魔法使いと発明娘

三本道

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第二章

西垣風、参上です!(前編)

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「ゆ、柚…どこから回る?」

「べ、別に何でも良いわよ!」

(焦ったい…)

「じゃ、じゃあコーヒーカップからいくか!」

「そ、そうね。コーヒーカップってアトラクションは聞いたことがないけれど面白そうね!」

(…)

「お、おう超楽しいぜ!って柚コーヒーカップ知らないのか?」

「き、聞いことないわね。ここはライトニングコースターとサイクロンとフライングホース、エイリアンワールド…」

(…んぁぁぁぁぁ!!もう!焦ったい!早くまともに話せるようになってよぉ!)

こんにちは、私、西垣風は今遊園地に来ています。

そう、有賀君と柚ちゃんの初デートを見守るために!

(まぁそう言いつつ、さっきから初々しい二人に焦らされてるだけなんだけど…というかコーヒーカップって何?有賀君緊張し過ぎじゃないかな…?)

私は二人かがいる広場から少し離れた自動販売機の後ろに身を隠して様子を拝見、有賀君は昨日の訓練から様子がおかしかったし大丈夫かな。

(柚ちゃんは柚ちゃんで妙な気恥ずかしさがあるんだろうなぁ。…にしても全アトラクション覚えちゃってる…)

(それにしても今日は晴れてよかった、いい天気すぎて眠くなってくるよ…)

私は『ふぁぁあ』と大きなあくび。

(柚ちゃんの髪型も整えつつ、宅配サービスを使って可愛いファッションを調べ尽くす。そんな今日の夜更を過ごした私にこの遊園地のテンションは流石にキツイものがぁ…)

と、

(あれ、有賀君と柚ちゃん、ライトニングコースターに乗るようね。今日は平日で学校…人も少ないし、ちょっとくらいなら楽しんじゃってもバチは当たらないよね…)

私は気づかれないように、そそくさ走ると二人の後ろの席を陣取る。

(ふふふ、流石にこの変装はバレないわね!流石に二人ともおばさんの仮面をつけてるなんて思いもしないだろうなー。さぁ二人とも苦労を吹っ飛ばすようなイチャイチャを見せてくださいっ!)

ガタン、ガタガタガタガタ。

この科学都市では珍しい、錆び付いた音を立てながら、コースターが上昇する。

(このライトニングコースターは都市一の速さを誇る乗り物…本で調べた…えぇっと、吊り橋効果だったっけ?それも発動しちゃうかもしれないわね!)

おぉっと、一人ニマニマしてしまいました。私も乗り員の一人。ちゃんと心してかからないと心臓が止まっちゃ…。

グオォォォォ!

「ぎぃゃぁぁぁぁぁぁぁ」

どうやら都市一の速さ、ナメていたようです。

2分後…

(どうやらライトニングコースターを舐め過ぎたようですね…うっぷ…あんなに回るなんて…目が回って倒れそう)

「この乗り物すごいな!こんなに速く動くのは久しぶりだったぞ」

「そりゃあそうよ、この都市で一番速いいんだから。この酔い止めを飲まなかったら私もどうなっていたことか…」

どうやら二人はライトニングコースターで緊張も溶けてきたようで、いつも通り話出します。

(う、柚ちゃん酔い止め持ってるなんてずるいよぉ。しかも折角整えた髪型がボサボサに…。…一旦尾行はやめて、あそこのベンチで休もう…)

私は壁伝いに歩きながら近くのベンチを目指します。

「ねぇ、そこの貴女、先程有賀様の事を見ていらっしゃいましたけれど…もしかしてお知り合いなのですか?」

「え…?」

声に方向、もとい上を見ると、日本では珍しい紫髪の少女が立っていた。身長は柚ちゃんと同じくらい、私のより少し小さい子。綺麗な赤眼が私を捕らえて離しません。

「初めまして、私、ペトラ・シャウランドル・ファルテと申します。ファルテ、とお呼びください」

「ど、どうも、ファルテさん。西垣風です…えっと有賀君って、星坂有賀君ですよね?その…どのようなご関係で…?」

(ここに最近に来たっていう有賀君に知り合いなんて…・も、もしかして、この人が有賀君と柚ちゃんを襲った犯人…!?でもそんな風には…)

「有賀様との関係ですか…?そうですね、依頼者と受諾者。…いえ、婚約者でしょうかね」

「こ、婚約者…!?」

私は気分の悪かった事も忘れ彼女をマジマジと見ます。

(整った顔に綺麗な紫髪、赤眼。体つきは柚ちゃんと同じで子供っぽいけど…言葉遣いに人当たりの良さ…いやいやちょっと待ってよ、そもそも有賀君と知り合いっていう証拠も無いんだし…)

私は津波の如く押し寄せてくる情報の波に頭を悩ませます。

と、

「ねぇねぇ、君~」

完全に人をナメきった声に動作、絵に描いたようなナンパ男子が私たちの横から入ってきました。
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