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1章 見習い
3話
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あれから数日、ニコルはあっという間に美味しいお茶をいれられるようになった。
「美味しいわね。いつもありがとう」
窓辺に作った2人がけの小さなテーブルセット。
外の景色を見ながらゆったりとお茶の時間を過ごす。
「ニコル、貴方が食べなさい。甘いものは何が好きかしら……色々と食べたでしょう?」
「マドレーヌが好きでした美味しかったです」
「そう、じゃあ次の休日に一緒にお出かけしましょ、貴方の必要なものも買わなきゃ。アタシので大丈夫なものはシェアして構わないけど」
足を組んでレイモンドは外を見た。
しとしととけぶる様な霧雨が降っている。
「服は、流石にアタシのじゃ大きすぎるだろうし、若いと身長ものびるから買い換えること考えるなら中古とかでも良いわよね?アタシが全部面倒見るから心配しないでちょうだい、ニコルのお給料は好きな物に使うか、ニコルに従者ができた時に面倒を見てやんなさい。それまでしっかり取っておくのね」
買い物と言うと、表情を曇らせたニコルに気付いてレイモンドはにこりと笑みを向ける。
騎士見習いの初任給なんてたかが知れてるのだ。
誰しも貰うが、少しの買い食いで飛んでいってしまうくらいの薄給で、騎士団内で執務中に着る見習い服は何着か入隊する時に配給されるが、私服などほぼ見たことはない。
いや、私服はいつも同じ物を着ているのだ。
ちゃんと洗って干しているから清潔なのだが。やはり傷み具合などを見るとレイモンドは心配になってしまう。
パジャマ用にとレイモンドは自分の着古してしまったシャツを渡すと、ニコルはこんなに良いものをいただいてしまって良いのかと大事そうに胸に抱いた姿が印象的だった。
「えーと、アタシのお休み……やだわ、明日じゃない!すっかり忘れていたわ。見習いは一緒にお休みを取るのよ。慣れれば一人で休日を過ごしてもいいんだけどね、明日はアタシに付き合って?食事を取ったら乗合馬車で街に行くわよ?まだ騎乗もできないでしょ?そのうち、ニコルの馬も見に行かなきゃねぇ」
どんな馬をニコルは選ぶだろうか、栗毛や芦毛の可愛い子もいいが、黒鹿毛や青毛のキリッとした子も似合うだろう。騎士になる時に贈られる事が多いが早いに越したことはないと、馬の競りを見に行くか
牧場へと連れ出すのもいいかなと思っているうちに雨は止み、青空が見えてくる。
このままなら明日は晴れだろう。
「美味しいわね。いつもありがとう」
窓辺に作った2人がけの小さなテーブルセット。
外の景色を見ながらゆったりとお茶の時間を過ごす。
「ニコル、貴方が食べなさい。甘いものは何が好きかしら……色々と食べたでしょう?」
「マドレーヌが好きでした美味しかったです」
「そう、じゃあ次の休日に一緒にお出かけしましょ、貴方の必要なものも買わなきゃ。アタシので大丈夫なものはシェアして構わないけど」
足を組んでレイモンドは外を見た。
しとしととけぶる様な霧雨が降っている。
「服は、流石にアタシのじゃ大きすぎるだろうし、若いと身長ものびるから買い換えること考えるなら中古とかでも良いわよね?アタシが全部面倒見るから心配しないでちょうだい、ニコルのお給料は好きな物に使うか、ニコルに従者ができた時に面倒を見てやんなさい。それまでしっかり取っておくのね」
買い物と言うと、表情を曇らせたニコルに気付いてレイモンドはにこりと笑みを向ける。
騎士見習いの初任給なんてたかが知れてるのだ。
誰しも貰うが、少しの買い食いで飛んでいってしまうくらいの薄給で、騎士団内で執務中に着る見習い服は何着か入隊する時に配給されるが、私服などほぼ見たことはない。
いや、私服はいつも同じ物を着ているのだ。
ちゃんと洗って干しているから清潔なのだが。やはり傷み具合などを見るとレイモンドは心配になってしまう。
パジャマ用にとレイモンドは自分の着古してしまったシャツを渡すと、ニコルはこんなに良いものをいただいてしまって良いのかと大事そうに胸に抱いた姿が印象的だった。
「えーと、アタシのお休み……やだわ、明日じゃない!すっかり忘れていたわ。見習いは一緒にお休みを取るのよ。慣れれば一人で休日を過ごしてもいいんだけどね、明日はアタシに付き合って?食事を取ったら乗合馬車で街に行くわよ?まだ騎乗もできないでしょ?そのうち、ニコルの馬も見に行かなきゃねぇ」
どんな馬をニコルは選ぶだろうか、栗毛や芦毛の可愛い子もいいが、黒鹿毛や青毛のキリッとした子も似合うだろう。騎士になる時に贈られる事が多いが早いに越したことはないと、馬の競りを見に行くか
牧場へと連れ出すのもいいかなと思っているうちに雨は止み、青空が見えてくる。
このままなら明日は晴れだろう。
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