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極彩色の灰魔女

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 青い。空は青い。



 木々の間から見える空はとても青かった。



 アトラスを着用していたおかげで衝撃はない。



 左右を見ると地面に落下したシエロと遠野は、エアバッグにより怪我はなさそうだった。



「大丈夫か二人とも」



「ええ」



「う、うん」



 俺が身を起こすと手元に何かが当たる。



 それは俺の身体の下にあり、ぽっきりと真っ二つに割れていた。



「刀だな」



 辺りを見回してみると、小さな祠でもあったのか木の破片も全て飛び散らかっている。いやいやその前にもっと気になるものがあるだろう、俺。



 周囲に感じる視線、視線、視線。



「そ、そうじろう」



 ぎゅっと俺の腕をシエロが掴む。



『囲まれています』



 アトラが周囲をロックオンし、数は十人ほどだと分かる。



「どうする、やっちゃう?」



「待て遠野、彼らにとっては俺たちの方がイレギュラーかもしれない」



 俺は両手を上げて危険ではないことを彼らに示す。異世界で通用するのかは謎だが。



「すまない、事故なんだ。ちょっと上の木にぶつかってしまって」



 普通ならぶつかる事もないだろうが、どう説明したものかと思ったとき、草むらから次々と人が現れていく。



「事故だと……人が空を飛ぶとでも?」



 口開いたのは着物を着ているような老紳士である。顎に蓄えた口ひげが威厳を物語っていた。



「木から木へ、山から山へ移動しててな」



「黒い甲冑か、それに白の少女二人——言葉通りか」



「言葉通り?」



「着いてこい」



 老人の言葉に俺はシエロと遠野を見て、肩をすくめた。



 ついていくと巨大な岩山の側面に洞穴がある。



 洞穴の先は長いが、松明が左右ん灯されていて中は暗くなかった。



 彼らを信用したわけではないので、アトラスは解除せずに歩みをすすめる。



 洞窟の先はちょっとした町のようで、洞窟の中なのに木で作られた家々がいくつか並んでいる。



「まるで隠れ家だな」



「やけに熱いわねこの中、焼けるような匂いもするし」



 遠野はバタバタとだらしなく胸元を前後に動かして風を受け入れる。



「こっちだ」



 ついた先は街で最も豪華そうな屋敷だった。



 屋敷の入り口から入り、木でできた廊下を進み、老人はある扉の前で止まった。



「連れて参りました」



「ありがとう、源氏」



 中から静かな女性の声が聞こえ、源氏は俺たちに中に入れと促す。



 俺は襖のような扉を横に引いて、足を踏み入れた。



 部屋は線香のようなお香の臭いが立ち込めている。



 薄暗い室内の奥には、一人の少女が椅子に座っていた。



 座っている少女の服装は全身煤けたようにグレーであり、ボブカットの髪の毛すらグレーだった。



「久しぶりね、シエロ」



「——ハイネ」



 シエロは俺の腕を強くつかんだまま、同い年くらいの彼女に問いかける。

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