチを取り出して縁に掛けるとそこに座りなさいと促した。
「え」
「ほら、早く。温かいうちに食べなきゃね?」
そう言うと、飲み物を渡す。
ニコルは慌ててハンカチが無い部分に腰掛けた。
「もう、そうよね貴方はそう言う子だったわ」
レイモンドは困ったように笑うと、今度はハンカチをたたんでからポケットに戻した。
「まずはお魚にしましょう」
袋の中からガサガサと紙に包まれたサンドイッチを取り出すと、ひとつをニコルに手渡す。
「パンの中に魚を揚げたものが挟まっているわ、普段はふたつぶんの大きさなんだけど半分にして貰ったのよ。だって少しずつ食べたいじゃない?でね、これ……紙を外したら、かぶりつくのよ?ナイフとフォークは要らないの。楽チンでしょ?」
そう言いながら、レイモンドはサンドイッチをぱくりと食べてみせるのだった。
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