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1章 見習い
12話
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「レイモンド様?」
「何?ああ、次はちょっと歩くわよ?足とか痛くない?」
「大丈夫ですが」
「じゃあ、次は本屋さんに行きましょう?優しい読み物を買わないと」
レイモンドは少し俯くニコルにどうかしたの?と、訝しげに問い掛けた。
「あの、僕には本は……高いので」
そう言葉にしたニコルにレイモンドは微笑みを向ける。
「良いのよ、ちゃんと勉強してアタシが困った時には助けて頂戴?ね?」
手を繋ぎゆっくりと歩くレイモンドにニコルは戸惑いながら付いていく。
いくら自分が侍従だからと言っても、こんなに気を使って色々と何かを与えてくれるものなのだろうかとニコルは考える。
与えられることに慣れていないのだ。
「ありがとうございます、頑張ります」
ニコルは笑みを浮かべる。
レイモンドが言うように、早く一人前になれるように、少しでもレイモンドに感謝を返せるようになりたい。
そう心に決めて頷いた。
町外れにある小さな本屋さんに着くと、レイモンドはニコルに数冊の絵本と、図鑑を買った。
「絵本は童話よ?聞いた事あるかしら。文字も大きくて読みやすいし、絵も可愛くない?それと、図鑑ね。植物、動物、魔獣、色々なものが載っているから絵と名前が一緒に覚えられるわ。もし読み終わったりしたら中古で売れるしね?」
レイモンドはにこにこしながら会計を済ませ、他にも何か買おうか悩んでいるらしく、たくさん並べられた本の中から何かを選んでいたが、ニコルにはその文字は読めなかった。
ただ、表紙の絵は凄く綺麗だった。
「やだ、新刊が出てるじゃない!知らなかったわー」
レイモンドは一冊の本を手にすると、胸に抱いた。
「ニコルありがとうね、貴方がいなければ本屋なんて滅多に来ないから新刊に出会えなかったかもしれなかったわ、ちょっとこのシリーズ集めてるんだけどね、皆には内緒よ?」
そう言いながらいそいそと追加で会計をすると、出ましょうかと店を出た。
ニコルの本は一冊を手で持ち、残りはこれも騎士団へと運んでもらうことにした。
「後は……お腹空いてない?マドレーヌを食べたから大丈夫そう?ニコルの日用品がまだよね?歩いてお腹を空かせてから食事の方がいいかなって、食べなくても大丈夫そうなら別のお店に行きましょう?」
レイモンドはそうニコルを気遣いながら言うと、ニコルも大丈夫ですと繰り返す。
石畳を歩き出した二人が向かった先は、雑貨屋だった。
店に近づくだけで何やらふわりと甘い香りが漂う。
甘いと言っても、何処か人工的な匂いだなとニコルは感じていた。
「石鹸のお店よ、騎士団のお風呂のは好きじゃなくてね……いつもアタシは此処で買うの。ニコルも毎日使うんだから、好きな匂いのを買いなさいね。石鹸は衛生管理で必要なのよ」
騎士団支給のものがあるのでいりませんと、口を開こうとした瞬間レイモンドにニコルはそう言い切られてしまった。
「何?ああ、次はちょっと歩くわよ?足とか痛くない?」
「大丈夫ですが」
「じゃあ、次は本屋さんに行きましょう?優しい読み物を買わないと」
レイモンドは少し俯くニコルにどうかしたの?と、訝しげに問い掛けた。
「あの、僕には本は……高いので」
そう言葉にしたニコルにレイモンドは微笑みを向ける。
「良いのよ、ちゃんと勉強してアタシが困った時には助けて頂戴?ね?」
手を繋ぎゆっくりと歩くレイモンドにニコルは戸惑いながら付いていく。
いくら自分が侍従だからと言っても、こんなに気を使って色々と何かを与えてくれるものなのだろうかとニコルは考える。
与えられることに慣れていないのだ。
「ありがとうございます、頑張ります」
ニコルは笑みを浮かべる。
レイモンドが言うように、早く一人前になれるように、少しでもレイモンドに感謝を返せるようになりたい。
そう心に決めて頷いた。
町外れにある小さな本屋さんに着くと、レイモンドはニコルに数冊の絵本と、図鑑を買った。
「絵本は童話よ?聞いた事あるかしら。文字も大きくて読みやすいし、絵も可愛くない?それと、図鑑ね。植物、動物、魔獣、色々なものが載っているから絵と名前が一緒に覚えられるわ。もし読み終わったりしたら中古で売れるしね?」
レイモンドはにこにこしながら会計を済ませ、他にも何か買おうか悩んでいるらしく、たくさん並べられた本の中から何かを選んでいたが、ニコルにはその文字は読めなかった。
ただ、表紙の絵は凄く綺麗だった。
「やだ、新刊が出てるじゃない!知らなかったわー」
レイモンドは一冊の本を手にすると、胸に抱いた。
「ニコルありがとうね、貴方がいなければ本屋なんて滅多に来ないから新刊に出会えなかったかもしれなかったわ、ちょっとこのシリーズ集めてるんだけどね、皆には内緒よ?」
そう言いながらいそいそと追加で会計をすると、出ましょうかと店を出た。
ニコルの本は一冊を手で持ち、残りはこれも騎士団へと運んでもらうことにした。
「後は……お腹空いてない?マドレーヌを食べたから大丈夫そう?ニコルの日用品がまだよね?歩いてお腹を空かせてから食事の方がいいかなって、食べなくても大丈夫そうなら別のお店に行きましょう?」
レイモンドはそうニコルを気遣いながら言うと、ニコルも大丈夫ですと繰り返す。
石畳を歩き出した二人が向かった先は、雑貨屋だった。
店に近づくだけで何やらふわりと甘い香りが漂う。
甘いと言っても、何処か人工的な匂いだなとニコルは感じていた。
「石鹸のお店よ、騎士団のお風呂のは好きじゃなくてね……いつもアタシは此処で買うの。ニコルも毎日使うんだから、好きな匂いのを買いなさいね。石鹸は衛生管理で必要なのよ」
騎士団支給のものがあるのでいりませんと、口を開こうとした瞬間レイモンドにニコルはそう言い切られてしまった。
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