10 / 12
第二章
西垣風、参上です!(前編)
しおりを挟む「ゆ、柚…どこから回る?」
「べ、別に何でも良いわよ!」
(焦ったい…)
「じゃ、じゃあコーヒーカップからいくか!」
「そ、そうね。コーヒーカップってアトラクションは聞いたことがないけれど面白そうね!」
(…)
「お、おう超楽しいぜ!って柚コーヒーカップ知らないのか?」
「き、聞いことないわね。ここはライトニングコースターとサイクロンとフライングホース、エイリアンワールド…」
(…んぁぁぁぁぁ!!もう!焦ったい!早くまともに話せるようになってよぉ!)
こんにちは、私、西垣風は今遊園地に来ています。
そう、有賀君と柚ちゃんの初デートを見守るために!
(まぁそう言いつつ、さっきから初々しい二人に焦らされてるだけなんだけど…というかコーヒーカップって何?有賀君緊張し過ぎじゃないかな…?)
私は二人かがいる広場から少し離れた自動販売機の後ろに身を隠して様子を拝見、有賀君は昨日の訓練から様子がおかしかったし大丈夫かな。
(柚ちゃんは柚ちゃんで妙な気恥ずかしさがあるんだろうなぁ。…にしても全アトラクション覚えちゃってる…)
(それにしても今日は晴れてよかった、いい天気すぎて眠くなってくるよ…)
私は『ふぁぁあ』と大きなあくび。
(柚ちゃんの髪型も整えつつ、宅配サービスを使って可愛いファッションを調べ尽くす。そんな今日の夜更を過ごした私にこの遊園地のテンションは流石にキツイものがぁ…)
と、
(あれ、有賀君と柚ちゃん、ライトニングコースターに乗るようね。今日は平日で学校…人も少ないし、ちょっとくらいなら楽しんじゃってもバチは当たらないよね…)
私は気づかれないように、そそくさ走ると二人の後ろの席を陣取る。
(ふふふ、流石にこの変装はバレないわね!流石に二人ともおばさんの仮面をつけてるなんて思いもしないだろうなー。さぁ二人とも苦労を吹っ飛ばすようなイチャイチャを見せてくださいっ!)
ガタン、ガタガタガタガタ。
この科学都市では珍しい、錆び付いた音を立てながら、コースターが上昇する。
(このライトニングコースターは都市一の速さを誇る乗り物…本で調べた…えぇっと、吊り橋効果だったっけ?それも発動しちゃうかもしれないわね!)
おぉっと、一人ニマニマしてしまいました。私も乗り員の一人。ちゃんと心してかからないと心臓が止まっちゃ…。
グオォォォォ!
「ぎぃゃぁぁぁぁぁぁぁ」
どうやら都市一の速さ、ナメていたようです。
2分後…
(どうやらライトニングコースターを舐め過ぎたようですね…うっぷ…あんなに回るなんて…目が回って倒れそう)
「この乗り物すごいな!こんなに速く動くのは久しぶりだったぞ」
「そりゃあそうよ、この都市で一番速いいんだから。この酔い止めを飲まなかったら私もどうなっていたことか…」
どうやら二人はライトニングコースターで緊張も溶けてきたようで、いつも通り話出します。
(う、柚ちゃん酔い止め持ってるなんてずるいよぉ。しかも折角整えた髪型がボサボサに…。…一旦尾行はやめて、あそこのベンチで休もう…)
私は壁伝いに歩きながら近くのベンチを目指します。
「ねぇ、そこの貴女、先程有賀様の事を見ていらっしゃいましたけれど…もしかしてお知り合いなのですか?」
「え…?」
声に方向、もとい上を見ると、日本では珍しい紫髪の少女が立っていた。身長は柚ちゃんと同じくらい、私のより少し小さい子。綺麗な赤眼が私を捕らえて離しません。
「初めまして、私、ペトラ・シャウランドル・ファルテと申します。ファルテ、とお呼びください」
「ど、どうも、ファルテさん。西垣風です…えっと有賀君って、星坂有賀君ですよね?その…どのようなご関係で…?」
(ここに最近に来たっていう有賀君に知り合いなんて…・も、もしかして、この人が有賀君と柚ちゃんを襲った犯人…!?でもそんな風には…)
「有賀様との関係ですか…?そうですね、依頼者と受諾者。…いえ、婚約者でしょうかね」
「こ、婚約者…!?」
私は気分の悪かった事も忘れ彼女をマジマジと見ます。
(整った顔に綺麗な紫髪、赤眼。体つきは柚ちゃんと同じで子供っぽいけど…言葉遣いに人当たりの良さ…いやいやちょっと待ってよ、そもそも有賀君と知り合いっていう証拠も無いんだし…)
私は津波の如く押し寄せてくる情報の波に頭を悩ませます。
と、
「ねぇねぇ、君~」
完全に人をナメきった声に動作、絵に描いたようなナンパ男子が私たちの横から入ってきました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
突然だけど、空間魔法を頼りに生き延びます
ももがぶ
ファンタジー
俺、空田広志(そらたひろし)23歳。
何故だか気が付けば、見も知らぬ世界に立っていた。
何故、そんなことが分かるかと言えば、自分の目の前には木の棒……棍棒だろうか、それを握りしめた緑色の醜悪な小人っぽい何か三体に囲まれていたからだ。
それに俺は少し前までコンビニに立ち寄っていたのだから、こんな何もない平原であるハズがない。
そして振り返ってもさっきまでいたはずのコンビニも見えないし、建物どころかアスファルトの道路も街灯も何も見えない。
見えるのは俺を取り囲む醜悪な小人三体と、遠くに森の様な木々が見えるだけだ。
「えっと、とりあえずどうにかしないと多分……死んじゃうよね。でも、どうすれば?」
にじり寄ってくる三体の何かを警戒しながら、どうにかこの場を切り抜けたいと考えるが、手元には武器になりそうな物はなく、持っているコンビニの袋の中は発泡酒三本とツナマヨと梅干しのおにぎり、後はポテサラだけだ。
「こりゃ、詰みだな」と思っていると「待てよ、ここが異世界なら……」とある期待が沸き上がる。
「何もしないよりは……」と考え「ステータス!」と呟けば、目の前に半透明のボードが現れ、そこには自分の名前と性別、年齢、HPなどが表記され、最後には『空間魔法Lv1』『次元の隙間からこぼれ落ちた者』と記載されていた。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる