魔法使いと発明娘

三本道

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第二章

準備は万全に。

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「親父さんから貰った財布に…昨日フウちゃんから貰った軽量の通信機、こんなもんかな…」

朝日も登りきった午前9時、葉月家の一室に俺の声がこだます。

『明日私と遊園地に行かない!?』

(…本当何考えてんだ、あいつ…?お陰で今日の訓練ほとんど上の空だったじゃねぇか)

俺はため息をつくと、真っ白な天井を見上げる。見ているとなんか落ち着く天井、木の天井が懐かしく感じるほどの無機質な真っ白な天井。

(あいつの思考が読めなさすぎて困る…。念には念を…もしかしたら、ふとした瞬間にも襲いかかってくるかも知れないしな…)

「"ブースト"」

朝起きたばかりの体に力が漲る。ブースト、身体の強化魔法だ。最近も重宝しており、ある程度の奇襲にも対応できる。

(じゃあ…行くか…!)

ガチャ。

俺は気合を入れ直すと、五感に集中力を集めながらドアを開けた。

「お、おはよ…」

目の前には、いつもの練習着と違い、短パンに黒い下着が見える白Tシャツという可愛さの塊を身に纏った柚が仁王立ちしていた。

バタンッ。

俺は何も見なかったように、そっと閉めた。

「ちょっ、なんで閉めるのよ!」

ドア越しに柚がドンドンとドアを叩いてくる。

(嘘だろ…!?性欲が溜まりすぎて幻覚に幻聴が発生してんのか…!?ってんなわけあるか、アレはちょっと良いものを着たロリっ子にすぎないんだ!)

荒れ狂い、渋滞を起こしている心情を必死に整理しながら、俺はもう一度ドアに手をかける。

「お、おはよ葉月さん」

完全に無心、貼り付けるのは営業スマイルだ。

「なんで閉めたのよ」

一方の柚はぷくぅとほほを膨らませている。今日の服とマッチし過ぎていて、思わず顔がニヤけそうになる。

「え…いや、忘れ物を思い出してさ。あはは…」

我ながら悲しいほど薄い笑い方だ。

(まぁ異世界じゃあコレが効果抜群だったからな…コイツを騙すには持ってこ…)

「ねぇ、その作った顔に話し方嫌い。今日くらい柚って呼んでいいから普通に接してよ…」

「…っ!?お、おう…柚」

(やべぇ、思わず下手に出ちまった…っていうかヤバいヤバいヤバい!反則だろ今日の柚…!)

俺は思わず柚から目を離せなくなる。

「い、いくわよ、入場券が売り切れちゃうわ」

柚は恥ずかしくなったのか、珍しく跳ね毛のないロングヘアーの端を弄りながらそっぽを向くと、歩き出した。

(あぁ尊い…!どうしよう…俺ってロリコンだったのか…?)

俺はそんな柚の後ろ姿に釘付けになりながら続いた。

そう、後ろからの視線も気にせず。


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